第23話 ローズの想い
タカヒロと別れた私は自室に戻り、ベッドへと身を投げて一つ大きく息を吐く。
さっきの言葉通り、ため込んでいた気持ちを吐き出したら、だいぶ楽になった気がする。
でも、強くなりたい、守れる力を得たいという願望だけは強く残っている。
それができないという現実を抱えながらも。
これは、もう私の限界なのかな?
でも、諦める事はできない。
少なくとも、お姉さま達やセラのような高みまでは上り詰める事はできるはず。
そう自分に言い聞かせる事で、過去壁を乗り越えてきたんだもの。
もう、あんな思いをしなくて済むように。
だけど、タカヒロにあんな姿を見せてしまった事の方が、今はとても恥ずかしい。
というか、モヤモヤする。
タカヒロの胸に顔を埋めた時、優しかったお父様を思い出してもっと泣いちゃったな。
いろんな想いが一気に噴き出てきたみたいだった。
タカヒロは、そんな私を優しく包んで、頭をなでてくれた。
昔、お父様が同じようにしてくれて「大丈夫だよ」と優しく言ってくれた時と同じだと思った。
タカヒロは泣いていた。
同情、なのかも知れないな。
でも、それでも一緒に泣いてくれたことが、なぜか嬉しかったし安心できた。
タカヒロの涙が、まるで私の迷いや悩みを洗い流してくれたようだった。
そんなワケないのに、なぜかそう感じた。
不思議な人、だとは思う。
初めて見た時は、何かうだつの上がらないおじさんのように思えたのに。
毎日見ている内に、何故か惹かれるものを感じていた。
お姉さまの、あの人を見る目が普通じゃないと感じたのも、何となくだけどわかる。
わたしも、たぶん、あの人は他の男と違う見方をしているのかも知れない。
でも、今の私は、それを深く考える余裕はない。
だけど、そんな焦りも、あの人は落ち着かせてくれた。
本当に、不思議な人。
でも、それよりも!
あいつ、なんで事も無げに女の子にあんなことが言えるんだろう?
美人って……
言われればそりゃ嬉しいけど、あれ、あちこちで言ってるのかな?
お姉さまやセラ、マリーとかにも。
もしかすると、リサやカスミにも!
あいつ、亡くなった奥さんを今も想っているんじゃなかったっけ?
というか、無意識なのかなぁ。
そうだとしても、あちこちで女性にあんなこと言ってたら、普通に女誑しよね。
もしかしてあいつの居た所はそれが普通なのかしら。
うーん、今度は別の事で悩みそうね……
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