1-34.七天使『セブンス・ヘブン』の実力②【イフ・エル】



 「では、イフ・エル。そのユーサに似た悪魔から情報を引き出して欲しい。頼めるかな?」

 「ふいふぃ。任せろ! おい、シ・エル。今度の特別給与ボーナスは、俺に一番多く振り込んでおけよ」

 「ズルイ。アンも働いている。休みを所望スル。週休八日の特別休暇ボーナス

 「脳みそCPUが壊れているみたいだな? 計算もできないのか? お前は上司シ・エルの指示を無視して録画をサボって、敵を全滅させただろ? ポンコツ機械は黙ってろ」

 「機械ではない。神のエイアンドロイドだ」

 「神様も浮かばれねぇな。こんな駄作を作られちゃあな」

 「ア?」

 「ん?」


 くちを開く度に、くち喧嘩をし始める二名の天使。

 シ・エルの無言の圧力に、一度喧嘩を止めてイフ・エルがユーサに似た悪魔に近づき、悪魔の顔が映像に映るように悪魔の髪の毛を乱暴に掴み始めた。


 「おい。一応、天使らしく慈悲深く。最初は優しく聞いてやる」

 「チンピラみたいな事をやってるヤツが天使らしくとは、コレイカニ」

 

 アン・エルが、映像を見ている全員の脳内で思った事を代弁していた。

 イフ・エルは一度アン・エルを睨み、悪魔の髪の毛を掴んだ手を振りながら尋問を始めた。

 

 「二つの質問に答えろ。

  ひとつ。悪魔達おまえらの目的はなんだ?

  ふたつ。この事件の黒幕は誰だ? 誰の指示で全世界都市襲撃こんなことをした?」


 品の無い落書きがされている汚れた壁。

 治安の悪そうな路地裏。

 言葉遣いと素行の悪い天使。

 どちらが天使で悪魔か分からないほどのイフ・エルの圧力。

 映像を見ている市民達は、息を吞み、硬直していた。


 「フッ……フッハッハッハハハハハハハハハハーーーーAAAAAAAA!!!!」


 身動きができないようにはりつけにされている悪魔が質問に答えず、不気味な笑い声をあげた。


 「良い気になるなよ!! 天使風情が!! 天使おまえ達は終わりだ!!! 我を捕まえた? 何を勘違いしている!! 捕まったふりをしていただけだ!!」

 「「「__ッヒィ!!!」」」


 ユーサに似た悪魔の顔が突然、化粧が落ちるようにパラパラ……と皮膚がはがれ、不気味な骸骨の顔と化した。

 映像を見ている一部の市民達が、恐怖に怯えた声を出すほどの不気味な骸骨。


 「我の魔力で主様に連絡を取り、ここに我と同じ……いや、我以上の強さを持つ黒冠位悪魔ブラック・アーク・デーモンの大群がこの街にやってくるのだ!!!」

 「ほう……黒冠位悪魔ブラック・アーク・デーモン……なるほど」


 映像を見ているシ・エルが、何か知っているような素ぶりを見せた。


 「大群が来るまでもうすぐだ!! ハッハッハ!! 残念だったな!! ドチビが!! 誰が貴様なんぞにやられるかぁあああ!!」


 骸骨の目の箇所。

 目玉が無い真っ黒な空洞の奥。

 その奥に、魔力の籠った微かな瞳がイフ・エルを睨み、罵倒を続ける。


 「それに、我には超回復の魔力が備わっている!! 天使きさまらが本気を出そうが……我は死なんぞ!!? ハッハッハッハ!! その間に黒冠位悪魔ブラック・アーク・デーモンの大群が来て終わりだ!!! この都市に住む弱っちい人間共と一緒に、なぶり殺しにしてくれるわぁああ!!! ざまあみろおおぉぉぉおおおおぉぉおぉーーー!!!! AッHッHッHッHッHッHッ!!!!」


