再会、からのムラム……
嬉しさと後悔、色んな感情がごちゃ混ぜになって、夏輝に抱き着きながら号泣してしまった。
でも、心から愛する人のぬくもりを久しぶりに感じ、匂いも嗅いで……
「咲希、熱は大丈夫なのか?」
「うん! 最初は凄く寒くて、次は焼けるように熱かったけど、今はスッキリしてるから大丈夫!」
「本当だ、熱が下がってる…… 点滴が効いてきたのかな? ……はぁー、良かったぁ」
脇に挟むタイプの体温計で熱を計った結果を夏輝に見せる。
ほぼ平熱で、私自身は何ともないのだが、余程高熱だったのか、夏輝は結果を見て凄く安心した顔をしていた。
夏輝…… あぁん……
私の、汗をかいた脇に挟んだ体温計を凝視してる…… 興奮しちゃう。
……っ! 駄目よ私! 今はその時ではないわ! それよりもする事があるでしょ?
「……夏輝? 汗かいたからお風呂入りたいなぁ」
「えっ、ああ、準備はしてあるから先に入ってもいいよ」
「……ありがとう、じゃあ先に入らせてもらうね」
「まだ体調が心配だからあんまり長風呂するんじゃないぞ?」
えへへっ、やっぱり夏輝は優しい…… 好き。
本当は一緒に入って隅々まで洗いっこ、からのヌルヌル相撲もしたいけど、それは我慢よ! とりあえずお風呂に入って……
自分が今着ている、昔お気に入りだった夏輝と一緒に買いに行った『ブタのポゥさん』というキャラクターがいっぱいプリントされている可愛いパジャマを脱衣場で脱ぎ、自分の身体を改めて確認する。
……っ! ピアスがない! 胸の大きさも少し小さくなって、先っぽもピンク! ……ツルツルじゃなくてボサボサ! こっちもピンク! あぁ…… 保存状態は良好…… 間違いなくワンオーナーボディだわ!
あぁ…… また涙が出てきちゃう…… 散々使われて汚れた廃車寸前の中古車が新車同然に戻ってる! もうこれからはずっとワンオーナーで大切に乗ってもらわないと!
でも…… やだぁ、オイル漏れしてる…… さっき夏輝の匂いを嗅いだせいかな? それとも体温計のせい? ……どっちにしても身体は大丈夫でも頭の中のパッキンはユルユル…… すぐにオイル漏れしちゃう。
……まあ、それくらいなら大丈夫! なんたって夏輝がいるんだもん! えへへっ……
お風呂に入る前にもあちこち確認してみたが、やはり何らかの奇跡が起きて過去に戻って来たらしい。
リビングは引っ越した当時の物ばかりで家の中も綺麗なまま、散々弄ばれてくたくたになっていた汚れたソファーも新品だった。
風呂場にはお気に入りのシャンプーやトリートメントがあり、今は売ってない昔のラベルの物が置かれていたし、お風呂場に凹な椅子や怪しいヌルヌル入りボトルもマットも無かった。
湯船に浸かりながら悪夢から解放された事に喜びを感じながらまた涙を流していたが、ふと思った。
身体は綺麗だけど…… 散々弄ばれて開発された記憶はある…… 果たしてこれからそれを思い出さないように生きていくことは出来るのか?
悪夢ではあるが快感が無かった訳ではない。
むしろ現実逃避するように自ら求めていた時もある…… 最後は喜びながら…… っ! 駄目っ! あんなことを思い出したら……
嫌な記憶なのに…… 嫌な記憶なのに、思い出すと身体が疼く…… このままじゃ私……
そっと手を伸ばしかけている自分を戒め、少し冷たい水を浴び、気を引き締める…… そしてしっかりと汚れた身体を清めるように洗ってからお風呂場から出た。
「咲希、長風呂だったけど大丈夫か? 気分が悪くなったのかと思って心配したよ、もう少し出てこなかったら様子を見に行こうと思ってたところだよ」
……えっ!? じゃあもう少し入ってれば良かった…… じゃなくて!
「着替えも用意してくれてたんだね、ありがとう」
声を掛けてくれれば良かったのに…… もしかして声を掛けてくれてたのかな? 私がちょっとムラム…… じゃなくて考え事をしてたから気付かなかっただけかもしれないし…… それよりも……
ソファーでテレビを見ながらくつろぐ夏輝の姿…… 夢みたい…… あの何気ない日常、あの幸せだった時をまた過ごせるなんて…… 夢じゃないよね? ちょっとつねったら痛かったもんね? 先っぽ。
「えへへ…… 夏輝ぃ……」
ソファーに座る夏輝に甘えたい! あの時のようにイチャイチャベタベタしていたい…… この幸せを…… もう二度奪わせない!
そして私はぴったりとくっつくように座り……
「えっ!? ちょ、ちょっと咲希!? 何してるの!?」
ソファーに座る夏輝と向き合うように跨がって座る。
だって夏輝の顔をしっかりみたいんだもん! 対面なんちゃらみたいな形になるけど、甘えたいんだもん、いいよね?
「夏輝ぃ…… 好き」
「へっ!? ……い、いや、俺も好きだよ?」
「えへへっ、愛してる」
「うん…… 愛してるよ…… どうしたんだよ急に、まだ熱があるんじゃないか?」
うん、熱があるというか、火照ってきたというか…… 久しぶりの夏輝の身体を間近で感じちゃったら…… ねぇ?
「夏輝、ずっと夏輝だけを愛してるからね? それは絶対だから……」
「咲希、やっぱり熱にうなされてた時に変な夢でも見てたんじゃないか? ……んぐっ!」
たっぷり愛情を込めた濃厚なキス…… あぁん…… 久しぶりぃ…… 夏輝の味……
「んんんーっ! ……んっ、ぷはっ、さ、咲希? こんなキス……」
あっ…… まだこんなキスしたことなかったよね、私が夏輝と最後にキスをしたのは…… 四ヶ月前くらいかな。
それはどうでもいい、これからは夏輝と、夏輝だけとキスしたいんだから。
……んふふっ、夏輝? 美味しいん棒が食べて欲しそうにしてるよ? 私も丁度食べたいなぁって思ってたから……
「さ、咲希!?」
いいよね? うん…… ダメって言われても食べちゃうんだから……
そして……
…………
…………
……良かった ……とても良かった。
……とりあえず凄かった。
久々の感覚…… 心と身体で繋がるって凄い…… 更に様々な経験の記憶と未開発ワンオーナーボディでとんでもない事になってしまった。
知識として過去に得た情報は経験の少ないボディには刺激が強かった…… だが、それがまた良い。
まるで夏輝専用車になった気分…… 三倍の速さで…… いや、三千倍で飛んじゃう……
ふぅっ、思い出しただけでブルっとしちゃった! えへへっ…… 満足……
夏輝の一本だけで満足…… マ○マ○満足……
そして私は、久しぶりに幸せな気持ちで満たされたまま、愛する人の隣で安心してゆっくりと眠りにつくことができた。
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