1-3.レイニー ~ 不吉な雨 ~


「不吉な……雨……」


雨が嫌いだった・・・・・

天気予報が外れた時の雨とは違う『不吉』を予感する突然の雨。


悲しい出来事が起きるからだ。


私に関わった男性。

特に、私に危害を加えた男性・・・・・・・・・・が事故にう。

中には、亡くなる人もいた。


その結果

『不吉を呼ぶ赤目』と噂された私に、近寄る男性はいなくなった。


そんな私に、話しかけてきた男性がいた。


ー 「大丈夫ですか……?」 ー


雨が嫌いじゃなくなったのは、夫と初めて出会ったあの日。


(これ以上……誰かの迷惑になるなら……)


生きる事に絶望して、自分の命を止めようと、泉に身を投げ出そうとした雨の日。


ー 「『不吉を呼ぶ』なんて、もう誰にも言わせない」 ー


夫が、涙と雨に濡れた私に声をかけてくれたあの日から。


ー 「僕は運が良い方なんだ。だって、生まれ変わっても、君と出会えた」 ー


天気だけではなく私の心も晴れにしてくれた。

私の人生に、光を見せてくれた。


ー 「大丈夫。僕が君を幸せにしてみせる」 ー


まるで、太陽のような人。


走馬灯のように思い出すのは、楽しい思い出だけじゃない。

悲しい事も、辛い事もたくさんあった。

それでも、私にとって夫は……。


ー 「ディア。君が僕の奥さんで凄く幸せだよ。ディアは……どう思ってる?」 ー




愛してる。

愛してるよ。。。





「いやあぁぁーー!! どうして!! どうしてパパをうめちゃうの!! やめてよぉ!!」





幼い女の子の大声が耳元で聞こえ、我に返った。


女の子、娘……マリアの声。


目の前の現実を受け入れられず、過去の記憶に身を委ね、現実逃避していた私を、マリアの声が現実に引き戻した。


「ねぇママっ!! パパがかわいそうだよ!! たすけてあげてよ!! いやあぁぁーー!!!」


抱き抱えているマリアが、土の中に埋められていくひつぎを見て、私に止めるように訴える。


「…………マリア。……。」


どう答えれば良いのか。

どう教えれば良いのか。

どうなぐさめれば良いのか。

わからない。


マリアの頭に添えていた自分の左手。

その薬指にはめられた。

夫が作ってくれた婚約指輪と、一緒に買いに行った結婚指輪である『シータの指輪』が目に入った。

いつの日かの記憶がまた蘇る。


ー 「大丈夫だよ、ディア。こうすれば良いんだよ」 ー


娘の悲しさを少しでも鎮めるために、受け止めるために。


ー 「どんなに辛い事があっても、決して離れないから」 ー


夫が言っていたように。

娘を、ただ抱きしめるしかなった。


嫌いな雨でも、どんなに辛くても。

夫との思い出は、一つも流されはしなかった。


夫の棺が土葬どそうされていくのを、ただ眺めながら。

頬に流れるのが、雨なのか、涙なのか、わからないまま。

思い出すのは、夫の事ばかりだった。

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