第20話 基本は大事
ジャネットさんとミノリさんとの接見も終わり、翌日拠点に戻ってきた。
帰り際、ジャネットさんは
「タカヒロ殿、これからもリサを宜しくお願いします。」
と言った後に
「ふふ、孫の顔を見るのが楽しみですね。」
と、うっすらとほほ笑んだ。
ん?何て?
孫って?
誰の?
そんなこんなでサクラ達へ帰還の報告をして、昨日の話をした。
最初、カスミの姿を見て驚き不審に思っていたが、話を聞いて納得したようだ。
というか、納得できる話か、これ。
反応は様々で、特にセラさんは
「カワイイー!!カワイ過ぎますの!」
と、かなり気に入ったようだ。
ギューッと抱きしめられたカスミは、その豊満な胸に顔を埋めてわたわたしていた。
俺は早速、ニーハさんとダイゴにあるお願いをした。
「俺に剣技を教えてください!」
そう、空手や銃剣道はある程度基礎からやってきたので問題はないと思うんだけど、剣術なんてほんと齧った程度だ。
中学の時に体育の授業でやったっきりだしな。
魔法もそうだけど、やっぱり基礎基本って大事だと思ったんだよ。
「タカヒロ様に剣技を?」
「いや、タカヒロさんは今でも充分強いと思うんだけどな。」
「あの、俺には剣術剣技の基本というか基礎が無いんです。この間のダイゴの言う通り、無手の延長上で使っているだけで、そもそも剣を扱うってことがなかったんだ。」
「なるほど、そういう事でございますか。」
「よし、わかった、なら早速俺が直々に教えるよ。」
ダイゴは元々王国の親衛隊隊長だったはずで、部下の指導育成もしてきたはずだ。
それに実力もこの山賊団では一番だもんな。
無手でも強いけど剣も相当な腕だろう。
「よろしくお願いします!」
「ああ、じゃあ、行こうか。」
そうして、鍛錬に使っている広場へと向かった。
俺の鍛錬が見られるってことで、結構なギャラリーが集まっていた。
何となく、大勢に見られながら指導を受けるってのは恥ずかしさがあるけど、今後の事を考えるとそうは言ってられないしな。
ただ、実際中身はもう50を過ぎたジジイだ。
正直新たな戦技なんて習得できるかは分からない。
人間って40を過ぎると新しい事はなかなか身に着かないらしいからな。
「じゃあ、始めるか。」
「はい!」
「あー、タカヒロさん、言葉遣いは普通でいいんだけど。」
「いや、教えてもらう身だし、ケジメだよケジメ。」
「まーいいや、で、だ。」
ダイゴは長剣を構えつつ
「剣技でも何でも、こういうものの基本を早く身に着けようと思ったら“型”というのを覚えるのが近道だ。」
「型、か、なるほどね。」
「お、型は知っているみたいだな。」
「ああ、無手にも型はあって、攻撃防御の形をまとめた練武体形みたいなものだったよ。」
「その通り。タカヒロさんは薙ぐ、突く、捌くってのはもう充分できているはずだ。」
「そうなの?」
「ああ、無手のそういう所は剣術でも同じなのさ。なので、あらゆる状況で臨機応変に対処する型で、そのパターンを理解することが良いってわけさ。」
そういって、ダイゴはまず“型”を3種程実演して見せた。
構え、間取り、攻撃、防御、捌き、それらを組み合わせた演舞のようにも見える型。
正直、驚いた。
鬼気迫る気迫もそうだが、まさに実戦を想定した動き、ボクシングでいうシャドーボクシングのような感じか。
基本を積み上げた空手の型とは少し違い、まさに実戦のノウハウを詰め込んだような型だ。
それから日が暮れるまで、ダイゴにその3つの型、それから展開する戦法や攻撃様式などのレクチャーを受けた。
合間合間で手合いを混ぜ、実際に剣を交えての指導だ。
時折、ニーハさんも交えて、1対2での攻防も実践した。
型を練習したおかげか、この前よりも思う通りの攻防の動きを取れる。
ダイゴやニーハさんの攻撃は見切れるし、俺の攻撃は全て通るようになっていた。
二人とも凄く驚いていたのは言うまでもない。
結構ハードな鍛錬なので、教える方のダイゴも相当疲れているようだ。
見ていたギャラリーは飽きることなく俺の指導を見つめていた。
いつの間にかサクラとローズも来ていた。
「はあはあ、タカヒロさん、今日はここまでとしようか。」
「ぜー、はー、はい、、有難うございました……」
その後は風呂に入り夕食を頂いて、即座に寝たのは言うまでもない。
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