第25話 脱出前のパーティー③

「ネグ、俺にも酒ついでくれ」


「僕にもよろしくー」


「ちょっとねえ!あんたたち!!それぐらい自分でやりなさいよ!!」

そう言いつつ怒りながらもミディとガンダのコップにお酒をついでいく。


(そっか…一応みんなお酒が飲める年齢なんだなあ…)


「ミロワはええと…未成年だったかしら…?」


「あ、えっと、私ぎりぎりお酒が飲めない年齢で…なのでジュースで大丈夫です、!」


「そう。それじゃあシャンメリーみたいなやつか、オレンジジュースね。どっちが良い?」


「そ、それじゃあシャンメリーみたいなやつで…」


「わかったわ!ちょっと入れるから待っててね。」

そう言ってネグは隣の部屋にジュースをとりにいった。


「なーんでミロワだけには快く飲み物入れてあげるんだろうなあ…」

そう愚痴をこぼしたのはガンダ。

2人とも私のほうをジーっと見ている。


「まあ、年下だし、可愛い妹に見えるんじゃない?」


「可愛いというかどちらかと言えばポンコツだろ。家事のこと以外。」

2人はそう言って、フッと嘲笑った。


「ちょっと、またミロワのこといじめてるんじゃないでしょうねえ~?」


「いじめてなんかないよ。それよりほら、乾杯しよう。」


乾杯~!!!

そう言ってみんなでグラスをかわす。

こんなパーティーなんてしたの始めてだから

少し驚いてびくっとなってしまった。


「あー、サーモンのカルパッチョだっけ?これ、美味しいわね~!!」


「ミディのつくったピンチョスも中々お酒に合うな。」


「それを言うならカプレーゼもまあまあ美味しいよ。」


「まあまあってなんだよ」

どんどんみんなが食べ始める。私はなにから食べようか迷って中々食べれそうにない。


そもそも最近ずっと1人で食事をしていたため、食べるということにあまり喜びを感じなくなってしまっていた。


料理は好きなのに、食べたら生きちゃう。

食べないで死んだ方がマシなのかもと、


そう思いながらずっと食べてたため、最近【美味しい】という感情が薄れていたのだ。

これで皆の料理を食べてまずい反応しちゃったらと考えると、

(なんか…嫌な気持ちになっちゃったなあ…)

と困っていると

「あら、ミロワはなにも食べないの?」


「あ、いや、なにを食べたらいいかわかんなくて…」


「それじゃあ私がつくったグラタンでも食べなさいよ!!」

ネグは私のお皿をひょいっととり、グラタンをすくって私のお皿に盛り付けた。グラタン以外にも、カプレーゼとピンチョスも。


「はい、どうぞ!!」


お皿に盛り付けられたたくさんの料理を受け取る。

そしておそるおそるグラタンを1口食べてみた。


「…!美味しい…」

暖かくて美味しいグラタンが口いっぱいに広がった。なんだろう…懐かしい気持ちだ。

そうだ、昔お母さんがよくグラタンをつくってくれたっけな。

なんで今まで忘れていたのだろう。

そう思うと涙がこぼれ始めた。


「ってええ!!?どうしたのミロワ!?なんで泣いてるの!?」

みんながこちらを見てぎょっとする。


「いや、なんか、昔のこと思いだしちゃって、お母さんがよくグラタンつくってくれてたなとか、」


「そうだったのね…」

ネグは私の肩をソッと撫でてくれた


「でも、脱出する前に昔のこと思いだせて良かったじゃん。」


「まあ今日はパーッと飲んで心残りないようにしようぜ。」


「う、うん…」


「それじゃあミロワが昔の思い出を思いだせたことに、もう一度、乾杯!!!」


グラスのカチンという音ともに不安がとんでった気がした。今日はここでゆっくりできる最後の日だから精一杯楽しもう。そう思っていたのだが…

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