第17話 刻の魔剣
『我は刻の魔剣なり…………我を支配する物は刻を支配する。そして、汝にはその資格がある……………』
刻の魔剣とやらは感情を削ぎ落としたような声で俺に語りかけた。
『汝は、その心に何を望む?我との契約の証に何を誓う?』
本当に……………刻を支配する事ができるのならば……………過去に戻れるのなら…………
「俺を…………、ミユが死ぬ前の時間に戻してくれ!!!やり直すんだ…………そして、次はうまくやる。俺はテメェに誓う!!!『決してミユを1人で死なせねェ!!!』契約でもなんでもしてやるから力を貸せこの野郎ォ!!!」
『承知した。これより我は汝と共にある』
眩い光と共に意識が遠のき、再び覚醒した時にはミユが死ぬ直前まで確かに時間が戻っていた。
その証拠に、俺の手には刻の魔剣がしっかりと握られている。ミユが生きてるという事実に思わず涙が溢れてきた。
「…………なんで泣いてるの?」
ミユは何も知らない、俺が泣いている理由もすぐ目の前の未来に死が迫っている事も。
だが、それでいい。俺が未来を変えるから。
そして、予定調和というべきかまたしても地面が揺れ始めた。
「『止まれェ!!!!』」
俺は刻の魔剣の力を試すつもりでそう唱えた。その刹那、世界の全てが凍り付いたかのように時間が停止した。
確信した。刻の魔剣の力は本物だ。
とりあえず止まった時の中でミユを移動させてラーヴァワームの奇襲から救い出した。
さて、そろそろいいか…………
時間停止を解除した途端に地面からラーヴァワームが飛び出てきたのでテキトーに斬り裂く。
「…………………!?…………???」
何が起こったのかわからず混乱している様子のミユ。
そりゃそうだ。ミユからすれば、ラーヴァワームの奇襲を自分の意思に関係なく瞬間移動させられたかのように何故か回避して、しかも何故か俺が迷いなくラーヴァワームを叩き斬っていたのだから。
あ〜、これは確実に怪しまれてるなァ……………
「クロード…………、なんでラーヴァワームの奇襲を事前に察知できたの?それに、なんでボクが完全に不意打ちのはずだったあの奇襲を躱せたのかもわからない………クロードが何かしたんだよね………………?それに、あの時叫んだ『止まれ』って、何?」
「絶対何か隠してるよネェ…………………???」
ミユの笑顔が怖い………………こんなの言えるかよ『実はミユが一度死んだから時を戻してやり直した』とか………
下手な事言うとボロが出そうだからもう黙るしかない。
「ふ〜ん…………、言いたくないならいいんだよ。勝手に見るから。『鷹の目猫の目狐の目、隠し事など無意味なり』」
「この魔法は、自身が凝視した対象の表に出ていない情報を開示する効果があるんだ♪これを使えばアイテムの鑑定だってできるし人の心を読む事も…………」
「ちょっと待てェ!!!そんな便利魔法反則だろ!?」
「クロードが悪いんだよ……………?」
魔法で俺の心を見透かしていたミユだったが、だんだんと表情が曇っていく。
「クロード…………」
「ほらな、だからバレたくなかったんだよ。普通に考えて重いだろ?お前が死ぬのを回避する為だけに、どんなデメリットがあるかもわからない魔剣と契約して時を巻き戻したとか……………」
次の瞬間、ミユが俺に抱きついてきた。
火山の熱気のせいでクソ暑いが今はまだ、もう少しこのままでいたい。
□□□
用語解説
刻の魔剣
神話時代に時の神『クロノス』が生み出した神器。時を支配する絶大な力を持つがゆえに、悪用される事を恐れたクロノスにより二重のプロテクトがかけられている。
一つ目のプロテクトにより、クロノスに由来する力(クロードの『
なお、誓いを破った場合は契約者としての資格を失う。
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