第6話【孤立無援でも】

 はっきり言おうTRPGとは別にやらなくて良いものである。※ボッチ談

 はっきり言おうTRPGを上手くても人生で良い事はあまりない。※ボッチ談

 はっきり言おうTRPGで何かしらの一生の出会いなど期待するな!!!!※ボッチ談


 久しぶりにPLをしていたセッションの初め頃。宇辻は異変を感じた。

「……何かすり寄ってるやつがいる」

 時々いるのだ。TRPGで出会いを期待するような人が。

 そのモノの口調は男性的であり(以下Aと呼ぶ)、すり寄られている対象の口調は女性的である(以下Bと呼ぶ)。

 Bは初心者PLであり、Aはそこそこ上手いPLという事で教えるという体での会話が続くのだがどうも下心が入っている様に見えてしまう(宇辻もどちらかというと初心者であり、今回のシステムに詳しいとは言いずらいのだが、AはBしか見ない)。

 宇辻はあまりボイスでのセッションをやりたくない。それでテキストでのセッションが主流なのだが、そのテキストで見ていても露骨なまでのすり寄りが見える。

「……孤立した」

 そうした時宇辻はなるべく中立を保とうとどちらにもすり寄らない方向へ行き、面倒ごとを回避するのだが、これが三人のセッションであるとPCが孤立する。

「(なんでセッション中でキャラがボッチにならないといけないんだ???)」

 TRPGにおいて基本キャラクターたちは助け合うものである。

 多少不仲にはなっても全体が上手く噛み合い回るように能力を尽くすことこそが基本的なPLたちの使命だと宇辻は思っているのだが(忘れたり、間違えたりすることは全然許す)。


 露骨な優遇が入りだした。


「……………」

 宇辻は今回アタッカーである。この卓で唯一の。

 だというのに、大したダメージも与えられないBのPCに対して支援を飛ばしていくAを見て宇辻は色々な諦めがついた。

 宇辻は何かを基本的に批判したりすることはしたくないと思っている人種である。

 卓というのは一時的な出会いであり、その中で何かをぐちぐち言い出すと『楽しい遊び』としてのTRPGが成立しなくなってしまう。

 それは初心者であるBに対しても良い体験ではないし、GMに対しても卓自体に問題があるようにとられるのは好ましくない。

「(まだ、ゲームとして崩壊していない)」

 しかし、ゲームとはクリアするものである。

「支援がない?だったら、自分だけで勝てばいい」

 TRPGにソロプレイは珍しくはあるが、”ない”ものではない。ただ、その後の虚無感にどうしても襲われるが、今回はBGM(PLたちの事を指す)付きだ。

 幸い自分はアタッカー。ゲームクリアの条件は基本的に【ラスボスの撃破】ならば。

「俺が全てをクリアすれば、ゲームは終わる」

 孤立無援だが、それでもいい。GMがいるだけでも自分はとても幸運な存在なのだ。

 ソロプレイではGMも自分がしなければいけないというのに全ての処理をしてくれるGMを他人がしてくれるだけ何と幸運か。

 そうして全てが自己責任であるソロゲーに宇辻は身を投じた。

 

「勝った」

 パソコンの前で片腕を上げ勝利宣言をする。実質的PCは一人、後は肉壁という状況下において自分は勝利したと宇辻は満足した。

 最後までAはBの事しか見ていなかったがこうなれば誰も責める事はない。なんせ勝利したからだ。”自分”は。

 足手まといを持ちつつも、全てを尽く葬り去り、ラスボスを倒す。なんという快楽か。

 GMからも裏で称賛の声が送られ更に宇辻の顔はにやけた。

「いやー楽しいセッションでしたね」

 ただ、Aがそう言った瞬間、今までそこそこの距離を保っていたGMと宇辻も口を閉じ、無視をした。

 もうセッションは終わりだ。会話など必要がない。

 PCもほぼボッチだったのだ。PLも心を閉ざし、先程のログを見直し、勝った事への愉悦を一人味わおう。

 そう思いAをブロックし、宇辻は卓を閉じた。

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