花粉症が酷すぎて、性格が悪いんじゃないって言われた。

クラス全員に、自己紹介はしたけれど、一人ひとりに面と向かって自己紹介はしていない。

挨拶もしていない。


もう、グループが出来ていて、こっちに来るなオーラがしているからだ。


まだ、高校生活が始まって三日目の事だ。


オトヤに挨拶をして、何となくモヤモヤした気持ちで自分の席に着く。

それが毎日。


『退屈だった。』


授業の内容も、新たな発見もなく、難しい訳でも無く、勉強しなくても、ある程度点数は取れるくらい、退屈だった。


例えば、『授業でここが分からない。』『クソッ。』っていう感情が沸き上がらないのだ。

それくらい『退屈な授業』だった。

けれども、俺は、真面目に授業を受けている風を装った。



教室では、休み時間にお菓子を食べる人が沢山いて、匂いと咀嚼音と、レベルの低い話し声があちこちから聞こえてくる。


その音が頭にガンガン響いて聞こえてくるのだ。

俺は、中学生の頃から花粉症だったんだ。

何とか症状を薬で抑えて耐えてきたのだが、今年は一番花粉症の症状が酷くて、薬が全く効かなかった。


くしゃみと鼻水、鼻が詰まって、息が出来ない。

『窒息するんじゃないか。』って位の息苦しさ。


それと、頭が凄く重いのだ。

頭が重くて、体もダルくて、椅子に座っているだけでも辛いのに、俺のそんな様子を見てなのか分からないが、俺が、

『不機嫌だ。』

『態度が悪い。』

『性格が悪いんじゃない。』とまで言ってくる女子生徒が居て、その言葉は、俺の耳まで聞こえてきた。

聞こえてきたけれど、聞こえてないフリをした。


『お前らが騒いでいる声が、頭の中でガンガン響くんだよ。』

って思った。


体調が悪いときって、何でも敏感になることってあるだろ?

例えば、光が以上に眩しく感じたり、音が大きく聞こえたり、匂いが強く感じて吐き気がしたり、その他色々。


俺の花粉症の症状が酷くて、クラスの騒いでいる声がガンガンと頭の中で響いてて、体もダルくて、息をするのも辛くて、ただ椅子に座っているだけでも辛いのに、俺の隣の席の女子生徒がまたうざい奴だったんだよ。


その隣の席の女子生徒は、何故か俺の方向に体を向けて座るんだ。

横向きに座っている状態。

それで、女子生徒の彼氏なのか分からないが、彼氏が女子生徒の膝の上に座っているんだ。


普通は逆だろ?

女が男の膝の上に座りたいだろうが。


何だろう。

ニキビ面で、赤ら顔の体のデカイ男が甘えて女の膝の上に座っているのが、とてつもなく気色悪かったんだ。

それでも嫌なのに、こっち(俺の方向)に向いているから見たくなくても、見えるんだよ!


楽しそうに話をしている訳でもなくただ座っているだけ。

しかも、横向きで。


それが、毎時間、席替えするまで毎日。


それで、うんざりして『またかよ。』って思って、俺は、苛ついたんだ。



もう、俺は、花粉症が辛くてイライラしてるのに、隣の席の奴も目障りでイライラするんだよ。


うんざりして、俺は、顔を背けた。

その様子を女子生徒は見ていたのだろう。


俺が、ロッカーから教科書を取りに行ったら、閉めるときってああいうロッカーって音がするだろ?

『ガンッ。』って音。

それに、勢いよく閉めないと閉まらないんだよ。


それで、俺がロッカーの扉を閉めたら、『ガンッ。』って音が教室中に響いた。

そしたら、隣の席の女子生徒が遠くの方で、俺を見ながら、『哀原さんって、性格が悪いんじゃない。』って言っているのが俺の耳まで聞こえた。


『じゃあ、オマエは、ロッカーの音を鳴らさないで閉められるんだな。』

って思ったけれど、言わないで聞こえてないフリをして俺は、自分の席に戻った。


ソイツの名前は『ユカ』という。


後に、ソイツに呼び出しを食らうわけなんだが、それは、もう少し経った頃の話だ。


それと、俺のほかに花粉症の奴は誰一人いなかった。

俺が花粉症だって事は、誰にも言ってはいない。


花粉症の辛さは、なったことがない人には分からない。



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