1-10.【召命②】『禁術である神の奇跡:世界平等の死【オールデッド】の危機を阻止せよ』

 


 突然の忠告だが

 『天使はよく、嘘をつく・・・・から気をつけろ』

 

 ん? 何で急にそんな事を? って?

 わからんが、天使のいたずらは可愛いもんなんだ。っていう謎の風潮があるからな。


 え?

 「天使、特にシ・エルっていう天使に嘘をつかれて、騙されて、殺された僕に、そんな事言いますか?」 だって?


 まぁ、あれだ。何事にも、信用し過ぎず、疑ってかかれ、という教訓だ。

 石橋を叩いて三年もかけなくて良いが、ほどよく慎重に生きなさい。

 

 ……話が逸れたな。


 続けて二つ目の召命だ。


 『エル教会に潜む闇の真相を知り、禁術である【神の奇跡:世界平等の死オールデッド】の危機を阻止せよ』



 ん? ユーサ。なんだその顔は。


 家族を守る・・・・・話から、今度は世界を守れ・・・・・って事ですか?


 だって?


 その通りだ(真顔)


 まぁ、スケールが大きくなりすぎてびっくりするよな。

 家庭内の危機から、家庭外の危機の話になるんだから確かにぶっ飛んでいるな。


 一応、順を追って説明する前に確認だが。

 エル教会について、君はどのぐらい知っている?


 ……あまり詳しくないか。そうか。


 悪魔は死ぬとになる事ぐらいは知っているな?

 気分が上がる方のハイ・・

 最高にハイ・・ってやつさ! の方ではないぞ。

 灰皿のの方だ。


 悪魔を倒す。

 を手に入れる。

 それを教会に持っていく。

 そして、の代わりに報酬、金銭を受け取ったことがあるだろう?


 何故、教会はこんなを受け取るシステムを作ったと思う?

 さぁ、挙手きょしゅしてから答えてみよ。


 ……。


 ハイ・・っ! ユーサ君!


 ん?


 なんとなく、言うと思った・・・・・・……って?


 そうかそうか、君も神様ジョークがわかり始めたみたいだな。うんうん。

 

 ……。


 ユーサ。そんな冷めた顔をするな。

 君のような可愛い女の子みたいな顔した男から、そんな冷たい目で見られたら。

 かみであるわたしがゾクゾクして『何か』に目覚めたらどうする?


 冗談はさておき……話を戻すぞ。答えはなんだと思う?


 ……うんうん。なるほど。


 教会の手が回らない管轄外エリアを含めて、信徒や天使達の代わりに悪魔を倒したから、その分の報酬ではないか? とな?

 うん、普通ならそう考える。

 別に間違っているわけではないんだが、半分正解で、半分不正解だ。


 詳しい方法などははぶくが、半分不正解の理由は。


 悪魔以外の生物・・・・・・・、だいたいは人間が倒した悪魔の灰のみ・・が、悪魔専用の化粧道具になり。


 そして、その化粧道具で『灰化粧』をすると、悪魔は人間・・天使・・に偽装する事ができるようになる。

 だから、教会は悪魔の灰を集めている。これが理由だ。


 ここまで言って、なんとなく勘づくと思うが……。


 教会で一部の重要人物が、実は人間か天使に化けた『悪魔』なんだ。

 教会の人間は血も涙もない『悪魔』みたいな存在という噂があるが、本当に『悪魔』が紛れ込んでいるんだ。


 灯台下暗とうだいもとくらし。

 というのかな?

 『悪魔』を異端として狩る教会に『悪魔』がいるなんて、誰も思わないだろう。



 ……ん? どうした手を挙げて?

 ……あっ。そうか。

 ハイ、ユーサ君! なんだね?


 二つ質問がある?

 どうぞ、どうぞ。


 |一つ目《・・・》は……「悪魔が、悪魔を殺すんですか?」 だって?

 ……質問を聞いておいて酷い事を言うが。


 何を言っているんだ君は?


 君達人間だって、人間を殺す者がいるじゃないか。

 モンスターがモンスターを殺さないとは限らない。

 悪魔が悪魔を殺さないとは限らないだろう?


 まぁ、何故、悪魔が悪魔を殺した灰は、化粧道具にならないのか? とかまでは……。

 流石に悪魔達に直接聞かないとわからないけどな。


 これが……神(わたし)が現状知っている答えだ。

 こんな答えで良いか?


 二つ目・・・は……「何故、悪魔が教会に潜み、隠し通せているのか?」 だって?


 だいたいの流れとしては、多分こうだ。

 先ず、入信した人間は、神に祈りを捧げ、神に認められれば【奇跡ミ・ラーク】を授かり信徒になる。

 そして、信徒の中でも選ばれた者だけが【天使になる為の試練】を与えられる。

 そして天使になったら【奇跡ミ・ラーク】の上位能力である【神の奇跡エル・ラーク】という力を授かる。


 しかも『不老不死』のオマケ付きだ。

 人間は好きだろう? 『不老不死』って。

 人間の中でも、金があり権力を持つ者、あと女性も好きそうだろう?

