第13話 明かされるトップシークレット

午後8時、都内に本拠地を抱える織田会総本部のビル地下の入り口に、多くの部下達を引き連れた斎藤は、ある人物が到着するのをじっと待っていた、すると、遠くから車のライトの光が見えてきた、「ブォロロロロロ!」 でかいエンジン音が地下内で響き渡りながら、黒いベンツの車両が斎藤達の前に姿を現した、やがて、車両が入り口付近へと止まると、運転席からサングラスを掛けた若い極道が車から降りた、男はそのまま後部座席へと移動し、素早くドアを開けると、そこから、織田会の実質最高権力者である織田 丈治が降りてきた、織田は身につけるジャケットとサングラスの奥から殺気立つ、異様な目付きをちらつかせながら、前に立つ斎藤の方へと歩いてきた、「コツ、コツ、コツ、コツ、」織田が現れた瞬間から周囲の空気は一変して、緊迫とした緊張感が漂っていた、やがて織田は斎藤の目の前へと立ちはだかった、「関西への訪問、ご苦労様でした、会長…」斎藤は無の表情でそう話すと、ゆっくり頭を下げた、部下達も続きながら一斉に織田の前で頭を下げた、織田は反応すること無くじっと頭を下げる斎藤の方を覗くと、そのまま足早に、本部の入り口へと歩き始めた、織田が向うかと同時に斎藤は感情を無にしながら、静かにその後へと続いて歩きだした。


織田会総本部、会長室では、煙草を吹かしながら会長のソファへと座り込む織田、そして、その周囲に置かれる幹部の席には、斎藤と、運転担当を任されていた側近の新妻、他二名の幹部が腰を揃えていた、この異様な空気感の中、斎藤はじっと前の席で足を組む新妻の顔を見つめていた、「会長、大阪の勢力は着々とこちらの島に足を踏み込んできています。何か策を講じるべきです、」

「最近組織が緩んできてるんじゃないか?、なぁ、新妻、斎藤…」 幹部達のその発言に斎藤は冷静に返答した、「組織の力が弱まっているのは、元々古い体質を構築し続けたあなた方の責任であり、我々が今生き残ってこれているのは、この私が策を練んじてきたからです。」    

斎藤からの発言に、二名の幹部は睨みつけながら返答することなく口を閉じた、「おい…斎藤、」

すると突然、じっと黙り込んでいた織田が斎藤の名を呼び掛けた、「山部の件はどうなっている?」ドスの効いた声から放たれる織田の圧力に、斎藤は少し動揺を隠せなかった、「やはり、会長側からも情報が回っていましたか、山部でしたらしばらくの間、遠くへ身を隠させています。」   

じっと睨み付けるような眼光でこちらを見つめる織田に斎藤は対抗するような姿勢で、織田の視線に目を合わせなかった、「斎藤…、次はしくじるなよぉ!…」放たれた織田の威圧した怒号に、斎藤は無の表情で一言応えた、「会長にはご心配かけません」。




その頃芝原署内では、和田部管理監に呼ばれた加木は、急遽組織犯罪対策取締部へと足を運んでいた、「管理監、急な用件とは一体何でしょう?」 廊下を歩き続ける和田部に加木はそう問いかけた、「行けばわかる…」 和田部はそう応えるだけであった、「ガチャン!」ドアが開き、取り調べ室の裏側の部屋へと入り込んだ和田部に加木は後ろから、緊張した様子で静かに中へと入った、マジックミラーの奥からは、薄暗い部屋で強面なマル暴の取り調べを受ける一人の男が座っていた、その男に加木は見覚えがあった、新田を連れ去ろうとしたメンバーの一人であり、三上、井崎と対峙していた、あの清掃員の男であった、「奴がどこまで知っているのか、お前が聞き出せるか?」 和田部は険しい表情で男の顔を見つめながら隣にいる加木へそう問いかけた、「恐らくあの男は、雇われの身です、組織の実態などそれほど把握していないと思われます。ただ、三上を襲った山部の居場所なら聞き出せる筈です。」そう言い放つと加木は着ていたスーツを脱ぎ、取り調べ室へと移動していった、やがて加木が取り調べ室の中へ入ると、マル暴の刑事は男を睨み付けたまま席から立ち上がった、すると、加木はゆっくり席へと座り込むと、そのままじっと男の目を覗き込んだ、しばらくの間沈黙が続き、静かな緊張感が漂い始めたその時、加木が口を開いた、「釈放してやれ、」  加木から放たれたその言葉に、男は突如として慌て始めた、「待て!話が違うだろ!」  すると、「バァァァン!」加木は力強くテーブルを叩きつけた、「お前が、黙ろうが、話そうが、警察が知っていることだ、調書を取る意味がない!」  その言葉に男は動揺を隠せずにはいられなかった、「このまま釈放されたら俺が殺されちまう!」  「のこのこと逮捕されたのは、身代わりの為か、」 そう呟いた次の瞬間、加木は男の目を見つめながら一言問いかけた、「山部は今どこにいる?、戸熊一家殺害事件と何か関わっているのか教えろ!、そうすれば安全は保証してやる」 加木は男にそう訴えた、「山部さんの事は知らない、本当だ!?、、だが一つだけ知っていることがある!」  その発言に加木は食い入るように男へ詰め寄った、「知っている事は何だ?」     「戸熊の家族、あと、田中を殺った男だ、その男は組織の中でもトップシークレットに隠されているヤバいスパイだ、」 「その人物の名は?、」

すると、男は周囲を確認すると、加木の目を見つめながら応えた、「名前は、桐生…確か男はそう呼ばれていた」  語られた男の苗字を聞かされると、加木はすぐに席から立ち上がり、取り調べ室から飛び出すと、廊下で待っていた刑事達に向けて、容疑者の名前を伝え始めた、「マル被の名は桐生と言う男です!、すぐに当時現場付近にいた人物達の中から桐生を探し出してください!」加木は必死に刑事達へ呼び掛けると、部屋から出てきた和田部が加木を呼びつけた、「管理監、!」    「でかしたぞ加木、我々も捜査に遅れを取るなよ、」 「はい!」

加木は威勢よく応え、管理監の後を追った。

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