密なコミュニケーション、動き出す闇

「……それでね、っ、唯愛が、私のこと、っ、ちょっと丸く、なったって言う、からぁっ! ジムに通おうか、迷って…… るのぉぉぉっ!!」


 夜、をしながら、昼間ユアと話していたことを夏輝に相談していた。


「い、いいんじゃない?」


「そう? うん、私も、いいっ! と、思うんだけどぉ……」


 ……満足美味しいん棒で『ポールダンス』をしながら。


「でも、一人で外に出るのが恐くてぇ…… 迷ってるぅぅ!」


 恐怖でなのか分からないけど、身体がビクンビクン、いやガクガク震えているよ、咲希ちゃん……


「……無理して出る必要はないと思うけど、家にこもってばかりなのもそれはそれで心配だよ」


「うん、だから頑張って、外に出てみようと、思うの!」


「っ!? が、頑張…… ちょっと、待って!」


「うん、出れるように、頑張る!!」


「さ、咲希!? …………頑張り過ぎっ!! あっ……」


 ああ、頑張ったから外に出ちゃった……



 …………

 …………


 

 昨日の夜は夏輝とたくさん話し合った。

 こうしてより密にコミュニケーションを取ることによって、私達夫婦の絆が強くなっていると実感した。


「……強過ぎるくらいだよ」


 んっ? 夏輝がボソッと何か言ったような気がするんだけど…… 気のせいよね。


 んっ…… 美味しっ……


「遅刻しちゃうからさ…… もういいだろ?」


 遅刻!? ……あぁっ、もうこんな時間! ……急がないと!


「つ、強過ぎぃぃっ……」


 ……えへへっ、ごちそうさま


「じゃ、じゃあ行ってくるよ……」


「はーい、行ってらっしゃーい! んー、ちゅっ!」


 朝一番の満足美味しいん棒ジュースを絞って飲み干した私は笑顔で夏輝を見送った。


 さて…… 家事をある程度したら唯愛に連絡してみるかなぁー。


 夏輝の助言で、まずは唯愛と一緒にジムに行ってみることをおすすめされた。


 たしかに夏輝の言う通り、私一人で無理して外出する必要は今の所ないのよね。

 でも家に居てばかりじゃ運動不足…… ぷにぷに解消も出来ないから、とりあえず唯愛さえ良ければ一緒に行かせてもらおうかと思っている。


 外出の練習にもなるし、高校時代から格闘技にハマっていた唯愛ならボディーガードにもなってくれると思うから不安になることもあまりない。


 ……だから昨日の夜は落書きも控えた。


 大事な部分の近くには矢印と、その先には『関係者(夏輝)以外立入禁止!!』と収まるくらいに書いてあるけどね、えへへっ! ……あれ? 『立』っていう字がちょっと違うけど、うん! これもある意味正解ね!


 よし! とりあえずいつも通り掃除洗濯、そして夏輝へのこまめな連絡(写真付き)っと…… あぁ、忙しい忙しい!



 ◇



「なんか…… っ、お姉ちゃんの様子が、変っ! なのよねぇ……」


「咲希さんの? よいしょっと…… どこが変なの?」


「上手く、言えなっ、いけど…… 少しオドオドしてるような気がっ! んっ、するのよっ」


「いつもニコニコ笑ってるあの咲希さんが? ……それは気になるね」


「うん、心配…… あっ…… んふふっ」


「俺も心配だし、夏輝さんにも聞いてみるからさ…… ユアが不安そうな顔をしているのも俺は心配だよ」


「ヨウ、ありがとね……お姉ちゃんにはこまめに連絡してみることにするわ、だからぁ…… 続きをしましょ? んふふっ……」



 ◇



 ひぃぃぃー! 朝から咲希におかげで、今日も出勤時間がギリギリになってしまった。


 それにしても、咲希がジムかぁ…… やるのはエクササイズ的なやつなんだろうけど大丈夫かな? 咲希、あまり運動神経が良い方ではないからな。


「剣持さん、おはようございます!」


「ああ、おはよう、今日もよろしくね、春日かすがくん」


 会社に着くと、先に隣のデスクで仕事の準備をしていた春日くんに挨拶をされた。


 春日くんは中途採用で入社して一ヶ月の社員。

 以前は大手の食品メーカーの営業をしていたらしいけど、何でうちの会社のような小さな建材屋に就職を決めたんだろうな。


 でも営業の腕が買われて入社して、既に何件か契約を取ってきているから、有能だと社長も喜んでいた。


「では自分は外回りに行きますので」


「うん、頑張ってね、さて…… 俺も黒田さんの所に材料の確認に行くか……」


 午前中に訪問予定の黒田工務店。

 社長…… いや、今は息子さんが跡を継いだから会長か、黒田会長とうちの社長の仲が良いから長い付き合いで、うちの会社のお得意様だ。


 今度納品する建材の搬入などの最終確認も兼ねて顔を出すと連絡してあるから…… よし、俺もそろそろ出発するか。


 ……そういえば咲希が通うかもしれないジムが通り道にあったよな? 広い通りに面しているから分かりやすい場所だったはずだ。

 

 まあ、まだジムに通うかすら決まってないし、もし咲希が通うなら確認のために場所をハッキリ知っておいた方がいいかもな。


 そして、俺は社用車に乗り込み車を走らせた。



 ◇



『もしもし、お姉ちゃん? 今日ジムに行く予定なんだけど、良かったら見学しに行かない? ヒメはママが預かってくれることになってるからさ』

 

 話をしたのが昨日なのにもうジムに行こうと誘ってくるなんて…… 相変わらず唯愛は行動力があるわね。

 

 ちょっと心の準備が出来ていないけど…… 


「うん、せっかくだし私も行ってみようかな!」


『じゃあ決まりね! あとで迎えに行くから!』


「はーい、気をつけて来てねー」


 ふぅ…… 心配しちゃうと困るから夏輝に連絡をしておかないと。


 そういえばジムって何を着ていけばいいんだろう? うーん…… せっかくだし、この買ったばかりのポゥさんがプリントされた可愛いジャージでいいかな? 見学だけだしこれにしよーっと。



 ◇



「お久しぶりです」


「久しぶりだね春日くん、元気だったかい?」


「おかげさまで何事もなく次の就職先が決まりましたよ」


「あははっ、それは良かった…… で? 私に話があると言っていたけど、一体何かな?」


「実は会社の上司に『剣持』という人がいるんですけど、その嫁が…… あの『大倉おおくら』の彼女…… いや、今は嫁になった『真野まの 唯愛ゆあ』の姉らしいんですよ」


「ほう…… 大倉の……」


「で、あの女のように派手ではないんですが大人しそうで、それに姉妹なだけあって見た目も良いんで…… 次のにちょうど良いんじゃないかと思いまして」


「……兄貴には『この街ではしばらく大人しくしていろ』と言われているんだがね」


「『鬼島きじま』との繋がりもなさそうですし、それに…… あの大倉夫婦に深い関わりのある姉を堕とせば……」


「ふっ…… 君の言いたいことは分かった、私も個人的にやられっぱなしで気分が悪かったからね ……実は海外で良いクスリを手に入れたんだ、ついでに試してみよう、では準備を任せてもいいかな?」


「はい、任せて下さい…… 『鎌瀬かませ』さん」

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