家族との再会、新たな提案

 ラブラブで平穏な毎日が続いていたある日、夏輝が出勤してからしばらくして、家のインターホンが鳴った。

 一瞬ドキッとしたけど今日は大丈夫。


「はーい」


『あたしよー』


 だって今日は私の妹が家に遊びに来る予定だから。

 そしてモニターを確認してみると、モニター越しに立っていたのはやっぱり私の妹だった。


「今開けるからねー!」


「やっほー、お姉ちゃん、お邪魔しまーす!」


「いらっしゃい! 唯愛ゆあ



 私の妹の唯愛。


 私の三歳年下で、でも私よりもスタイルが良くて身長も高いから、昔から私の方が妹と勘違いされることが多かった。


 褐色の肌に金髪のショートカット、胸元の大きく開いたシャツにホットパンツと、露出の多いギャルみたいな格好を好んでしているけど、こう見えて結婚しているのよね……


 肌の色は日焼けとかではなく元々だし、金髪はユアの旦那さんの好みみたいだし、露出が多いのは…… 暑がりだからかな?


「直接会うのは久しぶりね、お姉ちゃん」


「うん、そうだね!」


 久しぶりなのはお互い結婚しているからというのもあるけど……


「久しぶりねー、陽愛ひめちゃん!」


 生後六ヶ月の唯愛の娘で、私の姪っ子の陽愛ちゃんの出産とか子育てでバタバタしていたから、なかなか遊べなかったのが一番の理由。


 私達が結婚してから半年も経たないくらいだから…… 一年半くらい前に結婚した唯愛は、すぐに妊娠して陽愛ちゃんを出産をした。

 できちゃった婚ではないんだけど、唯愛の話を聞く限りどうやら新婚旅行先で盛り上がった結果、妊娠したらしい。


 唯愛のことだから多分、旦那さんを誘惑しておねだりしたんだろうと想像つくけど、まさか私よりも先にママになるなんて…… 話を聞いた時はビックリした。 


 幸せいっぱいの中、ママになるのはどんな気持ちなんだろう。

 私の場合は地獄の中、望まぬ形でママに……


「……お姉ちゃん? 元気ないけど調子でも悪いの?」


「……ううん! ちょっと考え事をしてただけ! ジュースとお菓子持ってくるからちょっと待っててね!」


 でも、もう過去のことだもんね!

 私達も幸せなイチャイチャをして、今度こそは幸せな形で妊娠して、我が子には無事この世に誕生してもらいたい。


 ……まだ予定はないけど毎晩のようにいっぱい子作りの練習もしているし、私はいつでもウェルカムよ! 



 そして陽愛ちゃんを愛でつつ私達は近況報告がてらリビングでお菓子を食べながらおしゃべりをしていた。


「ヨウったらヒメにメロメロで、親バカ過ぎるくらいベッタリなのよ!」


「いいじゃないの、良いパパをしてて」


「でももう少しあたしにも構って欲しいの!」


「もう…… いつまでもワガママ言ってると嫌われちゃうよ?」


「むぅー、分かってるわよ…… だからお姉ちゃんにちょっと愚痴ってみただけ」


 唯愛の旦那さんのようくんは、優しいからなぁ…… きっと今までも唯愛を思いっきり甘やかしてたんだろうな。


 でも陽愛ちゃんが産まれて甘やかす相手が二人になったから、その分唯愛が不満に思っているっていうわけね! 


「じゃあ久しぶりに二人きりでデートしてきたら? その間陽愛ちゃんは私が預かるよ?」


「えぇっ!? いいの、お姉ちゃん? ……んふふっ、ヨウと二人きりでデートかぁー、久しぶりねぇー!」


「うぅっ、ふぇぇん……」


「あらっ、ヒメどうしたのー? よしよーし…… オムツでは無さそうだし、お腹が空いたのかしら?」


 あわわっ! 陽愛ちゃんがグズってる…… と思ったら、唯愛が陽愛ちゃんの様子を確認して、出産して大盛りになった褐色なおまんじゅうをポロリーン! 


「んふっ…… いっぱい飲んでねー?」


 あの甘えん坊な唯愛がすっかり母親の顔になっちゃって…… ふふっ


「わぁ…… 一生懸命吸ってるねー」


「本当に誰に似たのかしらねー? んふふっ」


 誰にって…… ま、まさか! 

 

 唯愛ったら、旦那さんにもバブバブしてるの!? ……ふむふむ、ブヒブヒばかりじゃマンネリ化しちゃうわよね、たまにはバブバブと…… ありがとう! 早速採用するわ! ……今夜。


 そして陽愛ちゃんがおまんじゅうを食べ終わり、唯愛に抱かれてスヤスヤ眠り始めたので、声のボリュームを抑えながら私達はまたおしゃべりを再開した。


「それにしてもお姉ちゃん…… ちょっと雰囲気変わったよね、もしかしてお義兄さんと何かあった?」


「えっ? ……ううん、毎日仲良しだよ!」


 私が変わった? ……妹だから私の変化が分かっちゃうのかな? 

 酷い裏切りの末に身投げして、タイムリープしてきた私の変化が……


「そう? ……うーん、全体的に丸くなったからかな?」


 なっ!? ま、丸くなったですって!? いいえ、そんなことはないよ!

 ポッコリお腹だって、夜の腰降りダンスでへっこんだし……


 でも、最近それ以外はルームランナーもサボり気味で運動してないし、外も恐くて夏輝としか出歩いてないし、毎日のご飯が美味しくてついついおかわりしちゃってるし…… はぅっ! せっかく『肉○○ダイエット』が成功したのに!


「あたしも出産後にちょっと太っちゃって最近またジムに通い始めたのよねぇ、ヒメがいるから頻繁には行けないけど」


 ……唯愛がジムに? 


 唯愛が行っていたジムって普通のスポーツジムじゃなくて、格闘技を教えてくれるジムよね?


 高校時代に通い始めて、一時期は『あたし修行の旅に出るわ!』とか言い始めた時は家族みんなで止めたんだよねぇ……


「あっ、そうだ! お姉ちゃんもあたしと一緒にジムに行かない? きっと運動不足解消になるわよ」


「えー? 私は格闘技なんて興味ないよー」


 人を叩いたりするのはちょっとねぇ…… どちらかといえば叩かれる方が良い。

 特に夏輝にお尻ペンペンされたら…… 


 やーん! また思い出しちゃった!

 目隠しされてペンペン…… からのブヒブヒ。

 

「……お姉ちゃん、突然身体をクネクネしてどうしたの? 背中でもかゆくなった?」


「ち、違うよぉ! 大丈夫だから気にしないで」


 これはちょっとした発作みたいなものだから。


「ふーん…… まっ、もし気が向いたらあたしに言ってよ、ストレス解消にもなるし、ダイエットにも良いわよ」


「うん…… 考えておく……」

 

 唯愛がおすすめするくらいだから良いジムなんだろうけど、外に出るのがまだ恐いんだよね……


 でも、これは良いきっかけかもしれない。

 いつまでも、未来の闇に怯えているわけにもいかないからね。


 とりあえず夏輝に話してみよう。

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