炎の国編

第15話 火山と共に生きる国

炎の国に到着した俺達だが……………とにかく暑い!!!


大地の国よりも地熱の恵みが豊富なのは知ってたが、ついでに空気中の湿度が高く、かなり不快な暑さだった。


そんな中でも地元の人は地下から吹き出した蒸気で卵や野菜茹でてたりと、地熱の恵みが人々の営みの一部として完全に調和している。


とりあえず茹で野菜と卵を買った。


固茹で卵ハードボイルドエッグと野菜の軽食にパンを添えて………うむ、旅グルメはこんなのでいいんだよこんなので。


この後は……………今までのパターン通り、まずは炎皇えんおうに挨拶にでも行こうか。そうして俺達は城に向かう。


 


▷▷▷ 


 


 


そして現在、


 


「勇者殿、炎の国にようこそ!!!ガハハ!!!堅苦しい挨拶とかは抜きにして、宴としよう!!!」


 


燃えるような赤髪と髭の偉丈夫、炎皇はめちゃくちゃコミュ強で豪快な方だった。なんか、アインと炎皇がありえん程呑みまくっててビビる。


 


「アイン、そろそろやめとけ………」


 


「まだ飲めるよ…………まだ大丈夫…………」


 


完全に出来上がってやがる…………


 


「ガハハ!!!アイン殿もなかなか良い呑みっぷりであったぞ!!!まぁ、余には及ばぬがな」


 


「はいはい、今日はもう終わり。流石に飲み過ぎだよ、アイン………」


 


リゼルがぐったりしたアインを介抱しながら酒を取り上げた。


対称的に、アイン以上に呑んでるにも関わらずピンピンしてる炎皇。


『えぇぃ!!!炎皇陛下のアルコール耐性は化け物か!?』という冗談はさておき………


 


「本題に入りますが炎皇陛下、もしや炎の国でも瘴気による被害があるのでは?そうでなければ、ボク達みたいな厄介者を歓迎するはずがない………」


 


ミユが言いたい事全部言ってくれた。まぁだいたい合ってるんだがミユ、自己評価低すぎない?

確かに俺達は氷雪の国で大暴れしたけども…………


 


「ガハハ!!!バレていたか………腹芸とかまどろっこしい事は昔から苦手でな!!!確かに勇者殿の噂は耳にしておるぞ。なんでも、クリスタルパレスを凍鎧竜と共に襲撃して氷雪帝を足蹴にしたとの事だな………ガハハ!!!なんとも破天荒ではないか!!!!」


 


oh………バレバレですわ………


 


「確かに、一国を揺るがす程の武力を持つそなたらは脅威ではある。しかし、瘴気に対処できる者はそなたら以外にはおらんのだ、そうだろう?呪詛喰らいのミユ殿…………」


 


「……………………」


 


ミユは俯いて黙り込んでいる。


 


「おっと、勘違いするでない。呪詛喰らいだからといって理不尽に差別するつもりはない。むしろ、余はミユ殿の力を買っておるのだ。そなたらが、我が国のカルバドス火山を中心に蔓延する瘴気を祓ってくれたならばそれなりの褒美を与えよう」


 


「もし、断ったら…………?」


 


ミユがどこまでも冷たい声で尋ねた。


 


「そうさなぁ………そなたらと事を荒立てた所で勝てるとは思わぬし、余はそなたらに頭を下げる事しかできぬ………」


 


「つまり…………あんたはミユが狂う危険性を承知しながら、犠牲になってくれ、と………そう言いたいんだな……………?」


 


腹の底から怒りが沸いてくる。何故……………、何故ミユだけが、こんなリスクを一方的に押し付けられなければならないんだ…………………?気が付いた時には、俺は炎皇の首筋に大鎌の刃を突き付けていた。


 


「クロードさん!?やめてください!!!」


 


リゼルが静止を呼びかけるが、どこか遠くに聞こえる。


 


「陛下に対して無礼な………!!!」


 


衛兵どもが即座に駆け付けて俺達を包囲した。


 


「アリア…………!!!」


 


「了解です。針と糸とは使いようソーイング·オール·シィングス…………!!!」


 


アリアのユニーク魔法により、衛兵どもは一人残らず空間そのものに縫い付けられた。


 


「今の俺は機嫌が悪い…………さァ〜て、どうしようか…………?それじゃァ今から、殺戮ショーの開幕としようかなァ……………!!!!」


 


こいつは、敵だ……………ミユを犠牲として都合良く使い潰そうとした。ミユの敵は全て排除する。呪詛喰らいだからと、ミユを利用しようとした。


だから、殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス許サナイ……………!!!


 


「余の命などいくらでもくれてやる!!!だから、頼む、この国を救ってくれ…………!!!そなたがミユ殿を愛しているように、余も我が国の民を愛しているのだ。瘴気は今この瞬間にもその影響を拡大しておる!!!このままではいずれ、炎の国は瘴気に呑まれて滅びる…………!!!我が国だけでない、そなたとミユ殿の生きるこのアドリビトゥムすらも滅びるかもしれぬのだ………!!!!」


 


「ミユを犠牲にする未来なんぞいらねェ!!!!」


 


「待って、クロード………」


 


激昂する俺を宥めたのは、他ならぬミユだった。


 


「ボクはクロードがいないと生きていけないけど、きっとクロードは大丈夫。だから、ボクはクロードの生きるアドリビトゥムを、クロードの未来を守りたい」


 


「ミユ……………」


 


「そこにボクがいないのは、少しだけ寂しいけど………」


 


今にも消えてしまいそうなくらい儚い表情で微笑むミユ。俺には、ミユを止める事ができなかった。


 

□□□

 

用語解説


炎皇

炎の国の王。性格は豪快かつ実直。まどろっこしい事や誤魔化しが嫌い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る