 恐怖など微塵もない。

 骸骨の悪魔が、イフ・エルに勝ち誇り雄叫びを上げ。

 映像を見ていた市民達は震えながら、不気味に勝ち誇る悪魔の声を聞いていた。


 「へぇ。凄いじゃんそれ。良いねぇ。楽しくなりそうだな。俺も好きだぜ、

 「HッHッ……は?」

 「俺は、ク・エルみたいに世界中の子供達の安全を守る為に天使になった……なんて崇高な目的で天使になった訳じゃねぇんだ」


 イフ・エルは、悪魔が言っている事を、何事もなかったかのように。

 まるで遠足を楽しみに待っていた少年のような声を出しながら悪魔に返事をした。


 「お前ら腐ったクソゴミ虫以下の悪魔が、自分より弱い人間をイジメているように……俺もそんな弱者を痛めつける事しかできない弱者悪魔をイジメるのが大好きでねぇ……」


 悪魔の言葉に返事をして掴んでいた髪の毛を離し、学生服の内ポケットから【小鬼こおに】の刺繍がされた文庫本サイズの小さな辞書を取り出した。


 「これは強欲の書マモンっていう、俺の天使武器でね。奇跡の力を使わずに、これだけで悪魔集団お前らを恐怖に陥れてやるよ」

 「Hッ……。AッHッHッHッHッHッHッ!!!! 本!? しかも、奇跡の力を使わず? そんなもので我を恐怖に? アッハッハッハ!! そっちが恐怖で頭がおかしくなったんじゃないのかぁああーー?」

 「本をバカにしたらダメだぞ? 知識を学べるだけじゃない。沢山の教訓を得て人生を楽しむ事ができ、ある意味武器にもなる。……しかも、お前なんかこの紙いち枚でも充分だろうな」


 イフ・エルは、持っていた本を開き、いち枚のページを綺麗に手で切り取った。

 秘力も魔力も奇跡の力も通っていない、ペラペラな紙がいち枚。

 イフ・エルの華奢きゃしゃな指先に挟まれ、風に揺れていた。


 「プッ!!! ギャッハッハハハハハハハハHッHッHッHッHッHッ!!!!! なんだそれは!!?   そんな紙切れいち枚で何ができ……」



 ズシャッ!!!!!



 __ゴトンッ。




 骸骨の悪魔が話している途中。


 悪魔の体が真っ二つになり、片方の体が地面に落ちた。


 「……え?」


 一連いちれんの流れを黙って見ていた、ユーサが声を出した。


 映像に映し出されたのは、紙切れいち枚を二つの指で挟んだままのイフ・エル。

 そして、知らぬ間に体が真っ二つになり、パラパラ……と【死の灰】と化して絶命した悪魔が映し出されていた。


 「ふぃふぃ。なんだよ根性ねぇな。紙切れいち枚で死んでるぞ。超回復とやらはどうした? とりあえず待ってやるか」


 何事もなかったかのように無邪気な少年のような声を出すイフ・エル。

 

