第5話【責任は重圧であるが】
終わった。宇辻がそう思ったのは卓を始める2日前の出来事だった。
宇辻は新しく買ったTRPGを遊ぼうと、PLになれる卓を探したが結局ボッチ気質から勇気が出ず、参加することが出来なかった。
そうなるとどうするかというと大博打の手段である。
GMをするしかない!!
宇辻はそうして仕方なくGMをやる事が多い。
別にGMが嫌いというわけではないが、GMにかかる責任が嫌なのである。
GMというのはセッションを管理するための管理者であり、セッション内での責任者のポジションに当たる。
GMを貧乏くじとするなら恐らくこの二点の要素が大きい。
特に、特に知りもしない他人の場合更に胃が痛くなることは必須なのだ。
「ああ、嫌な予感がしていたんだ……」
そもそも今回の集まりは集まったはいいが、怪しいところがあった。
まず!反応を返さないPLがいる!!!
PLの事を特に悪く言いたくない宇辻だったがオフセッションの場合PLとの会話は大体が【文字でのやり取りになる】。
こうなった場合、反応を返さないPLというのは会話ができないのである。
会話が出来ないという事は、日程がドンドン詰まっていくという事である。
これには宇辻は頭を抱えた。
他のPLたちも気遣いをし、会話をしないPLに話しかけていたが、全く会話をしようとしない。
「(コミュニケーションをしてくれ、頼む)」
そう思っていた宇辻の願いも空しく、宇辻は日程を詰まらせないために期限を設定することにした。
ただ、期限というのはGMにもよるが、あまり設定したくないものであると宇辻は考えている。
何故なら期限を管理するのがめんどくさいからである!!
だが、PLたちが喋ってもおべっかの譲り合いにしかならないと判断した宇辻は【希望を出せ】とGMの権限の元宣言し、そちらは期限内に集まった。
なお、全員提出が終わったのは期限ぎりぎりであり、正直ここからして怪しかった。
次にキャラシートの提出期限をセッション3日前に設定した。
宇辻視点PLたちの行動はかなり遅く、それを待っていてはいけないと危険信号が1つ点灯していたのだ。
そうして迎えた提出期限当日。
まだ、キャラシートを出してないPLがいる。
1日前に警告をしたのに、まだ、出さないPLがいる。
宇辻はセッションがやるための、やる気がごっそりなくなってきていた。
GMがセッションをする際一番必要なのは何かというと【やる気】である。
これは根性論のように感じるかもしれないが、本当に重要な事だ。
機械的にGMをするにしても、やる気がなければセッションは出来ない。
問題なのは【やる気ゲージ】は基本的に減点式で減っていき、加点で増えることは滅多にないという事である。
セッションが開始すれば加点される要素もどんどん増えていき、上がっていくことも出来るのだが、セッション前の文字だけの会話でGMはPLに対して疑心暗鬼に陥った場合、もはや下がる一方だ。
こういう事は大体PLとGMのコミュニケーションが出来ていない時に起こったり、食い違いがあって起こる事なのだが。
丁度ここに反応を返さないPLがいる。
そうして提出期限日に「作るのが難しくてまだ作れていません」というクソみたいな返事が来た時、宇辻のやる気ゲージは大体なくなっていた。
そして提出期限日一日過ぎ、セッション2日前。
丁度この日は土日だった。
休みなので、出来るだけ返事を待ち、キャラシートを確認できる体制でいようと、GMとしての勤めを果たすために宇辻は努力をしていた。
夕方になったがまだ返事が来ない。
宇辻は流石に精神の限界に来ていた。
昨日、一応と思い夜中までキャラシートを待っていたせいだ。
「終わってる」
GMとは誰もがあまりやりたくない作業だ。
それはGMを大切にしないPLがいる事が一番の問題だと宇辻は思うことがある。
勿論GMが傲慢になってはいけないと宇辻は常々思っている。そういったGMの傲慢により、不快な思いをするPLがいると自身で自制を出来るだけ心掛けている。
だが、これはカスだ。
こういったことがあるからTRPGというのはカスなのだ。
そうして、宇辻はセッションを止めることにした。
原因である返事をしないPLを除き、他の集まってくれたPLには個別に謝りを入れ、最終的には解散となった。
宇辻は思う。
「(GMはこうして各種方面に頭を下げて、原因となった”やつ”は悪びれもしてないんだろうな)」
何故なら宇辻は知っていた。
その原因となったやつはキャラシート提出日に他でセッションをやっていたことを。
ボッチは辛い。誘う友達もいず、こうして恵まれたやつからやる気だけ取られていくのだから。
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