第14話謝罪と妹と武装

「昨日は急に配信終わっちゃって申し訳ありませんでした。しかも、今の今まで説明もせずに……」


 場所ははじまりの街の宿屋――何でも部屋を借りられるみたいなので借りた――そこで私達・・は配信を開始した。

 ボスウサギをなんとか屠ったは良いものの、そのまま私は気絶。次に目が覚めたのは翌日今日の朝6時だった。私は10時間くらい寝てたことになる。凄い寝たね。個人的にもびっくり。


『おお、復活?』

『日曜の朝の9時、ちょっと早いか?』

『んで、昨日の何なん?』


「うん、その話の前にちょっとゲストの紹介していい?」


 説明はいいんだけど、相槌とか欲しいからね。先にゲスト入れよう。


「はい、こちらゲストのアンバーです」

「はいはい、どうも。ラピスの実妹、アンバーです」


 ぴょんと一飛び、カメラに映った琥珀――アンバーはもともと肩ぐらいまでの髪を多少伸ばして、色は濃い目の茶色に緩くパーマがかかっている。また、目は黄色にしている。顔はあんまり変えてないかな。

 また、種族は獣人・・。種別は熊みたい。パワー特化の種族で、頭に熊耳が付いている。熊の耳の形状とかよく知らないけど。


『妹ちゃん、参上』

『βの人じゃん』

『ああ、いたわ。あの矢鱈強い脳筋ね』

『脳筋ww。否定してやれんが』

『名前が宝石統一なのね』


 視聴者さんたちからのアンバーへの評価は中々。というか、この子も日向サニー同様β版でそこそこ有名だったみたいだから、寧ろ無名の私より、馴染み深いのかも。ちょっと脳筋のところ気になる。けど、戦法的にそうとしか言えないな。


「とりま、お姉は説明でしょ」

「そうだねえ。何から話そうか」


 説明何からするのが、一番わかり易いかな。成り立ちはいらないし、普通に効果だけでいいかな。

 でも、それだと面白みが無いよね……。


「決まるまで話し繋いどくねえ」

「ありがと」

「お姉の黒歴史とかで」


 オッケ、その口ね。縫い付けられたいのは、


「待って、待ってっ。頭痛い! 頭痛いから、アイアンクローは駄目ぇっ!」


 煩いよ。本当に縫うよ。裁縫道具は部屋にあるし、裁縫得意だし、大丈夫、失敗はしないから。


「もうしないから、ね?」

「したら、分かるよね……?」

「――っ?! Yes,mam!」


 宜しい。さてと、説明しなきゃね。

 そう思ってちらりとコメント欄を視界に納めて、すぐに逸らす。


『酷いものを見た』

『ラピスの分かるよねが怖すぎる』

『何か本当の姉妹って感じして良い』


 うん。反省しよう。



 ________________




「――昨日のボス戦を見てくれた人は分かると思うんだけど、私の動きが急に速くなったでしょう?」


 まずは確認しなきゃね。そこが分からないと面――大変だから。

 聴いてみたところ、結果は、


『ああ、あったね』

『何だっけ、何か言ったあとに』

『ソニックドライブ……とかなんとか』

『中二かな?』

『かわいそうにww』


「可哀相って、まあいいや。うん、それなんだけどさ、すごい簡単に言うと私の頭の回転を早くする技――というか特技?なんだよ」

「お姉、中二発言はスルーでいいの?」


 中二は否定しきれないところが痛い。確かに名前つけたの中学2年だからさ……。


『チート臭くね?』

『今普通に配信できてる時点でそれはない』

『人間から遠ざかっていくなあ』


「チートとかじゃないよ、現実でも出来るしね」

「ここのところ使ってないけどね」


 いやいや、日常生活の何処で使うのよ。確かに数カ月ぶりだったけど。


 人間というか生物は普段全力・・なんて出せない。絶対にどこかで本能が制限を掛ける。

 その力を縛っている本能の一部を強引に抑えて、本来手をつけられない力を使えるようにする。

 まあ、要は火事場の馬鹿力を自分のタイミングで出せるってところかな。


 そうして、私は思考速度を約30%上昇させられる。

 VRでの移動速度は、キャラクターのAGI(またはそれに近しいステータス)とプレイヤーの運動命令の間隔の長さで決まる。

 脚の回転が速ければ速度が上がるのは、当然と言えよう。

 その結果、思考速度を上げて、ついでに動きも速くなるという事。


 少なくとも私は思考速度とかしか制限を外せないから、その特性から『思考加速ソニックドライブ』って呼んでる。……というか名付けた。

 急には止まれなそうな感じがそれっぽいじゃん?


「皆は便利とか思うかもだけど、あれ凄い不便なんだよね」


 色々考え事してたら、意識せずにポロっと言っちゃったよね。

 それに対する反応はまあ、おおよそ予想通り。


『はあ? どこが』

『出来るから言えんだよなあ』

『聞く限りかなり便利ですが?』

『応用範囲が広すぎる』


 いや、うん。結構強引にやってるから不便なんだよ?


「色々欠点が多いんだよ。あれ3分しか保たないし、それ超えたら気絶するし……」

「――大好きな人の目の前で鼻血出しながらぶっ倒れるしねっ」


 ――撃法 金剛


「うわああっーー! ちょ、ごめんって」


 チッ、しぶとい奴め……。


「そういう事は言わなくていいのっ。というか何で知ってるの!?」


 あの時のことは悠真しか知らないはずなのに。


「……え、ええっと、扉の隙間からこっそりと…………。ま、まあ、それは良いのっ! お姉、ボス戦の報酬確認したら?」

「そうだね、しようか。…………後で覚えとけよ」


 そんなこんなでボスウサギ戦の報酬確認となった。



 ________________




「まずはボスウサギの素材。まあ、これは普通だね」


 ボスウサギの皮、肉、角、それに加えて爪が4つ。てことは、爪は全部貰えたということかな。

 他にも、変わり種だと目玉に、……掌。凄いグロイの想像しちゃった。

 話のタネになりそうなものを探して、アイテム欄をスクロールする。


「……ん?」


 ふと、あるものに目が留まる。これは、なんだろうか。


 《種別:根源》巨角兎の根源


 ジャイアントホーンラビットが認めた者に討たれた場合にのみ与えるとされる、かの者の力の源が結晶化した宝玉。それを用いた武具の類いには特殊な力が宿るとされる。

 ――


 それは聞いたことがないアイテムだった。ボスウサギを倒してもらったものなんだろうけど、まるで分からない。こんなのは情報に無かった。


「ア、アンバー、これ何か分かる……?」


 アンバーにウインドウを、アイテムを見せる。

 β出身者この子が分からなかったら、もうお手上げだけど、わからないんだろうなあ…………。


「んん、これ……? 知らないよ? 正式版からの新規アイテムじゃないの?」


 アンバーの発言にコメント欄が凄いことになったのは言うまでもない。


『ファッ!?』

『え、なになに? 新規アイテム!?』

『嘘乙』

『こう言っては何だが、ラピスに芝居の才能とか無さそうだから、本当だろうなあ……』


 うん、まあ、そういう反応になるよね。私も理解が追いついてない。

 あと、芝居の才能なさそうっていったの誰!? 無いけども!



 ________________




「誰かにこれで防具作ってもらおう」


 分かる限りの『巨角兎の根源』に関する情報を吐き終えた後、私はボソッとそう言ってから、最後の、言うならば目玉のアイテムをストレージから取り出した。


「はい、これが最後! 更に刀を手に入れました!」


 その後、根源とかで大荒れのコメ欄が更に加速したのは言うまでもない。

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