フル装備な咲希ちゃんと……

「ふんふんふふーん♪」


「咲希、ご機嫌だな……」


「えへへっ! ふんふーん♪」


 …………


 咲希が目の前で鼻唄を歌いながら晩御飯をテーブルに並べている。

 ……貞操帯丸出しで。


 何で? 出掛けないし、俺がいるからいらないよね?


 上着にはお気に入りなのか、また新たに買ったらしい、パジャマとお揃いでブタのキャラクターがいっぱいプリントされたTシャツに、その上からエプロン…… 上と下のギャップが凄いのよ、咲希ちゃん。


「えへへっ、そんなに見つめられるとムラム…… 恥ずかしいよー!」


 見つめるなと言われても気になって見ちゃうよ…… どうしてその格好をしようと思ったんだよ……


「見て見て! 可愛いでしょ? 付けてみたんだぁ」


 クルリと後ろを向き、お尻を突き出すように見せつけてくる咲希…… そこにはクルンと丸まった細い、ブタのしっぽのようなヒモが縫い付けてあった…… 貞操帯に。


 しかも最近は首輪をして、アイマスクに穴の開いたボールを咥えて戯れるのがお気に入りみたいで、毎日のようにブヒブヒ……


 ちょっと…… いや、だいぶマニアックな戯れになってきてるけど、俺の妻は大丈夫なのだろうか。


「じゃあご飯食べよっか! えへへっ」


「いや…… その格好で食べるの?」


「えっ? もちろん!」


『当然でしょ? 何言ってるの』って顔をしないで! えっ? 俺がおかしいの? 混乱しちゃうよ!


 そして咲希はエプロンを外し、ブタさんTシャツも脱ぎ…… 何で!?


 し、しかも…… 何そのスケスケな下着……


「可愛いでしょ? つい買っちゃった! 安かったんだよ?」


 安かったのか、じゃあいいか! とはならないぞ!? ……咲希ちゃんや、ちょっと色々と特化した物を買い過ぎじゃない?  


「だってぇ…… 早く私を夏輝色に染めて欲しいんだもん…… ほら、ここに昨日の夜、書いてくれたでしょ?」


 ……咲希に言われるがまま、咲希の下腹部に書いた矢印と、その矢印の先には『夏輝専用○○○○○』という文字、それに太ももには書きかけみたいになった正の文字が…… 洗っているはずだが完全に消えてなくてうっすら見えてるんですけど…… もう嫌だよ、愛しい奥さんに落書きするの。



 ◇



 ヤダ…… 夏輝が熱い眼差しで私を見てる…… ゾクゾクしちゃうよぉ……


 えへへっ、気に入ってくれたかな?

 日に日に夏輝専用へと生まれ変わっていっているようで、私は大満足。


 夏輝も慣れてきたのか毎晩凄くて…… あぁん、思い出しちゃう!


 おかげて悪夢を見ること無く朝までグッスリ寝れて、身体やお肌の調子もバッチリ。

 ついでに実家でゴロゴロし過ぎてポッコリ出ていたお腹も引っ込んで……


 名付けて『肉○○ダイエット』大成功ね!


 我ながら惚れ惚れする身体になった……

 くびれもある、だけど出るとこは出て引き締まっている。

 締まると…… えへへっ、夏輝も嬉しいよね?


 このままこの夏輝専用ワンオーナーボディをキープしつつ、トラウマ克服のために少しずつリハビリもしていかないと…… 


『咲希のペースで良いから無理するな』って夏輝も言ってくれたもんね! でも外でおさんぽもしたいなぁ…… 人のいない夜の公園とかで夏輝とおさんぽして…… えへへっ、想像しただけでよだれが出ちゃう!


 ……あぁん、いけない! ご飯中なのに美味しそうなことを考えてよだれを垂らしちゃうなんて ……夏輝がそんな見つめてくるのが悪いんだからね?

 だから……


 ちゃんと後で責任取ってね? えへへっ



 ◇



 何か知らんけど咲希が箸をペロペロ舐めながらこっちを見てくるんだが…… 行儀が悪いからやめなさい!


 それに落ち着かないのかさっきからモジモジしてるし、やっぱり貞操帯をしてると座りづらいんじゃないの? 外せば?


「えへへぇ…… んっ」


 やっと食べたと思ったら、おかずのウインナーを咥えて…… いつまで咥えてるんだよ! 早く噛んで食べなさい!


「夏輝ぃ…… ご飯食べたら一緒にお風呂入ろうね?」


 分かった! 分かったからウインナーを口から入れたり出したりしないの! 食べ物で遊ぶんじゃありません!


 まったく…… 元々お茶目なところはあったけど、お茶目過ぎるだろ、咲希ちゃん……


 その後も熱い視線で俺を見つめながら、野菜スティックやミートボールを見せ付けるようにゆっくりと口に運ぶ咲希。

 ミートボールなんか口の中でコロコロと転がしちゃってさぁ…… 


「えへへっ、とーっても…… 美味しい」


 ああ、はいはい……



 ◇


 

 見てぇ? ○○○○を△△△してるみたいでしょ? きっと夏輝の○○○○も□□□□で、えへへっ、美味しいん棒、食べたくなってきた!


 あぁ、幸せ…… 何気ない日常がこんなに幸せだったなんて。

 夏輝が居て、一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、ブヒブヒして眠る……


 この日常を守るためにも…… 私も成長しなきゃね!


 んー! このミートボール美味しいっ、えへへっ、夏輝に食事中も熱い視線で見つめられて…… 今日もご褒美ディナー!


 あとは洗い物をして、夏輝と一緒にお風呂で隅々まで洗い物をして…… 私達の部屋でお待ちかねのお楽しみタイム!


 夏輝…… 幸せにしてくれてありがとう。 

 きっと夏輝の記憶の中の私とは変わってしまったと思うけど、どうか末永くよろしくお願いします。


 


 その前に…… 今夜分の幸せを貰っちゃおっかなぁ…… えへへっ、よろしくお願いしまーす。

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