第20話 逃げ出すよりも、進む事を君が選んだのなら
ゴドウィンの紹介で篝火旅団の野営地に入り、ザイードさんへの面会の約束を取り付けた。
「久しぶりだな、ミユ……………」
歴戦の猛者の風格と凄みを持つ、屈強で衰えを感じられない老人、篝火旅団頭領のザイードさんは厳かに話を切り出した。
「………………」
「お前は何故、何も言わずに篝火旅団を抜け出した?家族が突然いなくなったら、心配するだろう?」
ザイードさんは先程までの威厳ある姿とは真逆の優しい態度でそう言った。
「………………呪詛喰らいである事がバレたからです………」
ミユはうつむきながらそう答えた。
「あのカルロスの奴に何か言われたか?安心しろ、奴は既にクビにした」
「え…………?」
「俺達傭兵は、いつ死ぬかもわからない因果な稼業だ。時には依頼主さえも敵となる。そんな中で、信用できるのは仲間だけだ…………!!!その仲間を信じず、裏切る奴はクズだ。そんな半端者、うちにはいらん」
「だいたい、スラム街で本能のままに獣のような生活をしていたお前を拾ったのも、お前の両親と生前に約束したからだ。それを、偏見からくる不理解で一方的に捨てると思うか?」
「…………!?」
「お前が呪詛喰らいである事くらい、昔から知ってたさ」
「ザイードさん………!!!」
「いつでも戻って来い、ミユ」
ミユは堪えきれず泣き出した。今までのように孤独と悲しみからではなく、帰る場所を見つけた喜びの涙だ。
「うむ、なかなか感動的な場面だが、事態は一刻を争うのでな………少し話に割り込ませてもらうぞ?ザイード」
「女王陛下………!?」
ザイードがすぐさまひれ伏す。
「さて、はじめましてだな勇者パーティの諸君。私は常夜の国の女王、クロツキ。お前らの基準で言うところの『神話時代』では、闇夜の神ニュクスの眷属だった者だ」
唐突に野営地に現れた、黒衣に身を包む九尾の妖狐、女王クロツキはそう言ってミユを見た。
「ついに見つけた………闇夜の神子を………」
闇夜の神子………???よくわからないが、ミユを狙うのならば容赦はしねェ……………!!!
俺がクロツキ女王に殺気を向けたその時、何者かに指で背中をつつかれた。
「駄目だよ〜………?人の話は最後まで聞かないと〜………」
「……………ッ!?」
こいつ、一瞬で背後に………ただ指で背中をつつかれただけなのに、刃物を向けられているようなプレッシャーを感じる。
「クロード!?お前、何者だ…………!!!」
アインは心剣を抜き放ちながら、俺をかばおうとしている。
「リタ·アズリア。私の名前だよ〜………」
金色の髪に碧眼で蒼い翼を持つ鳥系の亜人(←だと思う)、リタ·アズリアは笑顔のまま俺の後ろで、何をするでもなく立っている。
直感的に理解してしまった。戦って勝てるとか勝てない以前にコイツらは、そもそも存在としての格が違いすぎる。
「リタ·アズリアさん、貴方、何者ですか…………!!!」
リゼルがいつになく警戒しながら尋ねた。
「ただのお茶目な鳥系亜人だよ…………」
「それは嘘です。隠してるつもりでしょうけど、そもそも魔力の規格じたいが人間の物からかけ離れすぎています。もう一度問います、貴方は、何者ですか???」
「バレちゃったか〜………私は、天界『エアルス』を降りた堕天使、リタ·アズリア…………そして、クロツキの恋人だよ〜………☆」
リタはそう言って、『バァ〜ン!!!』という擬音が似合いそうなキメポーズを取った。
□□□
用語紹介
天界エアルス
語源は英単語の『EARTH』を無理にローマ字読みして捻り出した言葉。
異世界『アドリビトゥム』の創造主や、歴史の表舞台から去った神々の住む世界。なお、メタ的な視点で見ると『EARTH』は地球なので、創作の世界であるアドリビトゥムから見た、現実世界の事であるとも言える。
人物紹介
リタ·アズリア
メカポメが書いている二次創作オリキャラの逆輸入。
自らの意志で天界エアルスを離れた堕天使。
暴風を生み出し、支配する『
なお、この権能によって生み出される風は単なる物理現象ではなく、『暴風』という概念の具現化である為に魔法攻撃を弾いたり、あらゆる物理現象を遮断したりと攻防両面において圧倒的な力を持つ。
余談だが、リタは堕天する際にアドリビトゥムの創造主から裁きの雷を受けた事が原因で権能に傷を負っており、『
クロツキ
常夜の国の女王。常夜の国は女王クロツキを象徴として、多種多様な種族が共に生きる多種族国家である。そして、各種族の代表として選ばれた長による議会が女王を補佐して最終的な意思決定をクロツキが行う。
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