第4話 4日目 専門デビュー

昨日、掲示板で◆Virtual † Quest◆のフレンド探しをしてみたが、反応は得られなかった。


モニターに選ばれたとか書いてあったから、このゲームをプレイしているやつがいるとしたら、これを開発しているやつか、もしくは、俺と同じようにあの箱が届いて、しかも差出人不明なのに開けて、さらにあの怪しいハガキにも負けずにゲームを開始したというかなりのツワモノに限られる。



そんなヤツ、そうそういないだろう。



でもまてよ、たしかハガキのアドレスが、なんちゃらの、情報系男子、とかいう適当なアドレスだった気がする。


俺はハガキを見返した。



うん、やっぱり。



と、いうことは、これの開発者は、情報系の学校に通う男子(あるいは女子用のアドレスもあるのかもしれないが)の住所リストをどこかから入手して、勝手に自宅に送り付けている可能性がある。




もしかしたら、ウチの学校にも、これが届いたヤツがいるかもしれない。



しかし、学校で仲間探しをするのは困難だ。授業は、オンラインでの実施が多く、クラスのやつともほとんど話したことがない。



何か策を練ろうと校内サイトにログインし、掲示板をかたっぱしから開いた。




------【部員募集中】ゲームサークル------




おっ!?


学校は、行って、授業受けて、帰るだけの場所だった俺は、サークルの存在なんて知らなかった。



ゲームサークルなら、陽キャとかいなそうだし、馴染めそうだ。


中を開いてみると、メンバーの情報が出てきた。俺の学校は、3年制だ。



3年 部長  岡崎 冬馬

3年 副部長 五十嵐 猛

2年     阿部 清貴

1年     桜庭 可憐





‥‥1年 桜庭 可憐




‥‥1年!!!桜庭 可憐!!!!!!




かれん‥‥としか読めないよな???

女の子がいる!!!(たぶん)

しかも1年!!!

しかも1人!!!



ってことはだな、もし1年の俺が入部したら、必然的に可憐ちゃんと会話の機会が発生!!



1年同士、しかもゲーム好きという共通点があれば、女子との会話ができるかもしれない!!!!




桜の舞う春の林で、フリフリのワンピースをきた可憐な少女が微笑む姿を想像した。





入部だ!!!入部しかない!!!

俺は1階へかけおりた。


「母さん!!とこやいってくる!!!金くれっ!!!」



「あら、母さんに言われる前にいくなんて珍しい。」

そう言って母さんは俺に金を渡した。



「いってきます!!!」

俺はダッシュで床屋へ向かった。



カラカラーン。



「こんにちはー。どうぞー。」

幸い空いていて、カット代を払うとすぐに席に通された。


「どんな感じにしますー?」


いつもは、適当に、と答えていた俺だが、今日は違う。

「かっ、、カッコいい感じで!!!」



「かっこいい??えと、具体的には??パーマ感なくして短くします??」



かっこいい感じ、と言ったはいいが、具体的なイメージなんか知らない。なんせ、俺は、「適当に」しか言ったことがない。



「ツーブロックとかでいいすか?」



「あ、はい、それで。あっ!あと眉毛もボサボサなんで、カッコよく!!カッコよくしてください!」



「‥‥‥‥眉毛は、整える感じで大丈夫すか。」



「あっ、ハイ!」



理容師が手際良く俺の髪と眉毛をカットし、後頭部を鏡に映した。

「はい、終わりました。後ろはこんな感じです」

鏡の中の、ばっさりと短くなったヘアスタイルの俺は、いつもより数段かっこよく見える。


「すごいいい感じです!ありがとうございます!!」



俺はドラッグストアに寄り、ハードワックスを購入した。この髪型なら、いつものゆるいパーマと違って、アバター寄りのツンツンヘアにできるかもしれない。





家に帰ると、じいちゃんにお茶を運ぼうと廊下を歩いていた母さんが、ギョッと驚いてお茶をこぼしかけた。


「渉!!!どーしたのあんた、恋でもしたのかい!!?」




「別に〜。」







よし、明日から俺も、高校デビューならぬ、専門学校デビュー、略して「専門デビュー」だ!!



俺は入部届を印刷し、カバンに入れた。



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