再び訪れた、幸せで✕✕✕な日々
咲希の信じられない話を聞いた後の生活について…… とにかく咲希は俺から離れようとしなかった。
話を聞く限り、未来での咲希は俺との永遠の別れを経験しているわけで、気持ちは分からなくもない。
俺だってもし咲希に何かがあって、永遠の別れとなった後に、不思議なことが起こって奇跡的に咲希と再会出来たら、ずっと抱き締めていたいと思ってしまうだろう、だけど……
「えへっ、えへっ…… 夏輝ぃ……」
「咲希!? またか……」
とにかく咲希の愛情表現が凄い!
甘え方もそうだが、特に夜なんて…… 凄い!
つい最近まで、恥ずかしがり屋で積極的ではなかったアマチュアの咲希が、突然プロに転向して毎日のように大会を開いているんだから、ビックリして身体も心も追い付かない。
「夏輝…… 愛してるぅ……」
咲希の言っていた事は本当だったんだと、こんなプロ級の技を見せられたら嫌でも思ってしまう。
「えへへっ…… やっぱり夏輝と一緒が一番…… もう夏輝だけ、夏輝じゃなきゃイヤなの……」
でも咲希がこんなに求めてくるのは、それくらい深い傷を心に負っていて、それを俺という存在で癒すためにしていると考えたら、俺には拒む事なんて出来なかった。
むしろ何としてでも咲希が幸せになるようアマチュアなりに頑張って対戦した。
『今、部屋を掃除してるよ』
『休憩中だよ、早く夏輝に会いたい』
『帰って来たら買い物に行こうね』
そして仕事中には頻繁にメッセージが送られて来るようになり、たまに
『汗かいたからお風呂中』
と、ちょっとセクシーな自撮り写真を添付して送ってきたり…… 仕事中なのに返信に困ってしまうこともある。
とにかく家に居る時にはベッタリ甘えん坊になった咲希、そんな咲希も可愛いし、愛しているから別にそれは良い。
ただ問題は他にもあって、咲希は男性恐怖症になってしまったみたいだ。
だから一人で外に出ることが出来なくなり、引きこもりみたいになってしまった。
買い物や用事がある時は俺がいる時に一緒に行き、帽子にマスクなど目立たない格好をして、俺にしがみ着きながらじゃないと、男性とすれ違うだけで身体が強張って動けなくなってしまうみたいだ。
どれだけの辛い体験をしたのかを、話でしか知らない俺ですら分かってしまうほどの咲希の変わりよう…… だから今は咲希の好きなように生活をさせ、全力で支えながらゆっくりと傷を癒す時間が必要だと感じている。
だから……
「はぁっ…… 夏輝、もう一回……」
咲希の好きなように……
「んふふっ、美味しいん棒…… 美味しい」
好きなように……
「ぶ、ぶひぃぃっ!!」
好きな……
「熱ぅぅいっ! 雌豚の丸焼きになっちゃぅぅっ!!」
す……
うっ! ……
…………
…………
◇
夏輝に過去の…… いや、この場合だと未来の罪を告白した。
告白して謝罪したぐらいで未来の夏輝は許してくれるとは思わないが、今の夏輝はそれでもこんな私を受け入れて『愛してる』と言ってくれた。
嬉しくて涙が止まらなかった。
もうあんな悪夢は見たくない、この幸せを永遠に感じていたい、そう思った私は出来る限り夏輝から離れないように生活をすることにした。
今の所はこまめに連絡をし、夏輝が居ない時はほぼ出歩かないようにしている。
男が怖いのもあるが、未来では一瞬の出来事によって地獄に落とされたんだから警戒は必要、夏輝と外出する時も変装をしていつも周りに気を配り、緊張しながら歩いている。
ただ、常に夏輝のことばかりを考えていると弊害がある…… ちょっぴり欲望が抑えられなくなっちゃうの。
いつも優しい夏輝が、私が未来の罪を告白してから更に優しくなった。
甘えたくなったらとことん甘やかしてくれるし、言葉にしなくても行動で私を大切にしてくれていることが伝わってくる。
物のように扱われていた反動かな? 『私』という存在自体を大切にされたら…… ねぇ? キュンキュンしちゃうよね? 心と…… お腹が。
深く繋がっていたい、そう思うのは普通だよね?
だから…… ついつい求めて、おかわりまでしちゃって…… えへへっ。
満足美味しいん棒だけでご飯三杯…… いや、四杯はいけちゃう! この一本だけでね。
ぱくっと食べればお口の中からよだれがジュワぁぁっと出てきて…… お腹いっぱいに満たされて…… あぁん、思い出しただけでよだれが。
食べれば食べるほどデトックスされて、しかもカロリーも消費される私だけの美味しいん棒……
ただ、美味しくてちょっぴり食べ過ぎちゃうのがタマにキス…… じゃなくて玉に瑕。
キスといえば、毎日のキスの回数も凄いことになってるんじゃないかな? 私も求めちゃうけど夏輝からも積極的にしてくれて、新婚当初より…… いや、付き合っている時よりしてるんじゃないかな?
とにかく、悪夢から解放された私は今、凄く幸せなの…… でも……
「ぶ、ひぃぃっ! いいっ? いぃぃぃーーっ!」
変わってしまった自分に夏輝は引いていないだろうか? 隠そうとしても隠しきれないくらいに…… 弄ばれて変わってしまったから。
身体は綺麗だけど記憶はある……
幸せ過ぎてつい我を忘れてしまい、頭にこびりついた色々な経験が無意識に…… こんなぶひぶひ言ってるブタさんなんて…… 夏輝は嫌だよね? 気を付けないと捨てられちゃうかも。
それに注意しなければいけないこともある。
未来が変わらない場合、いずれ『楠田』が目の前に現れるかもしれない。
その時、私は抵抗出来るのかな……
幸せな分、不安も大きいから、余計に夏輝を求めてしまい負担をかけている。
分かってはいる…… 分かってはいるんだけど……
「えへっ、えへっ…… 夏輝ぃ……」
「咲希!? またか……」
満足美味しいん棒が目の前に差し出されたら(差し出されてはいない)食べないのは失礼だからね?
えへへっ…… いただきまーす……
こうして毎日のように雌豚の丸焼きになる私。
そんな私でも、夏輝は……
「咲希、愛してるよ……」
優しくじっくりと丸焼きにしてくれる。
こんな毎日がずっと続きますように。
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