第14話 勇者パーティ、投獄一週間


ミユを救出して、ローレンスが生み出した混乱が治まった後に俺達パーティは一週間の投獄となった。


元はといえば全てローレンスのせいなのだが、氷雪帝に対する暴行(たぶんローレンスと戦ってる時に依代であるナターシャ陛下の身体ごとローレンス蹴り飛ばした件)とクリスタルパレスへの破壊工作(主にアインとリゼル)を、ミユに対しての処刑未遂の件と相殺する形での処置だ。こればかりは仕方ない。


 


「クロード達、とんでもない悪人になっちゃったね………ボクなんかの為に……」


 


隣の独房にいるミユがそう呟いた。


 


「気にすんな。ミユを助ける為なら悪人上等だ」


 


確かに罪状だけ見たら完璧に大罪人だが、俺は一切後悔していない。


ローレンスのいう通り、いつかミユは狂ってしまうのかもしれない。だけど俺はミユを一人にはしない。


正直、どうすればいいのかなんてまだわからないが、このアドリビトゥムのどこかにミユを、呪詛喰らいが背負う定めから解放する方法があるはずだ。それを見つけるまで俺は止まれない。


 


「さて、釈放されたら次はどの国に行こうか……?」


 


白夜の国で燻ってた頃に比べたら、どこだって驚きと発見に満ちた新世界だ。旅に出てからは常に、今までの生活が嘘みたいな楽しい日々。ミユ達と一緒なら、向かう先はどこでもいい。


ああ、俺はもう既に幸せだったんだ………


 


「次は炎の国とかどうでしょうか?」


 


リゼルが、ミユから見て左側の独房から提案した。


炎の国か……寒い所の次は暑い所に行くのな………まあいいけど。


炎の国は大地の国と地続きで非常に風土が似ている。農作物の収穫量じたいは大地の国の方が多いものの、火山が多数存在していて火山灰を豊富に含む土で採れる炎の国の農作物も負けず劣らずで質が良い。


……俺達の旅の記録を書いたら、なんかグルメ紀行みたいになりそうだな………


そんなこんなで、全く悲壮感のない1週間の獄中生活を終えた俺達は再度、氷雪帝と謁見した。


 


 

▷▷▷

 


 


「まずは皆さん、本当にご迷惑をおかけしました」


 


ナターシャ陛下が俺達に頭を下げる。聞けば、歴代皇帝の残留思念が身体を乗っ取り独自に行動する事じたいが前代未聞らしい。


 


「氷雪帝ローレンスが生前に抱えていた苦しみは私も知識として理解してはいましたが、まさか記憶だけの存在と成り果てても風化せずに焼き付いているとは想像すらできませんでした………」


 


「頭を上げてください、ナターシャ陛下。結果的に、ミユもこうして無事だったのですから」


 


アインはそう言って自責に駆られるナターシャ陛下を宥めた。


 


「そう言っていただけると気が楽になりますが、ローレンスが………、私がした事は到底許される事ではありません………」


 


ナターシャ陛下はそう言って表情を曇らせる。


確かに、ローレンスは許せないがナターシャ陛下とローレンスは完全に無関係………でもないか。でもそんな事は実際どうでもよくて………上手く言えないけど、つまり………


 


「ナターシャ陛下はナターシャ陛下だろ。俺が許せないのはローレンスで、あいつは俺が既に斬った。だからさ、上手く言えないけどナターシャ陛下がローレンスのした事で悩む必要はなくて…………だァァァァァ!!上手く言えねェ!!!」


 


俺は思った事をそのまま口に出す。ナターシャ陛下は完全にフリーズしていた。そりゃそうだよな………俺は人の気持ちに寄り添ったりとかこういうのあまり得意ではないから。


 


「フフフッ………ありがとうございます。貴方達の旅路に幸あれ」


 


ナターシャ陛下は少し考えるような素振りの後に笑顔を取り戻した。


次の目的地は炎の国。謁見を終えた俺達はクリスタルパレスを後にした。

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