第10話 奇襲
「はぁ…はぁ…!」 新田を見失った井崎は、その後、くまなくデパート内の店の中を確認しながら走り回り、新田を見つけ出そうと動いていた、「畜生、一体何処にいったんだ?」深刻な様子を見せる井崎は、荒い息を出しながら、新田をそのまま探し続けた。
その頃新田は、一階デパート内の裏口へと繋がる、スタッフルームへと逃げ込んでいた、静かに息を押し殺しながら廊下を駆け足で走りると、スタッフにバレないよう隠れながら、階段を駆け上がり、二階に店が立ち並ぶ廊下へと繋がる、ドアの前へと到着した、こっそりと扉を開き、外の様子を慎重に見渡すと、さっき目撃した男達の姿は周囲にいなかった、新田は急いで廊下へと出ると、ドアが静かに閉まるとともに、デパート内から抜け出そうと、再び歩き始めたその時、「動くな…!」 突如新田背後から声が聞こえると、背中に銃を突き付ける感触を感じた、恐る恐る後ろを振り向くと、そこには清掃員の格好をした男が銃をこちらに構えていた、「次逃げたら、殺すぞ、」男はそう言うと、無理やり新田の肩を掴んで引きずり始めた、「キャー!、」 諦めかけその場から叫んだその時、清掃員の男の前に、井崎が突如として現れた、「チッ、」清掃員の男は苛ついた表情で、ふと新田に向けていた銃を井崎へと向けてきた、すると、井崎の表情は無のまま、ゆっくりとこちらへ歩いてきた、「井崎君逃げてぇぇぇ!」 痺れを切らした清掃員の男は、井崎の顔に向けて引き金を引こうとしたその時、一瞬の隙に井崎は男の銃を押さえつけ、そのまま肘を男の顔へと殴ると、素早い速さで男に更なる暴行を加えて、その場から気絶させた、「ガチャン、」清掃員の男はそのまま銃を床へと落としたまま、倒れた込んだ、「えっ!?、」突然の出来事に驚きを隠せない様子の新田を、井崎は気にすることなく駆け寄った、「新田さん、警察が近くに来てる、ここから避難しましょう!」すると、
「おい!あそこにいたぞ!」遠くから新田を狙う男達の姿が見えた、「早く行きましょう!」そう言い掛けると、二人はその場から走り出した、そして、一階のホールから、声を聞き付けた加木、安藤を含む、芝原署刑事達は、一斉に男達の後を追い掛けた、「織田会、構成員と思われる人間を見つけた、至急二階へと集まれ!」 安藤は走りながらトランシーバーで部下達の召集を呼び掛け、刑事達は人混み避けて二階へと向かっていた。
「バン!」井崎は勢いよく扉を開ける、二人は非常階段の中へと入った、「出口はどっちが近い!?」 「下に行きましょう!」新田からの言葉に同意し、一階へと降りようとした時、下からこちらに階段を上がってくる、目付きの悪いシャツを着た男の姿が見えた、やがてシャツの男は、二人の顔を見るや否や、不吉な笑みを浮かべながら、次の瞬間、ダッシュで階段を駆け上がってきた、「駄目だ、上に行こう!」
「待てやコラァぁぁ!」 二人が急いで逃げた先は、屋上駐車場であった、井崎は周囲を見ると、とにかく新田を連れて、駐車場へと止まる車両の影に隠れ込んだ、新田も車両の下へと身を潜めるとじっと黙り込んだ、すると、追ってきていたシャツの男が出てきた、「糞、!ったくどこ行きやがった?」 男が立ち去るのを待っていたその時、「井崎さん?」 ふと後ろから自身の名前を呼ぶ声が聞こえ、背後を振り向くと、そこには、信頼する三上の姿があった、「三上さん、」
三上は井崎だと確信すると、ホッとした様子でこちらへと向かってきた、「どうやら間に合ったみたいですね、井崎さん、ここにいると貴方が怪しまれます、早く逃げてください、あとの事は私に任せてください、必ず疑いを晴らします!」
そう言いかけると三上は座り込む井崎の両肩を握った、「わかりました。新田さんをお願いします、」井崎と三上はお互いに目を向け、立ち去る前に、真剣な表情で相槌をうつと、井崎はその場から立ち去った。
足早に屋上を歩いていると、突然井崎の足が止まった、「目的は忘れたのか……井崎…、」姿が消えていたもう一人の井崎が、目の前に立ちはだかっていたのだ、「消えろ…今すぐ消えろ!」 ふと、井崎は嫌な予感を感じだし始めた。
「加木さん、新田を見つけました、これから署に戻ります。」 三上は保護した新田を助手席へと乗せ、加木に連絡を掛けながら警察車両の運転席へと乗り込んだ、「わかった、どうにか他の刑事には報告書を纏めおいてやる、」 「ありがとうございます。」 加木からの連絡を終え、携帯をしまうと、一度新田の方を振り向いた、「事件の真相に辿り着けるには、新田さんの力が必要です」 「どうして、私はあの人達に追われてるんですか?」 ハンドルを握りながら三上は息を呑んで応えようとした、その時、「ブオォォォォォォォォ!」 突如横から猛スピードで二人が乗る警察車両へと、黒の車両が激突してきた、「ドーーーーーン!」当てられた警察車は凄まじい衝撃音と共に勢いよく横転していった、クラッシュした警察車両からは、でかいサイレン音が鳴り出した、「フフフッ、」 ぶつかってきた車両の運転席から、ゆっくりと扉が開くと、車両から出てきたのはニヤリと笑みを見せる山部であった。
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