第35話 門の先の驚きな再会
「な、なんですってぇぇぇぇぇー!!」
左右にそびえ立つ崖でやや薄暗いゲーター侯爵道を歩く四人。
そこに、反射したロフィエの大声が響いた。
普段なら行き交う馬車や人々でうるさいのだろうが、今はクリプスたち四人しか通っていない。ロフィエの声が響き渡るのが、よく分かる。
「あんたたち、本当はドラゴンだったの!?」
「ああ、そうじゃ」
「なんで言わないのよ!! 聞いてたら、あんな大口は叩かなかったですわ!」
「おぬし、聞かなかったじゃろう?」
「……」
確かに聞いてはいない。どうみても人間だと、ロフィエは思っていた。
だって、見た目が完全に人間だったから……。
「クリプス……とか言いまして? アンタはホントに人間でして?」
「本当にただの人間だよ、普通の。ところでロフィエ。やっぱり魔人から見ても、ドラゴンって強いの?」
「あったり前でしょ!? ドラゴンにケンカ売るなんて、よっぽどの腕自慢か、よっぽどのバカのどっちかよ!」
「――ごめん」
「なんでアンタが謝るの?」
バカに分類されたクリプスはつい謝ってしまった。
ロフィエはクリプスがファイアレッドドラゴンだったジャミスに挑んだことを知らないので、この反応だった。
「で、このドラゴンと人間で、どこ向かってらして?」
「王都のオータムハイブじゃよ」
「随分遠いわね。何をしに行かれるの?」
「それは……まぁ、人間色々あるんじゃよ」
「アンタたち、人間じゃないでしょ!」
「見た目は人間じゃろう」
「理由があって人間に姿になってるんでしょ? 元々が人間みたいな見た目の
「身体が大きくて長時間動くのも大変じゃし、なにより腕自慢がすぐケンカふっかけてくるからのう。面倒じゃ。大体が弱いし」
「このロフィエ様にケンカふっかけてきたクセに? 信じられませんわ」
これにはロフィエも呆れた表情。
「私は元々人間の村で魔法の研究をする為に、まず人間の姿になる魔法を作りました」
「アンタがお作りしたの!?」
今度は驚いた表情を見せるロフィエ。
表情がコロコロ変わって面白い。彼女は、これが素なんだろう。
「はい。どうですか?」
「全く違和感ありませんでしたけど……とんでもないこと、サラッとやってのけるわね。さすがドラゴン」
「魔法が得意な魔人のロフィエさんに褒めて貰えるなんて、光栄です」
「べ、別にほめてなんか……あっ、門が見えてきましたわ」
先の方に、ゲーター侯爵領の町にあったのと同じような門が見えてきた。ゲーター侯爵道も、終わりのようだ。
「さぁて、またわっしの出番じゃな」
「ジャミス、手は大丈夫?」
クリプスはジャミスの右手を見る。相変わらず赤く腫れていた。
「ちょっとジンジンしておるが、門を開けるのには問題ない」
門の前に付いた四人。ジャミスが門に両手を当て、ゆっくりと開いていく。
開いた門の隙間から、外からの光が差し込んできた。
「……ん?」
人が通れるぐらいに門を開いたジャミス。門の向こう側に道が見える。
その先で馬車の集団が止まるのが見えた。
「おぉーい!!」
馬車から降りて手を振りながら走ってきたのは、ゲーター侯爵領の入口まで乗ってきた荷馬車の主だった。
「門が開いたから来てみたんだな。あ、あんたら無事だったんだな。ゲーター侯爵領は? 魔人はどうなったんだな?」
それを聞いたロフィエは、クリプスの後ろに隠れるように立った。
その魔人が、ロフィエだからだ。
多分、荷馬車主からは今、門の隙間からジャミスしか見えていないはずだし、今はクリプスの後ろでスッポリ隠れている。見えてないと思う。
「大丈夫だよ、ロフィエ」
クリプスは小さな声で、ロフィエに言う。
「魔人か? ああ……わっしらでなんとかした。じゃから、ここにおる」
「ほ、本当なんだな? こうしちゃいられないんだよね。早く知らせないといけないんだよね。この先の町まで乗っていくかい?」
「ああ、そうしようかのう」
そう言って、ジャミスは門の隙間を抜けた。
次に、オルバイドが隙間を抜ける。
そしてクリプスが隙間を抜ける。後ろには、ロフィエがひっついていた。
「おや? なんか一人増えてるんだな」
「この子は町にいた子なんだ」
クリプスが説明を始める。
「一人にしておけないから、俺らのパーティーに加わってもらったんだ。ちょっと恥ずかしがり屋でね」
「そうなんだな」
荷馬車主は、怪しむ様子もない。
「それじゃあ、俺の馬車に乗ってくれ」
「分かった。次の町はなんて名前だい?」
「アバーロという町なんだな」
「よし、それじゃあ、アバーロの町へ行こう!」
四人は荷馬車に乗って、アバーロの町へと向かうことになった。
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