第6話 姉妹とゴーレム
古代遺跡とは遥か昔に生きていたとされる人たちが築き上げた文明の歴史や技術が記された場所であり、その希少性は極めて高く発見されれば世界的なニュースとなりうる。
それも生きている遺跡ともなれば重要性が更に高まる。
ソウランはこれまで世界中を冒険してきたなかで幾つもの古代遺跡を見てきた。
けれど、どれ一つ冒険者ギルドや国に報告していない。
報告すれば色々と面倒ごとに巻き込まれるからだ。あくまでも冒険の中で偶然発見しただけであり、ソウランは縛られる事なく自由に冒険がしたいだけだ。
その中で未だ生きている古代遺跡に入った事がある。
そういった遺跡には防衛機能としてゴーレムと呼ばれる古代兵器が生産されている。
動きは鈍いものの、頑丈さとパワーは桁違いであり更に魔法耐性と呼ばれる特定の魔法属性に高い耐性を持っているゴーレムもいるのだ。
そうなればただでさえ攻略難易度の高い古代遺跡は更に難しくなる。
そんな事を知らない二人は果たして無事でいるのだろうか。
鍾乳洞の最下層から落ちてしまったアーシャとセナは偶然にもデビルパンサーの死骸がクッションとなった事により無事に古代遺跡のどこかに落ちていた。
落下の恐怖から気絶した二人は少しして目が覚める。
「セナ、セナ、起きてっ!」
先に目が覚めたアーシャがすぐ隣で倒れているセナを揺すって起こす。
「姉、さん・・・・・アーシャ姉さんッ!?」
目の前にいるアーシャの姿に気が付いたセナはすぐに飛び起きる。
「私達助かったみたいですね」
「ええ、感謝ね」
クッションとなってくれたデビルパンサーの死骸に感謝をしつつ、二人は辺りを見渡した。
ソウラン達が目にしたものと同じ深緑の壁に古代文字が描かれている古代遺跡まで落ちてしまった様だが二人にはその知識がない。
謎の迷宮にでも迷い込んでしまったと二人は思っていた。
迷宮にて迷子になった際、学園ではその場にとどまる事を推奨されているがここは古代遺跡。
落下時に遺跡全体に響いた異音を聞きつけてゴーレムたちが集まって行く。
その様な事を知らない二人は身を寄せ合い、この状況をどうやって打開するか話し始める。
「助けを待つ?」
「ソウランさんたちがどうするかだよね。お姉ちゃんなら直ぐに来てくれそうだけど・・・」
今回はソレアの課題であった事からソレアが中心になって行動をしていたが問題が生じればソウランに決定権が当然移る。
出会ってから未だ数日の間柄。
「来てくれたらカッコイイですね」
「くるかな~冒険者って先ずは自分の身を大切にするし来ないかもよ」
貴族達から見れば冒険者など使命を持たずただ自分のためだけに生きている自由人でしかない。
「急に落ちたから食べ物は無し。魔法で水は作れるけどそれでも限界はあるよね」
アーシャは今の状態を確認し始めた。
知らなくてはいけない事だからこそ確かめたが、あまり知りたくはなかった。
調べれば自分たちに残された時間が分かってしまうからだ。
「もし助けが間に合わなかったように遺書でも書いときましょうか」
「セナってさ、時々怖いこと言うよね」
デビルパンサーから皮を剥ぎ取りおもむろに遺書を書き始めたセナを見てアーシャはげんなりとする。
「でも他の姉妹たちに何か残しておきたいじゃん」
「確かにそうだけどさ~」
どうしてもこの現実を割り切って考えられないアーシャは双剣の柄をいじりながらセナの隣に座っている。
時間はどのくらい経っただろうか、当てになるのは自分の空腹くらいだろう。
「あ~もう、何にもやる事ないな~」
「魔力操作でも練習すれば? お姉ちゃん、たまにおぼつかない時があるし」
「うるさいな~妹の癖に生意気だぞ」
肩を揺すりセナにじゃれつきながらこの退屈な時間を過ごしていると何か予感がした。
「ねぇセナ」
「なに?」
「魔力感知はしてるよね」
「当然」
自分を中心に薄く拡がるように魔力を出すことで敵を感知する魔法使いの技である。
一見便利そうであるがこれは魔力を宿したものにしか通じないという弱点があった。
だから魔力を持たない生き物や罠を見つけるために冒険者の中にはシーフといった役割を担う者もいる。
「反応は?」
「ないけど・・・・」
「逃げるよ」
遺書を書き終えていないセナの腕を強引に引っ張ってその場を離れる。
「どうかしたのお姉ちゃん」
「変な気配がするの」
アーシャが感じ取った気配とは正しくゴーレムであろう。
無機物でできた機械仕掛けのマシーンには魔力ではない別の何かで動いている。
気配がない違和感が天才であるアーシャにヒントを与えた。
ゆっくりと曲がり角から現れたゴーレムにアーシャの勘は正しかったと証明された。
「あれ何ッ!?」
「知らないよ! 見たこともない!」
お互いに現れたゴーレムの姿に戸惑いを見せる。
幸いにも鈍いゴーレムからその場限り逃げ切る事ができたが、ゴーレムの恐ろしさはそれだけではない。
古代遺跡には制御装置と動力部専用の部屋があり、制御装置は常にゴーレムに内蔵されたカメラから情報を受け取り、随時指示を出して侵入者を追い詰める。
動力部では無線によるエネルギー供給をすることで古代遺跡内では無限にゴーレムを稼働し続ける事ができた。
その事を知らない二人は逃げ続けるも裏では追い詰められている事を知らない。
どのくらい逃げていたかわからないが気がつけば先回りされていることが増える。
段々と逃げ道を減らされて囲まれる。
戦う事を強要され、双剣を抜き杖を構える。
無謀な戦いが始まった。
風を纏った双剣で切り付けても様々な魔法を放っても傷はつくがそれ以上が無い。
少しづつ距離を詰められ、心身ともに削られていく。
生き残る道はあるのだろうか。
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