 「……見えなかった」


 ユーサを含め映像を見ていた全員が、まるで居合の達人が知らぬ間に鞘から刀を抜いていた映像を見せられたような感覚を味わった。

 ギルドの手練れの中の手練れ。と言われたユーサですら、イフ・エルの初動を見る事すらできず、冷や汗を流した。


 「フッフッフ……。どうした、ユーサ? 君は本を見る時に、紙で指を切った事はないのかい? 本は読まないタイプかい?」

 「いや……読むけど……そういうレベルの話をしているんじゃぁ……」

 「なら。余が言っていた、戦闘力が一番高い。という片鱗が分かったかな?」


 シ・エルは、我が子の凄さを自慢する親のように、冷や汗を出して固まっていたユーサに話しかけた。


 「因みに、あれで全然本気を出していないからね」

 「……あれで。本気じゃない?」

 「まぁ、見ていればわかる。そろそろ、イフ・エルかれの本領発揮はここからだ」


 そのまま映像を見るようにうながすシ・エル。

 映像には、先程まで【死の灰】になっていた悪魔の体が八割程再生されていた。


 「おいおい、超回復って言ってた割には遅いなぁ……」

 「キ……キサマ……何をっ!!!!?」

 「あ、そうだ。この前、押収した物の中に確か……あ、あった」


 悪魔の言葉を無視してイフ・エルは、内ポケットから見るからに禍々しい色をした瓶を取り出した。


 「あれは……毒の違法薬」


 映像を見ていたディアが呟いた。


 「ん? 映像を見ているヤツに、違法薬作成コレの同業者がいるのか?」

 「それはイフ・エル。ユーサの奥さんは薬師だからね。天使に神の代理が務まるのか? ……っと言う程に失礼だよ」

 「あ、なるほどな。失礼したユーサ・フォレストの奥さん。悪気はない」

 「あ……いえ、そんな。どうも……」


 突然名前を呼ばれたディアに、その場にいた沢山の視線がディアに集まる。

 ディアは、恥ずかしそうに声を殺した。


 「ママー。アレ、おくしゅりなのー?」

 「えぇ、マリア。でも、お薬とは言っても、毒なの」

 「どく。ってなぁにぃ?」

 「アレを飲むと、ママ達は死んじゃう。って事なの」

 「ええぇーー! やだぁあーー。こわい!! なんであのてんしさまはもってるの!?」


 マリアが泣きながら、映像を見ないように叫ぶ。


 「アァーー、ドチビ。天使が子供を泣かせてはダメだ。シ・エル。コイツは減給ダナ」

 「あぁ!? ……んんーー。まぁ、そっか。説明する。コレは確かに、人間や天使達にとっては毒になる薬、違法薬のひとつだ。つい先日、ならず者を一掃した時の押収品でね」


 減給。という言葉に不機嫌そうに声を出したイフ・エル。

 しかし、子供の泣き声に反応したのか、少しだけイフ・エルが困った顔をしながらカメラ目線で映像の先にいるマリア達に声をかけ説明を始める。


 「このオカフクは、修羅の国……っていうだけあって。天使である俺がいうのもなんだが……。百害あって一利無しな、こんな薬すら売ってるどうしようもないクズ。所謂いわゆる、死んでも良いと思われる人種だらけの危ない国でね。だからまぁ、天使の中でも俺みたいな性悪なヤツが担当させられるんだが……」

 「流石ハ、最ワルの天使。昔ワルだった事を武勇伝として自慢話するクソダサイ人間みたイ。自覚はあるんダナ」

 「あ?」

 「ン?」


 アン・エルを睨みながら、毒薬の瓶を映像で見せるイフ・エル。

 その場にいる全員が飲みたいと思えない程に、映像越しでも危険な臭いを感じていた。


 「話をこの毒薬に戻すが、コレは悪魔にとって魔力を増強させる回復薬になっているんだ」

 「え? そんな話……聞いたこと……」

 「それはそうだろうさ。人間の医学、薬学には関係ない。悪魔にとっての薬学だからな。人間に学ばせる必要は無い。まぁ、これでまた一つ賢くなっただろう? ユーサ・フォレストの奥さん。それでまぁ……何が言いたいかと言うとこの薬を……」

 「__GUAッ!!!??」


 イフ・エルは持っていた瓶を開けて、中に入っていた液体を骸骨の悪魔にぶちまけた。

 

 「な、、なんだ!! 魔力がみなぎってくるぞ!!! AAAAAAーーー!!!!!」

 「これで、超回復とやらが早くなるのであれば。楽しみがいがある。ってことだ」

 

 骸骨の悪魔の顔、体が人間ではありえないほどの不気味な形に膨張し始めた。


 「本当にアレは……魔力をさせる薬なの? の間違いじゃなくて?」

 

