第21話 闇夜の神子、ミユ
「まず誤解を解く為に言っておくが、私達が求めている闇夜の神子とは、邪神の呪いを取り込んでも狂う事のない完全なる呪詛喰らいの事を指す。そしてミユ、お前がその闇夜の神子だ」
なんか、さっきから話のスケールがぶっ飛んでてついていけない…………
「待てよ、瘴気の問題も魔王を倒せば全て解決するんじゃないのか?」
「残念ながら、魔王は魔族の王というだけで奴に瘴気をどうこうできる権能はない。言葉遊びのようだがこれが事実だ。それどころか、魔王じたいが邪神の傀儡になっている始末………お前達の本当の敵は、魔王の存在を隠れ蓑にして暗躍してる邪神だ」
「女王陛下、そもそも邪神とはどのような存在なのですか?」
リゼルは冷静にそう尋ねる。
「それを語るには、神話時代にまで遡らなくてはならない。まず、神々による地上の統治権争いがあった事は知っているな?」
流石にそれくらいは知っている。俺達は思い思いに頷く。
「そもそも、地上で統治権争いをしていた神々とは、
「そして、勝手に地上に降りて罰を受けたのが私………!!!(ドヤァ✨)」
リタは再び奇妙な冒険譚風のポーズをしながら、キメ顔でそう言った。
「まぁリタの話は置いといて、当時の私は地上を我が物顔で闊歩する神々を………天使達を憎んでいた。そして、『争いを止める為に』戦う、ニュクスという変わり者の天使に出会った」
「最初は利害の一致で協力していただけだったが、ニュクスは明らかに他の天使とは違っていた。底抜けに優しくてどこか人間臭く、同時に自身の目的の為にはどこまでも人間性を捨てて合理的に振る舞う事のできる『優しいヒトデナシ』だった………』
「私達はニュクスの名のもとに、多くの天使を抹殺した。やがて戦いが終わるかと思われたその時、死んでいった天使達の怨念と、この後に及んでまだ争いを止めようとしない生き残りの天使達の欲望と狂気から、最後にして最悪の神『邪神』が生まれた」
「無差別に死と狂気をばらまく邪神のせいで争いは泥沼化して、やがてニュクスが我が身を犠牲にして邪神を封印した事により戦いは終わった」
「そして流石ニュクスというべきか、奴は自身が死んでも邪神の狂気に抗う事ができる『呪詛喰らい』を保険として残していた」
「ニュクスが常夜の国にばらまいた『呪詛喰らい』の因子は世代を超えて受け継がれ、進化を続けてやがては邪神を倒しうる存在となる。私達はそれを長年見守ってきた。その集大成がミユ、お前だ………」
神話時代の真実を全て語り終えたクロツキは、ほんの僅かな期待の籠もった目で再びミユを見た。
▷▷▷
ミユside
「…………………………」
………………………ずっと、『ボクの意味ってなんだろう?』って考えたけどその答えは思っていた物よりも遥かに重くボクにのしかかる。
逃げて逃げて逃げ続けて、見えてる物すら見なかったボクだが、今は帰る場所もあるし、ボクを愛してくれる人もいる。
確かに、ボクが差別され迫害されてきた事実は今後も消える事はないし、心に傷として残るだろう。
でもそれ以上に、今のボクには守りたい繋がりがある。
それを奪おうとする者がいるのならば、邪神だろうとなんだろうと許さない。
「…………邪神の呪いに抵抗できるのはボクだけなんでしょ?わかった…………やるよ」
「でも、勘違いしないでね?ボクは犠牲になる気なんてないし、邪神がボクの『クロード達と生きる未来』を世界アドリビトゥムごと壊そうというのなら、どこにいたって殺す………その為に、当然協力してくれるよね?」
ボクはクロツキに向かって笑顔でそう言った。
ミユside 終
□□□
人物紹介
クロツキ
常夜の国の女王にして、神話時代から生きる九尾の妖狐。アドリビトゥム英雄譚における妖狐は自然霊から進化した存在であり、獣人や亜人とは根本的に異なる種族。
神話時代に、
『
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