第3話−徒然なる公務

ここで今まで述べてこなかった私の公務を述べておこう。前にも言ったが私の公務は哲学的なことや倫理的なこと道徳的な事を考えるのが得意である。従って私の出番は正直少ない。たまにくる公務はとても大歓迎である。そんなある日、私に公務がきた。ある晴れた日のことであった。その公務というのはどうやら主人の倫理の授業の時間で皆で話し合う時間が設けられたそうだ。そこで私の出番が来た。

 「努力というものは報われるのだろうか」

これがテーマだった。主人のグループは主人合わせて4人組のグループ。それぞれ様々な意見が出たが、何一つ意見がぶつかることはなかった。ここはやはり日本人である。私は考えた。「努力」というものは時に報われたり、報われなかったりする。だがそれは一方向から見た結果であってまた違う方向から見れば結果も変わる。例えばマラソン大会で1位を狙って友達と切磋琢磨するとし、その結果自分と友達、共々1位を取れなかった。これは一見1位を取ろうと頑張って努力したのに1位になれなかった。努力は報われない。と思ってしまうかもしれない。しかしまた違う方向から見ればその友達との友情が高まったというプラスの結果も得られるだろう。これが適切な具体例になっているかは読者の皆様で御審議して頂きたい。以上の事を主人は他3人に説明した。他3人はどうやら分かっていないように頭を掻いたり、頷いたりしている。そしてそれぞれのグループでまとめた意見を発表していく。実は主人はこういった授業が好きなのであってつい意見が少し違ったりみんなより頭ひとつ出てしまう癖がある。まあこれも私のおかげといったところかまたは私のせいといったところか。主人はその帰りいつもより気分がよかった。

 

 

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