第37話 プラムとラークのタカヒロ評
まぁ、中々に楽しいひとときではあったな。
サクラ姉さまの想い人がどんな男なのかは、かなり興味はあったのだ。
姉さまに助力し、英雄を軽くあしらい、何より過去からやってきたというその男を。
何より、あの姉さまが文に記すほど慕う男など、滅多な事では現れない、いや、存在すらしないだろうと思っていたのだから。
まぁ、此度の遊びも、あんな演出で良かったのかとも思うが、結果はまぁ、良かったみたいだ。
しかし、あの男、タカヒロ様。
サクラ姉さまもローズも、一緒に居て気づかないのだろうか。
いや、一緒に居るからこそ、なのかも知れないが。
「ラークよ。」
「何ですか、プラム姉。」
「お前、あの男な、正直どう思う?」
一瞬考えた後にラークは言う。
「正直言って、恐ろしい、と感じましたよ。」
「ほう、お前もか。」
「あの人、底知れない力を持ってます。前に立った時、こう、全身に鳥肌が立ちました。」
「それはわらわと同じだな。しかし、恐怖というよりも、何というか、畏怖、と言った方が正解なのか。」
「でも、サクラ姉様やローズは平気そうでしたが。」
そこなのだ、問題は。
はっきり言って、サクラ姉さまとローズが、あそこまで強くなっている事に驚いている。
こう、身に纏う気のようなものが、以前とは段違いなのだ。
山賊団として活動していく中で鍛えられた、という事もあるのだろうが、それにしても強くなったの度合い、ケタが違う気がする。
恐らくだが、サクラ姉さまもローズも、ニーハやダイゴ、セラを既に超えているのではないか?
それ故に、タカヒロ様のあの途方もない、恐怖を覚えるほどの力が傍にあっても、気にならない程なのだろうか。
「ラーク、正直な所、あのタカヒロ様と戦って勝てると思うか?」
「いいえ。まず、手も足も出ないと思います。」
「そうであろうなぁ……」
「事実として、あの救国の英雄一行でさえも軽くあしらったのですから、我など遠く及ばないかと。」
言ってみれば、あの男は怪物だな。
いや、もしかすると……
「プラム姉、あの兄上は、もしかして……」
「いや、それはあり得ないと思う。現に、勇者は別に存在していたというではないか。」
「しかし、あれは確実に偽物では……」
「伝説の装具を身に着けている以上、本物、という扱いであろう。」
「という事は、兄上はそれ以上の存在……」
それ以上の存在などあるはずがない。
あるとすればそれは魔……いや、ありえない。
しかし、そんな疑念以上に、今はタカヒロ様にすごく興味が出てきたな。
「なあ、ラーク。もしも、だ。わらわもタカヒロ様と一緒になる、と言ったら、お主、どうする?」
「え?プラム姉も?」
「ふふふ、もしも、だ。」
「あー、そうなると、ラディアンス王国の危機、になるのでは?」
「何故だ。」
「王妃全員が一人、つまり兄上の妃になるってことに……」
「まぁ、それはちょっと考え物、か。」
暗闇の中、わらわ達はモンテニアルへと帰還した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます