六
俺の予想通り。
甲斐は駅まで向かうと改札を潜った。
やつの後を付ける俺も駅の中へ入る。
駅のホームで甲斐の姿を探す。
甲斐はあのジャージのお陰で直ぐに見つかった。
下り方面の電車を待つ列に甲斐は並んでいる。
俺は甲斐と憑かず離れずの距離を保ち電車の列に並ぶ。
俺から数えて三列目あたりの列に甲斐はいるはずだ。
アナウンスの後、電車がホームに滑り込んでくる。
俺はその電車に乗り込んだ。
そして電車の中を移動して甲斐が乗っているであろう車両を目指す。
車両の連結部分の扉の窓から隣の車両にいる甲斐の姿を認めると俺はこの車両にとどまり、窓から甲斐を見張った。
こうしていると高校時代の南のストーカー探しの時の探偵ごっこを思い出す。
懐かしい気持ちを仕舞いこみ、俺は甲斐を目を細めて見つめるのだった。
電車のアナウンスが次の乗車駅の名前を告げる。
新宿駅だ。
甲斐が動き出した。
どうやら新宿で降りる様だ。
俺は甲斐から目を離さずに降りる準備をした。
電車が止まり、扉が開くと甲斐が扉に向かって進む。
俺も同じく扉に進み駅のホームに出た。
横を見ると直ぐ近くに甲斐の姿が。
俺は人混みに紛れて姿をくらます。
甲斐が俺に気が付いている様子は無かった。
ほっとすると引き続き甲斐の尾行を開始する。
甲斐のやつは新宿に一体何用か?
仕事だろうか?
俺は色々と想像を膨らませた。
そうして甲斐の後を追ううちに気が付いた。
これって二丁目までの道順じゃあなかろうか、と。
俺の予想通り、甲斐の後を追って辿り着いた先は新宿二丁目だった。
二丁目何かに一体何の用があるんだ、と疑問を浮かべながら俺は甲斐の後をつける。
時間は午後の四時半。
こんな時間に二丁目に、だなんて、贔屓の店でもあるのだろうか?
甲斐が二丁目の店に通っているだなんて意外な感じがした。
甲斐は洒落たビルに入って行った。
五階建てのビルには様々な店の看板が上から順に並んでいた。
ほぼ英語ばかりで書かれた看板達。
英語ってだけでどうしてか洒落た感じが出るのは何故だろうか。
何てことが一瞬頭を過る。
余計なことを考えている場合ではない。
今は甲斐だ。
俺は甲斐の入って行ったビルに近付く。
外のガラスの扉越しに甲斐がエレベーターを待っているのを確認した俺。
エレベーターを待っているのは甲斐一人だけ。
甲斐が到着したエレベーターに乗り込んだのを見ると俺は直ぐにビルの中に入り、エレベーターが何階で止まるのか確認した。
エレベーターは最上階の五階で止まった。
俺は少しの間、その場にとどまり、頃合いを見計らう。
もういいだろうという時になると迷わずエレベーターのボタンを押した。
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