転移成長期。第ニ話「検査。」

そこには大きな扉があった。

 その扉はいかにも高階級の人しか入れません、とでも言いたげな扉。

 金を中心に青、赤のデザインのハーモニー......食レポのように聞こえるが違う。

「えらいおおきい扉だな。」

「七歳の式典という行事があるのですが、その七歳児の様な目をされてますね。ちなみに七歳なるとみんな検査をするのですよ。」

 大人ぶった言い方をしたはずだが、この異世界感溢れる扉に目を輝かせていたのがバレた。

 にしても此方の世界は七歳になると魔力やら何やらが検査出来るのか、地球にも魔法が欲しいものだ。

「はぁそうなのか……………それでは開いてくれ。」

「わかりました!。」

 そうするとユターシャがトテトテと足を運んで、扉の真ん中に立った。

 そうして何か変なことをぶつぶつと唱えている。

 その瞬間。


『⁉︎』


 ユターシャの掌に魔法使いを意識させる寸八程の杖があったのだ。

 一刻に進む時間に置き去りにされながらぽかーと一人沈黙していた。

 ユターシャはその杖でコツンっと扉を叩いた。

 途端、その大きく重そうな扉はあまり力を入れてない様な叩き方をしたのに、開いた。

 先にはあまり日本、いや地球では見かけない光景が待っていた。魔法を連想させる紫を基調とした周りの装飾に、床には赤のカーペット。その先には高級感ある木を使用した机があり、各、その上に例の水晶らしきものがある。

 一つ一つ異世界文字……というのか地球で身に覚えのない文字が各水晶の横にある、社長室の名前を入れるやつみたなのに記されていた。

「——これは、読めないな。」


 『勇者スキル【言語理解】が発動されました。』

 !?[#「!?」は縦中横]なんだ。先程聞こえたこの声。

 それは——俺にしか聞こえないのか定かではないが、少なくともユターシャには聞こえていないらしい。反応がないからだ。

「読めないですよね、大丈夫です!私が訳します!、香久夜さん!」

 心強いお言葉に翻弄されたが、正直もう間に合っている。

「んーまぁ大丈夫になった。」

「はぁ——そうですか?それならいいんです。」

 やはりさっきの声は聞こえていないのだろう。ユターシャのが疑問系で聞いてきたことから察しがついた。

「ではまず、この一番左側にある、魔力の神【ヤハジニコフ】が生み出したとされる魔力測定の水晶で検査してみましょう。」

「あゝ、頼んだユターシャ。」

 意外に早く進んだ水晶の後ろで、私が詠唱しますから、我、新たなる勇者、日出る国の勇者である、我の力を見抜き記せ!。

 と言えという。

 それに従い魔力測定の水晶の前に立った。

「我は神ヤハジニコフの信者たるもの也。其れに曰く以下のものが、我が神に力を求める、日出ずる国の勇者、神宮寺 香久夜。」

 目を瞑りながら詠唱するユターシャの姿には可愛さより美しさが立った。

 そうして、俺は水晶に手を翳して、

「我、新たなる勇者、日出る国の勇者である、我の力を見抜き記せ!」

 一様端折らずにいった。

 瞬間。急に魔法陣が水晶に現れ、共に何処からか翅ペンと羊皮紙が現れた。

 その紙に、淡々と翅ペンで文字が加えられていく。

 だが後でこの紙に全てを記すのか、上の方で少ししか書いていない。

「結構、っっって、めっちゃありますね!魔力。これが夢にまで出てきた勇者かー。」

 ユターシャが驚くほどの魔力、どのくらいが基準なのか。

「そ、そうなのか、それは嬉しいな、ユターシャよ、ちょいと見してくれ。」

 初めて見るものを、じっくり見たくなるのは人としての本能、それに従って見せてもらうことを頼んだ。

「それが、神の掟で、検査途中に見るのが、禁止されてるんですよ。まぁ全て終わりましたら、見れますので、お待ちをー!。

 」

 まじか、ちょっと萎えた。

 まぁいい、早く全てを終わらせてみることを考えよう。

 ユターシャが記された羊皮紙を持って、

「では次に、魔法の神【ユリア】が生み出したとされる、この魔力適合検査の水晶です。一応、一般人は全てが適合というのが普通ですが、念のためです。」

 と、人差し指を立てて言った。

「そ、そうなのか、全てあるのが普通。

 

 ——神聖魔法の有無までやった——

 

 魔法は大丈夫だそうだ、全て適合。

 ほんとなら他の人は一つ二つで、俺だけ全て適合で、チートとか俺TUEEEをしようと思ったが、しょうがないか。

 神聖魔法は適合しなかった。

 どうも全能の神には嫌われているらしい。

そう言って、先ほどあった一連の流れを二回ほど追った。

  そして、最後の【神の力】

「これで最後ですね!、がんばりましょう!。」

 そうユターシャ言った。

「そう言えば、未知の神が、勇者と転移前に話すっていうのは本当でしょうか?。」

 ユターシャは伊弉諾を知らないからな。

「あゝ、話したよ?、」

 ユターシャの目が宇宙に煌めく宝石の様に輝いた。

「ほ、本当ですか‼︎で、できればどう言った神か、教えてください。」

 どうやらユターシャは伊弉諾に興味がある様だ。

 

