第11話 正義と悪、激突

「ヴゥ…ヴゥアワァァァァァァァァ!」逆さの状態で微かに意識のある、三上は頭から出血しながらも、気絶する新田をどうにか呼び掛けようとした、その時、「ガチャン!」割れた車両の窓ガラスから手を出し、鍵を開けてドアを抉じ開けた、山部が外から姿を見せた、山部は気絶する新田をそのまま車内から引きずり出した、「お前…、織田会の……!」山部は血だらけの三上の状態を見ると、嘲笑うかのように苦笑した笑みを浮かべながら、反応することなく立ち上がった、「畜生、血だらけじゃねぇか、」新田を脇から支えて運び出す山部は、その状態のまま、電話を掛け始めた、「おい!、ターゲットを捕えた、さっさと屋上に来い、」 山部は険しい表情で再び新田を連れ出し始めようとした、その時、「カチッ!」 思わず山部は驚きの余りに鼻で笑った、目の前には、先程まで横転する車両の中にいた三上が、拳銃を構えて立っていたのだ、「これでお前達が事件に絡んでいることに確信がついた、」    「目障りなんだよな~、俺はな、計画を邪魔してくる奴らが一番大嫌いなんだよ!」   「さっさと彼女をこっちに渡せ!」三上は怒りを露にし、鋭い視線で睨み付けながら、拳銃のレバーを下ろした、「フフフッ、」すると、山部は抱えていた新田をその場から離し、スーツの裏ポケットに隠し込んでいたナイフを取り出してきた、山部は力強くナイフを握り締めると、三上に向けて構えた体制をとった、二人の間に緊張が走り出した、次の瞬間、山部は三上の方へと襲いかかってきた、すぐに三上は拳銃の引き金を引くも、弾は避けられ、山部が急接近してきた、山部が振りかざすナイフは三上の胸元へと刺してくるのを、三上は咄嗟に避けるも、山部の素早い手首の動きで、すぐさま次の攻撃が振りかかってきた、「グウッ!」ナイフが刺さる直前で、三上は右手で握る拳銃でナイフの先を防御し、左手は山部の手首を掴んだ、「……!」互いに睨み付けつけ合いながら、力が拮抗していると、隙をついて山部は、三上の腹部を蹴り飛ばした、三上は痛みながらその場から体制を崩して倒れ込んだ、頭からの激痛と重なり激しい痛みが身体を襲うも、耐えながら三上はゆっくりと立ち上がった、「カチャッ!」三上は再び拳銃を構え出すと、銃口を山部へと向けようとしたその時、山部は気絶したまま新田を無理やり立ち上がらせ、所持するナイフを新田の首もとに近付けて、人質を取っていた、「これ以上、俺に近付くな、この女が死ぬぞ!」 三上にそう警告すると、不敵な笑みで後ろへと歩き始めた、逃げようとする山部に、三上はじっと拳銃を構えたまま、一歩ずつ山部に迫ろうとした。



緊張が走るなか、山部は屋上駐車場を抜けて、ビルの屋根歩廊へと逃げ込んでいた、やがて、山部がキャットウォークの階段へと登っていた時、気絶していた新田が目を覚ました、しかし、新田は何が起きているのか状況が理解できなかった、「カツン!カツン!」足場は狭くなるなか、三上は拳銃を向けたまま、目線で新田を見つめながら相槌をうった、一方の山部は、しつこく追い掛けてくる三上に苛ついた様子で睨み付けていた、すると、反対の方から足音が聞こえてくるのを三上は耳にした、やがて足音が止まると、反対の通路にいたのは、井崎であった、「フフフッ、面倒臭い事になったな」  井崎は黙り込んだまま、怒りの表情で山部の方へと接近していた、その時、「山部さん、遅れました」 井崎の背後から駆け付けてきたのは、新田を最初に拐った、あの会社員の男と派手なシャツを着る目付きの悪い男であった、「そいつも、ついでに処分しておけ、」

二人にそう言い放つと、次の瞬間山部は、人質にしていた新田の首の後ろを殴り付け、新田は再びその場から気を失って倒れた、すると、すぐさま山部はナイフを握ったまま、三上の方へと走り出し、ナイフを振りかざした、「ウォォォォリャアァァァァ!」三上は咄嗟に持っていた拳銃を捨てると、拳を握り締めて山部からのナイフを避けながら、反撃のパンチを繰り出した、素早い攻防をが続くと、再び山部が三上の胸へとナイフを突き刺そうとしたところを、一瞬の動きで、ナイフを持つ手首を掴み、そのまま勢いを合わせて関節技を取った、「グギィィィィ!」山部は冷静さを喪い、関節を取る三上の身体ごと、力ずくで手すりの方へと押し出していった、三上は強く背中を手すりへ打ち付けると、力が緩んだ隙に、今度は山部が、三上の眼球へとナイフを突き刺そうと動いた、「!!」  三上は間一髪、目元の先で両腕で山部の手首を掴んでナイフをギリギリで止めていた、しかし、山部はそこから、上から三上の目元に向けて反動を使って押し込んできた、「糞がぁ!死ねぇぇ!」 怒りの表情と共に怒号を浴びせながら、山部は三上を殺そうとした、「ウォォォォォォォ!」 三上は残りの有り余った力を振り絞って、ナイフを突き放そうと抵抗した、すると、ナイフは三上の目に当たることなく、別の方向へと力が向けられ、ナイフは手すりへと当たった、そして三上は体制が崩れた山部の背中を掴むと、そのまま手すりから持ち上げ、屋根歩廊から山部を落とした、「ガシャァァン!」デカイ落下音が下から響き渡り、山部は5メートルの高さから、ビルの屋上へと背中を強く打ち付けた、「はぁ…はぁ…!」 荒い息を吐き、三上はその光景を見ながら、手すりを握ってその場から崩れ落ちた、ふと、顔を上げると、視線に映ったのは、キャットウォークの上で倒れる新田、そして、会社員の男、シャツの男が周辺で倒れていた、「どういう事だ?」  突然頭に浮かんできた疑問を前に、井崎は走って三上のもとへ駆け付けた、「大丈夫ですか!、三上さん!」   三上はもう考える気力もなく、井崎の目を見つめた、「無事で良かったです…、」   するとその時、「何してるんだ!?」 遠くから何者かの声が聞こえてきた、井崎は三上から視線を外し声のする方へ振り向くと、そこには拳銃を構える、安藤の姿があった、「止めろ安藤!、拳銃を下ろせ、」 後ろから遅れて駆け付けた加木が、状況をすぐに理解し、慌てて安藤に拳銃を下ろすよう言いかけた、安藤の視線は井崎を疑ったままであり、加木は三上の負傷に驚いていた、「おい!すぐに救急を呼んでくれ!」  加木も三上の近くへと来ると、三上は微かな意識で立ち上がろうとするのを、加木は制止させた、三上はふと、手すりから下を覗くと、そこには既に山部の姿は消えていた。

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