第30話 竜人たちと旅人の連携的な鎧人退治

「まずはおバカな人間たち、よくここまでお越しになりましてよ。まずは、ほ……」

「?」

 ロフィエが口ごもったことを、クリプスは疑問に思う。


 その後もロフィエは口をもごもご動かしていた。

 しばらく黙ったまま口を動かした後、

「ほぉ……ほ、ほめて差し上げますわ。ほめましたからね? 感謝いたしなさいよ?」

 ロフィエは露骨にイヤそうな顔をしながら言う。


 褒めたくはないが、言ってしまった以上は褒めないといけないので仕方ほくやっている、という態度が現れている。

 だが約束をキッチリ守るとは、なんて律儀な魔人だ。


「ほめてもらったところ悪いがのう……」

 ジャミスは一歩踏み出す。

「どうやら残りはおぬし一人のようじゃな。御自慢の人形遊びはもう終わりかのう?」

「まだ魔力チャージがほとんど終わっていませんでしたから、厳選していただけですの」

 ロフィエは脚を組み替えた。目線が吸い込まれる。

「この子たちを倒したら、このロフィエ様が相手をして差し上げますわ!」


 そう言って、ロフィエは数個の魔力の素をばら撒いた。

 ばら撒いた魔力の素に集まるのは、部屋の端に飾られていたプレート・アーマーだった。

 剣を持った鎧たちがクリプスたち三人の前に立ちはだかる。

 その数、6体。


「鎧人じゃあ!」

「動くヨロイなのでは?」

「動く鎧ですね」

 暗い部屋で仕掛けも分からず動いていたら怖いだろうが、これは動く仕掛けも分かる。怖くはない。


「さ、やってしまいなさい!」

 鎧人が動き出すが、動きが鈍い。

 やっぱり身体が重いのだろうか。石の方が重そうに感じるが。


「どうするんだ? ジャミス」

 クリプスが訊く。


「決まっておろう。三人でやる」

 と、ジャミスが答える。その答えに迷いはない。


「まずは私がっ!」

 オルバイドがロッドの先端をトンッと床に立てる。

 次の瞬間、鎧人の足元が凍り出す。

 鎧人は移動が出来なくなってしまった。


「そしてわっしがっ!」

 ジャミスが近くにいた鎧人に殴りかかった。

 兜が外れて吹っ飛んでいく。

「飾っておった鎧ということは、中身が入っておらん! 石人とは違うのじゃ!」


(それで殴りに行けるの!?)

 クリプスは思った。

 吹っ飛んだ兜を見ると、大きくへこんでいた。

(……あのパンチ、どんな威力だよ! なぜ石人に通じなかった?)

 疑問に思うが、ふとジャミスが「三人」と行っていたのを思いだした。


「え? あ、俺が?」

 目の前には頭部を失った鎧人。

 頭部がないということは、鎧の上部が開放されている。


「――そういうことか!」

 クリプスは鎧人の上部からソードを突っ込み、魔力の素を破壊した。

 素を破壊された鎧人は力が抜けたように腕がだらりと下がり、剣が床に落ちた。

「……これでいいのか?」

「そういうことじゃあ!」

 ジャミスはすでに次の鎧人の頭を吹っ飛ばしていた。

 足を動かせない鎧人は、もはや殴り放題となっている。

 クリプスは慌てて頭部を吹っ飛ばされた鎧人の魔力の素を破壊しに向かう。


 そして鎧人たちは全て魔力の素を破壊され、ただの兜が無いプレートアーマーへと戻ってしまった。


「とまぁ、こんなもんじゃ」

 あっさり終わってしまって、まだちょっと身体を動かし足りない様子のジャミスが言った。


「ぐぬぬ……」

 最後に残していたと思われる兵が全て破壊され、ロフィエは悔しそうだった。


「よろしいですわ。このロフィエ様が直々に相手してさしあげます……わ!」

 ロフィエはイスから立ち上がり、右腕を水平に突き出した。

 その右手には、黒曜石の埋め込まれたワンドが握られている。

 いよいよ、彼女が直接的に攻撃をしてくるということだ。


「このロフィエ様と戦えること、光栄に思いなさい。そして悔いなさい。あの世でね」

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