 ディアが悪魔を目視で診断した結果、薬の種類が間違っている事を指摘した。


 「ん? あ。本当だ。流石は、ユーサ・フォレストの奥さん。合ってると思うぞ。回復薬じゃなかったわ」

 「!? 何を呑気に!? その悪魔から離れた方が……!」

 「アァーー。コイツ、本当に最悪な天使だ。絶対、ダロ?」

 「あれ? どうした急に脳みそCPUが動き始めたのか? ガラクタロボット天使」


 イフ・エルは、嬉しそうな顔をしながらアン・エルに返事をした。

 アン・エルは、呆れながら「アンは知らんぞ」といった態度で微動だにしなかった。


 「AッHッHッHッHッHッHッ!!!! 感じる!! 感じるぞぉお!! そんな紙切れでは、もう殺されないぐらいの魔力をなぁああAAAAAAーーー!!!!」

 「へぇ。そうかい。それはすごいなぁ、なら。紙の束で叩いてやるよ」


 イフ・エルは、手に持っていた文庫本程度の大きさの本を閉じて、空へ伸ばした。


 「いち枚、いち枚を重ねると、充分な厚さになる。ほら」

 「AッHッHッHッHッHッHッ!!!! 無駄だああーー!! バカめーー!! そんな本ごときで___ッ!!!!」



 グシャッ!!



 悪魔が話している途中で、イフ・エルは手に持っていた本の角で悪魔を殴った。


 「な……。なんだ今のは」

 「ん? どうしたユーサ」


 映し出された映像を見た全員が息を呑む中、ユーサは呟いた。

 本で殴る。ただそれだけ。

 そのたったひと振りで骸骨の悪魔は、原型が無かったかのように辺り一面に真っ黒な血を広げて、汚い悪魔の肉片だけが残った。


 「秘力も、魔力も、奇跡の力も使わず。悪魔を……しかも、瞬殺なんてできるのか?」

 「ユーサ。君の疑問は分かる。通常、悪魔は特殊な力が通った力や武器が無ければ倒す事はできない。でも、イフ・エルは、それ・・ができてしまう」

 「それでも……武器と呼べる代物とは言えない物でなんて……」


 ユーサは、自分の掌を見て考えた。

 ギルドの手練れとして自負していながら、悪魔と戦う場合。

 打。刺。斬。射。という属性の秘力で作られた召喚武器。

 武器と呼べる代物ではないと、悪魔にダメージを与える事は、不可能だと考えていた。


 「何を言っているんだユーサ・フォレスト? 知らないのか?」

 「__!?」


 ユーサは、名前を呼ばれた事で慌てて映像のイフ・エルに目を向けた。


 「で殴られると、めちゃくちゃ痛いぞ?」


 ふざけている訳でもなく。

 イフ・エルは真面目な顔で、悪魔の血で真っ黒になっている本の角を見せた。

 本の表紙。【小鬼】の刺繍。

 その【小鬼】が、少しだけ不気味に動いて笑っているように、ユーサは見えていた。


 「それじゃあ、そろそろ本格的に始めるぞシ・エル」

 「どうぞ、イフ・エル。なるべく手短に」

 「あいよ」

 「__GUッ!? い、、今のは、、、なん、、、GGAAAAAAAAAA----!!!!!!」


 イフ・エルはシ・エルに返事をしながら、強欲の書マモンと呼んでいた本を空にかかげ、骸骨の悪魔の体が回復すると同時に本を振り下ろし、撲殺ぼくさつを繰り返した。


 肉片と化しても、冠位悪魔の魔力での超回復。

 そして、一瞬の撲殺。 


 「な、、もう、、やめ。。。GGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーー!!!!!」

 「何を言っているんだお前は? お前が人間にしようとしていた事を、俺はお前にしているだけだぞ?」

 「Gッ!!」

 

