第7話


 古代遺跡の攻略方法は簡単であるがそれでいて難しい。


 これまで幾つもの古代遺跡を見てきたがそのどれも同じ造りをしておらず、探索する分には楽しめるが今回の様な場合ではただ厄介でしかない。


 先ずは制御装置のある部屋に行き仕掛けられた罠やこれ以上のゴーレムの生産を止める必要がある。


 そして動力部に行き古代遺跡の大元の主電源を切らなくてはならない。


 ここまで来てようやく古代遺跡の攻略が終わる。


 大昔の人たちに優しさがあればここで終わっていただろうが生憎そんな心を持ち合わせてはいないらしい。


 古代遺跡の全機能が停止した際の対応として残ったエネルギーを全て使い遺跡の守護者が現れる。


 遺跡の守護者とは古代遺跡を守る最後の砦として用意された人造兵器。


 魔物をモデルとして作られているがその性能はデビルパンサーを遥かに凌ぐ。もしかしたら最強の生物と名高いドラゴンと同等かもしれない。


 「ソレアは二人を見つけ次第遺跡の入り口まで引き返すんだ」


 「ソウランはどうするのですか」


 今まで戦ってきた中で本気で死ぬかもしれないと思ったのは5回あった。


 その内の3回は遺跡の守護者である。


 そんな相手との戦いに三姉妹を巻き込むわけにはいかない。


 ただでさえイレギュラーな状況下にいるのだ。これ以上無暗に危険にさらしたくなかった。


 立ちふさがるゴーレムたちを次々に処理しながら進んで行く。


 「俺はこの中にいるボスを倒す」


 「一人でですか」


 「ああ」


 三姉妹で協力してきたソレアからすればたった一人で戦う事が不安なのだろう。


 先程から見せたことのない表情ばかりをしている。


 こんな状況ではあるが少しづつソレアという人間の事が分かってきた気がした。


 「二分後にゴーレムの動きが止まる。そしたら直ぐに二人を迎えに行け」


 「わかりました」


 この場にソレアを残し、一人制御装置のある部屋へと向かった。


 古代遺跡自体にあまり広さはない。


 それに目印もある。

 

 制御装置と動力部にはそれぞれ大型ゴーレムが配置されている。


 取り敢えず大型ゴーレムがいればその近くにあるはずなのだ。


 馬鹿でかいだけが取り柄なのだすぐに見つかる。


 距離はおよそ5m。すでに大型ゴーレムは俺が近づいてきていることに気づき、頭部に二つの明りが灯る。


 ゆっくりと動き出した大型ゴーレムをわざわざ待つつもりはない。


 持っていた短槍を逆手に持ち軽いステップの後、投擲する。


 狙ったのは胸の中心にからやや右寄りの場所。大体ここに動力源となる場所がある。


 体の中心をを貫かれ体制を後ろへ崩す大型ゴーレムを踏みつけて制御装置に拳を叩きつけた。


 この制御装置を調べればきっと現代技術に革新を与えるだろうが今の俺には関心がない。


 火花を散らし高い不快音を立てながら制御装置が爆発する。


 大型ゴーレムが倒されたことで集まってきたゴーレムたちの動きが鈍った事により制御装置を破壊した事を確認できた。


 ゴーレムたちの足元を縫うように進み、動力部を目指す。


 手元から離れた短槍に代わり、愛用の槍シー・メイルを取り出した。


 蒼い長槍シーメイルは俺が今まで扱ってきた槍の中で最も優れた槍である。


 そのしなやかさから放たれる最速の薙ぎは次元が歪む。


 厚さ20mにも及ぶ大型ゴーレムであってもいとも簡単に切り裂いてしまう。


 自分を中心にして円を描き動力部を守る大型ゴーレムを真っ二つにする。


 下半身だけとなった大型ゴーレムの後ろには心臓のような球体に大小のパイプが無数に繋がった動力炉がある。


 これを破壊すれば無線にて常にゴーレムたちにエネルギーを送り続ける事ができなくなり、ゴーレムの動きが止まる。


 動力炉の中心を射抜きゆっくりと穂を抜いた。


 ベットリとした液体が漏れ出してゴーレム及び遺跡の光が消えてゆく。


 古代遺跡が沈黙してゆく様を見守っていると地面が割れる。


 左右対称に六つの腕を持った化け物が現れた。


 遺跡の守護者の登場だ。




○○○○



 ソウランと別れたソレアはソウランが示した方向へ走りだした。


 今まで経験したことのない異質な雰囲気に飲まれそうになったがソウランのゴーレムを倒してゆく姿を見て自然と大丈夫な様な気がした。


 当然、一人では攻略なんてできるはずがない。


 今の自分では勝てないことくらいゴーレムが強いことだってよくわかる。

 

 だから私はソウランのサポートに徹するのだ。


 アーシャとセナを探す中ゴーレムと出くわすがその剛腕に捕まる前にまた抜きを繰り返して戦闘を避けた。


 ソウランから事前にレクチャーを受けており、その重さから動きが遅い為素早い動きにはついて行く事ができない。


 器用に立ち回り、ゴーレムを避けていくと鈍い音が響く場所がある。


 アーシャとセナが戦っているのだろう。


 ソウラン曰く、ゴーレムを倒すのならば手数で攻めることよりも強力な一撃が必要

なのだそう。


 二人ではこの条件を満たす事ができる技を持っていない。ただジリ貧な思いをするだけ。


 高度な学習機能を持つゴーレムにいつか動きを読まれ捕まってしまうだろう。


 腰にぶら下げた鞘から剣を抜く。


 刀身を中心に炎が渦巻き、その大きさは元の剣よりも数倍大きい。


 ゴーレムの体の中心目掛けて叩き切る。


 ゴーレムの胸部に大きな亀裂が入り核が露出する。


 仕留めるまでには至らなかったが重症であることは間違いない。


 「逃げるよっ!」


 強引であるが無理矢理アーシャとセナの腕を引っ張った。


 「「お姉ちゃんっ!?」」


 予想していなかった相手の登場に声を重ねて驚いた。


 「あのゴーレムたちと戦っても勝てない。早く安全な所まで逃げるよ」


 アーシャとセナの前を走るソレアの姿は二人にとって短時間であったがかけがえのない姉の存在を確認するには十分すぎる時間だった。


 それはソレアも同様だが、今は再会を感動している場合ではない。


 古代遺跡の入り口を目指し、駆け出した。

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