 永遠の命、永遠の若さというモノに憧れるのは、なんとなくイメージができるかな?


 寧ろ、【神の奇跡エル・ラーク】の方がおまけで『不老不死』を欲しがる人間もいるだろう。


 現に、国によっては、国王などの権力者達が信者だったりする。

 幾ら金を持っていても、命は一つしかなくて、永遠に続くモノではないからね。

 報酬や活動費は、そういったところから多額の寄付をしてもらい、集めているのだろう。


 そして、皆、教会にいる『悪魔』よりも、『不老不死』になる事の方に興味が向いているから、気づかないんじゃないかな?

 神(かみ)である神(わたし)が言うのもなんだが。

 人間は……欲に弱く、視界が狭くなりやすい存在だからね……。

 ……その顔を見るかぎり、流石に驚いたか?


 因みにここからは神(わたし)の予想。推理を一応伝えておく。

 『教会に潜む悪魔』は、信徒ではなく天使、主に天使長・・・レベルの誰かだと予想している。


 理由は、二つある。


 一つ目は、天使がつけている『仮面・・』だ。

 ユーサ。君を殺したシ・エルという天使達も『仮面』をしていたよね?

 天使になった者は『仮面』をつけて、素顔を晒してはならない。

 という謎のしきたりの理由も、悪魔の素顔・・・・・を見られたくないから。だと考えている。


 若しくは。

 『仮面』が取れたとしても、灰化粧で人間に偽装した顔を見せれば、悪魔だと疑わなくなる・・・・・・・・・だろう?

 『仮面』が取れた場合、危険と隣り合わせだが、そういう保険をかける事もできるのは、逆に怪しくないかい?


 つまり、悪魔の素顔を隠すには、天使になる事の方が都合が良い・・・・・だろう?



 二つ目は、悪魔の上位階級は、プライドが高く、言語を話せる知性がある事だ。


 悪魔は、下級、中級、上級では言語というよりは知性が足りない獣のような喋り方をする。

 しかし、階位アークあたりの悪魔になると、人間と変わらない言語を話せるようになる。

 言語を話せれば、人間と一緒に生活はできるようになるからね。

 木を隠すには、森に。っていう奴だ。

 しかもくらいが高い悪魔は、プライドが高い。

 普通の人間は、下級悪魔ですら恐れるのに、そんな人間と平等の地位・・・・・にいるとは考えにくい。


 悪魔は基本、人間を見下している。

 教会の人間も【特殊な力】を持っている為、普通の人間より上の存在だと勘違いする。


 ……という事は、天使長レベルの地位にいる者は、特に注意が必要だ。

 下手に信用するんじゃないぞ?


 まぁ、全員が『悪魔』というわけではないんだが、できたらその『悪魔』が誰なのか・・・・を調べて欲しい。


 といった感じだ。

 一応注意しておくが、くれぐれも「教会の中に『悪魔』がいる」なんて誰にでも言うんじゃないぞ。

 君が異端審問いたんしんもんにかけられて、即刻死刑・・になると思うからね。


 ……ん?


 「教会の信徒でもない僕にどうやって調べろっていうんですか?」……だって?


 何を言っているんだ君は?

 それは、自分で考えて行動して・・・・・・・・・・くれ。

 ユーサ。君ってもしかして……。

 仕事でも言われた事しかできない、他人を頼るとか、仕事を任せるのも苦手なタイプかい?

 サラリーマンだとしたら典型的なマニュアル人間だな。

 それで、昇進を逃したり、部下に見下されたりした経験があるんじゃないかい?


 ……図星かい?


 君ってよく、嘘が下手な顔に出るタイプ。とか言われないか?

 そんな顔をするなユーサ。

 別に責めているわけではない。


 一から全まで説明して、その通りになるのであれば、別にでなくても良いだろ?

 神(わたし)は君ならできる・・・・・・。……っと思って君を選び【召命コーリング】を行っている。


 大丈夫だユーサ。


 『試練』というのは、乗り越えられない人に襲いかかったりはしないものだ。


 それに、裸一貫はだかいっかんで敵地に突っ込めとは言わない。

 神(わたし)は鬼ではなくて神(かみ)だからね。

 教会の信徒でなくても、人の中にある【秘められた力】である【秘術アーク】という【特殊な力】を知っているね?

 というか、ギルドの人間である、君は既に持っているよね?


 それの上位能力である【神秘術ディー・アーク】を君に授ける。

 【神の奇跡エル・ラーク】を使う集団と、できるだけ対等になれるようにね。


 ただ肝に銘じて欲しい。


 この力を生かすのも、殺すのも。


 君次第だよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る