 何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。

 とても、天使が行う所業ではない。と見ていた市民は感じ、悪魔ではなく天使であるイフ・エルに恐怖していた。


 「オイ、ドチビ。まだ終わらないノカ?」 

 「んーー。そうだな。意外とやるじゃんコイツ。ちょっと本気出すか」


 そう言いながら、イフ・エルは撲殺する手を止めて、手に持っていた本を開き何かを読み始めた。


 「≪ 表しか見ない者に……真実は分からない…… ≫」


 本のページに目を向けながら、イフ・エルは呪文を唱え始めた。


 「__GUッ! フハハッ!! とうとう、自分のした事が無駄だと気づいたKAAAA!!」


 骸骨の悪魔は、撲殺されることが無くなり、五割程度の肉体が再生され始めて数分ぶりに声を出すことができた。

 心身共に疲弊し冷静ではいられないほどに、イフ・エルへの殺意を抑えきれず叫ぶ悪魔。


 「我を本気で怒らせたな!! 貴様ら何ぞ……あと数分で大群の餌に……」

 「お前。元々なんだな。しかも、エル教会の……他の支部のヤツか。悪魔というよりもだな?」

 「__な、、、に、、、!!!?」


 先程まで強気な発言をしていた悪魔が、口を開けたまま凍り付く。

 そして、イフ・エルは強欲の書マモンのページを巡りながら、淡々と喋り始めた。


 「へぇー。教会に入って三十年以上は経っているんだな。天使にはなれなくても、司祭までなったんだな」

 「__デ、、、で、、、でた、、デタラメを。。!!!?」

 「急に……何を言っているんだ? イフ・エルは……?」


 突然イフ・エルの発言に、わかりやすく動揺する悪魔。

 映像を食い入るように見ているユーサが呟く。

 イフ・エルの行動に、市民達も固唾を飲んで見守る。


 「それに、そうだな。それなのに、殺した悪魔と同類になるとは……息子の魂が浮かばれないぞ?」

 「__ナ、、何故それを!!??」

 「知っているんじゃない。お前がんだ」


 体が完全に回復した骸骨の悪魔。

 しかし、悪魔というには細々と、弱弱しい人間のような声に変化し始めた。

 その声を聞いて、先程までとは違い、少し落ち着いた青年のような声でイフ・エルが悪魔に話しかける。


 「俺が持つ、【神の奇跡エル・ラーク】の一つ。≪【真実を知る勇気ブレブリー】≫は、ある条件下で相手を殺すと、その相手の過去が強欲の書マモンに記載されるようになっているんだ」


 知らぬ間に呪文を唱えていたのか。

 イフ・エルの体から紫色のオーラが溢れ出し、背中から紫色の天使の片翼が現れた。


 「トモマク産のゲームで言うところの『モンスター図鑑』? みたいなやつだ。ザキヤミ支部・・・・・・の司祭さんよ?」

 「__A、、、A、、、」

 「一応、慈悲深く。天使として、本名だけは言わないでおいてやる。この言葉の意味が分かるか? 今年で、司祭さんよ?」


 イフ・エルの言葉に、骸骨の悪魔は動けなくなった。


 まるで、全ての悪行をさらされた罪人のように。

 言い逃れができない真実を掴まされた被告人のように。

 骸骨の顔が青ざめていくのを、見ている市民達は感じ取った。


 「びっくりだよな。匿名とくめいで好き勝手に暴言や暴力を繰り返す輩が、自分の正体を白日はくじつもとに晒されると人が変わったかのように動けなくなる……哀れなヤツだ」

 「__A、、、A、、、」


 絶望の顔をしたまま地面を見て震える悪魔の髪の毛を掴み、再び目線を合わせるイフ・エル。


 「弱い自分が救われる為に、他者を……特に弱者を痛めつける雑魚悪魔の恐怖が欲しくてなぁ。そんなしょうもない理由で天使やってんだ俺は。……イカれた趣味だろ?」


 「__ッ!? ヒィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 イフ・エルの紫色に光る瞳を見た悪魔が、恐怖に怯え、悲鳴を上げた。


 「≪ 目覚めたかグッド・モーニング……恐怖がミスター・フィアー…… ≫」


 イフ・エルが再び紫色のオーラの量を増やし、神の奇跡の力を発動させた。


 「≪ 【神の奇跡エル・ラーク】 ≫ ≪ 【制御不能の本能ルーズ・コントロール】 ≫」


 イフ・エルが呪文を唱え終わると、悪魔は糸が切れた人形のように動かなくなった。

 

 「アァーー。やっと終わったか。アンはもう帰って良イカ? シ・エル」

 「アン・エル。申し訳ないが、もう少し頑張ってもらって良いかな? あと、まだ余の指示が終わってない」

 「アァーー。これはもう、アンは必要ない気がするんダガ?」


 アン・エルが駄々をこね始めたその時。


 


 「さぁ……喋ってもらおうか? 洗いざらい。……お前らの目的と、黒幕は誰だ?」


 イフ・エルの言葉通り、骸骨の悪魔が口を開き始めた。

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