最強の相棒(バディ)?

遭綺&遠雷

最強の相棒

今年は関東でも珍しく雪が降りましたね。

そんな寒い時期にとって大切なもの。


それは「温かさ」。


その中でも、温かさに彩りを与えてくれる最強のツートップが居ます。

「コタツ」と「フトン」です。

カタカナにすれば字数も同じで、なんだか屈強な相棒バディに思えてきます。

一度入れば簡単には抜け出せない。

さながらそれは優しい蟻地獄のよう。

その名を思い浮かべるだけで、表情は綻んでしまうし、ポカポカとした温かなイメージを誰しも思い浮かべてしまいます。


我が家には両方鎮座しています。

お陰様でとても快適に過ごせております。

ですが、彼らは本当にタチが悪い。

強力な磁力が発せられているのかと思うくらい一度入ると動けないんです。


でも、凄く良い奴なんですよ、彼ら。

だって、一方的に優しさを振り撒いてくれるんです。

とんでもなく居心地が良すぎるんです。

抜け出す際は、全て、こちら側の問題なんです。

コタツの電源を切るだけ。フトンから出るだけ。

簡単な事です。

こちら側のマインドの問題なんです。

行動するか、しないか。それだけなんです。

それで仕事に遅刻したって、彼らが悪い訳じゃないんですよ。

全部自分のせい。




でも…。




そうさせたのは誰? となると、話は変わってきますよね。


優しくしないでと言ってしまえば、彼らの役割を否定してしまいますし、意思を持って貰っても怖いものです。この永遠のせめぎ合いこそが、冬の時期の醍醐味であり、人間の真価が試されている究極の問答なのです。


ただ、改めて思うと、彼らの魔力は本当に凄い。

平気でヒトを三時間近く縛り付ける事が出来ますし、簡単に自堕落にさせる事も出来ます。またこれが、物理的攻撃ではなく、精神的攻撃と言うのが厄介です。

どれだけ防御力を上げても、この攻撃を無力化する事は出来ないまさにチート技。

恐らく仏や神にでもならないとかわす事は出来ないものなのでしょう。


特にコタツで横になると言う所業は、禁書に触れる程の危険な行為です。

滅茶苦茶気持ちいいので、ついやってしまいがちです。

一つ注意があるとしたら、コタツで寝たら風邪を引くと言う点です。

これはコタツが教えてくれる人生訓でもあります。

しかし、それはちゃんと「コタツで寝る」と言うことに備えていない、こちらの落ち度が招いた結果です。薄着で寝たりするから天罰を受けるのです。

つまり、フトンで寝る時と同じ盤石の格好で臨めば、そのリスクは限りなくゼロに近づきます(筆者調べによる)。

勿論、水分補給や加湿が重要と言うのも忘れずに。

と言うより、コタツで寝ない事が一番の予防策なのですが。

これに気付いていない貴方は、コタツの呪縛に掛かっているので、今すぐ電源をお切り下さい。


フトンも最初は冷たいのですが、自らの体温とシンクロしてくると、途端に本気を出します。目覚ましで意識が戻って来た微睡の中で感じるぬくもりこそがフトンの本性です。一晩かけてここまで育てた彼をそう簡単に手放すことなんて出来ません。

愛着が湧くのです。

休みの日に至っては自ら出ようともしません。お腹が空いたり、トイレに立ったりする時に、渋々、嫌々、涙を堪えて抜け出すのです。

そして、五分後ぐらいに帰還した時の、少し温かさが弱まったフトンの破壊力も堪りません。何故だか申し訳ないと言う気持ちにさせられるのです。

何も悪い事をしていないのに。冤罪です。

そしてヒトはまた「一緒に温まろうね」と自ら墜ちて行くのです。


コタツとフトン。

あったか最強バディ。


彼らと過ごせるのもあと少しです。

彼らの役目が終わる頃、外では桜が咲いたり、新生活が始まったりと慌ただしくなっているでしょう。

その時に思い出しましょう。

立ち止まることの大切さを。

何かを考える時間を。

その時間すら失っているとしたら、貴方は無理をしている時なのです。

頑張り過ぎているのです。

身体は一度壊すと、なかなか元には戻りません。

貴方は貴方。

代わりは誰も居ません。


だからこそ、思い出して下さい。

彼らがくれた優しい愛があったことを。

次の冬に備え、彼らを押し入れにしまうその時まで。

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