「いいよ、この世界でいう道の神は、俺の世界では【伊弉諾】と呼ばれていて、"國生みの神"と崇め奉られてるよ、まぁそんなに知名度はないけどね、世界を統べたのが天照大御神っていう、めっちゃ偉大な神が他にいたからね。だからその隣とかにいた伊弉諾はあんまり知名度が高くない。まぁ俺も眉唾だから、あんまり知ってはいないけど、こんくらいの情報でいいならどんてこいだ!。」

 熱弁してしまった。

 だが、ユターシャは刻々と頷いて、時におぉーと声を漏らした ユターシャがそう言っだ。

「って結構時間とりましたすいません。本題に入ります。」

 最後の水晶の前に立った。

「最後のは詠唱が違います。香久夜様は『汝が求め得るものは、父祖の神よりの力。清涼なるこの世に、汝に報い得る力を与えよ。明日の暁をより限りない美しさへとすることを約束しようぞ。』と言った様に、お願いします!。」

「わかった、それじゃあ、頼む。」

 俺は感激した。

 何故と問うまでもない、其れもその筈、さっきユターシャが話したのは、日本語。つまりは地球の言語である。その言葉にやはり親近感と、安心感が溢れる。

「『勇者はかくてこの地を統べんとしたものへ交信のため、この地へ赴こうぞ、その神、へ神宮寺 香久夜を愛対すること限りなく願いたり。いざ舞え。我が前で舞え。』」 

「『汝が求め得るものは、父祖の神よりの力。清涼なるこの世に、汝に報い得る力を与えよ。明日の暁をより限りない美しさへとすることを約束しようぞ。』」 

 彼女の片言な日本語に胸を打たれつつ、詠唱をきっちりこなした。それはもう端折ることなくキッパリと。

「終了です。お疲れ様でした!。」

 はぁーとユターシャが一息ついてからそう言った。

「よし!、では見せてくれ!。」

 初めての自分の能力。

 体育測定とは違い、魔力など、新しいものも含まれる、地球の理から外れた新たなるもの。

「もー!、はやいですね、いいですよ、香久夜様お待ちかねのステータスです。」

 

 ——神宮寺 香久夜——

 【魔力量。】

 三十万八千九百十。

 【適合魔術類。】

 火魔術、水魔術、風魔術、土魔術、雷魔術、治癒魔術。

 【神聖魔法。】

 無所得。

 【神の力】

 スキル項目

 新世界の案内人、アイテムボックス、勇者称号、スキル獲得権利。

 攻撃項目。

 魔術自由創作変更、世界視、投擲予測、身体軽量化、魔獣飼、無限時間、不老体。

 

 伊弉諾さん……結構ゴツいのくれるじゃないですか、攻撃も攻撃こそ、そんなに強そうではないものの使い方次第で最強に君臨できるものが数多くある、一つは魔術自由創作変更だろう、自分で自由に魔術を創作できる、つまりは新たな可能性を生み出すことが可能。

 『【スキル項目】が追加されました。』

 またあの声か、全くもう、この頭に響く声はなんなんだ。

 『スキル【新世界の案内人】の発動によって、私は話しています。』

 おうそうなのか、おい、ちょっと自分のことの取り扱い説明してみろ。

 『私は物ではありません、生命体です。よって取り扱い説明などはないのですが、先程疑問に思っていたことをお話ししましょう。

 私は【新世界の案内人】です。案内人とお呼びください。

 香久夜様の頭の中にスキルの一つとして宿っています。

 基本は勇者香久夜様のスキルの説明や、スキルを取得した時の報告、香久夜様自身の身体状況等を香久夜様の頭の中で発します。

 因みにこの声は聞こえません。

 以上。』

 おう、其れはすまなかったな、今度オッケー案内人?かヘイ、案内人とでも呼んであげよう。

 だがこの案内人、結構役に立つかもしれない、ずっと頭の中にいられるのは結構デメリットではあるが、それ以上に身体状況が教えるまた、見れるというのはありがたい、自分でも把握しきれずに、やられてしまう、というのもなくなる、つまりは死ぬ確率が下がる。

 これほど有能なものはない。

『ありがとうございます。』

 お前喋るのか、

「おーい、香久夜様?おーーい。」

 ん?この声はっってユターシャ?って忘れてた。

「ごめん、初めての検査で気を取られていた。」

「大丈夫です。其れよりも、早く帝王様の所へ行かなければ!」

「そうだった急ぐぞ!」

 気を取られていた俺を覚ましてくれたユターシャに心の中で感謝して、俺は王室へと向かうのだった。 

 

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そうこうしてると救えと託される 林 林 @hayashi_rin

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