第19話 ミノリさんの魔法教室
陽も暮れかけてきたので、今日はここで野宿することになった。
まぁ、明日には帰るってジャネットさんもサクラに伝えてたし問題ないかな。
腹は減ってるけど。
そんなことを考えていたら、いないと思っていたカスミが何やら抱えて戻ってきた。
「タカヒロ、これ!」
抱えているのは、どうやら果物のようだ。
リンゴ?じゃないよな。何だろう?
「今日の夕飯はこれだね。大丈夫、ちゃんと食べられるやつだってさ。」
「それはありがたいな。」
梨みたいな味だけど、少しクリーミーな果肉と果汁だ。
こりゃ美味しい!
5つほど頂いたところでお腹も膨れたよ。
果物を頂いてから、ミノリさんと話をしていると魔法の話になった。
「タカヒロ様は、この世界で一般に使われている魔法よりも、もっと高位な魔法が使えるはずですよ。」
「そうなんですか?」
「もともと貴方様とともにある精霊に加え、コロルが傍にいる事で、全ての要素が揃っていますので。」
「というと、五行、という事ですか?」
「はい。古の陰陽術でいう五行ですね。こちらではエレメント、あるいは要素と言っていますが。
この世界ではそのエレメントの内“木の要素”は使えません。
それは私共木の精霊が木の要素を完全に管理しているからです。」
「では、この世界の魔法使いは、木以外の要素しか使用できない、五行相生という使い方はできない、と?」
「そうですね、姫神子ならばそれらを超越してあらゆる魔法を使えますが、それ以外の者では限られた魔法しか使えないと言えます。」
「ひみこ?」
「はい。人間の中でもただ一人、この世界の魔法を極めた者、魔人と呼ばれる者です。」
魔人……また知らないワードが出てきたな。
「そんな人もいるのですね。」
「今代の姫神子は100年その座についています。」
「という事は100歳以上のおばあちゃん?」
「いいえ、今代の姫神子はとても可愛らしい女の子でしたよ。」
「へ、へえー。カワイイんだ。」
「ねえ、なんでアンタはそこに微妙に反応すんの?」
「カ、カスミさん?別に反応してませんのことよ?」
「どうだか……」
止めましょうカスミさん!
ミノリさんが苦笑してるだろ……
「ところで、タカヒロ様。」
「はい?」
「タカヒロ様は魔法を行使したことがありますね。」
「は、はい、一度使った事があります。無意識でしたが。」
「今の貴方なら、それなりに強力な魔法も行使できると思います。でも、基礎がない今の状態ですと、その能力を充分に発揮できません。」
「やはり、そうですよね……」
「ですので、今ここで練習をしましょう、私が教示いたします。」
「それはありがたいです。ぜひお願いします。」
という事で、ミノリさんに魔法をレクチャーしてもらうことになった。
「では、今貴方の魔法力がどの程度なのかを推し量りましょう、あの岩へ向けて何か魔法を当ててみてください。」
広い場所の端っこ、その一角に2メートルほどの高さの岩がある。
言われた通り、何か魔法を出そうとするのだが……
「えーと、そもそもどうすればその魔法は発動するのですか?」
「ああ、すみません。まずはそれからですね。」
一度風の魔法で木の枝を切ったが、あの時はサクラに言われた通りにしただけ、それにシューティングスターを媒介にしたので今一わからなかった。
今は素手なので、どうすりゃいいのかは全く分からない。
「まず、どういった要素の魔法を使うか、それをどういう形で放つのかを想像してください。」
「はい。」
今回は火の魔法をイメージしてみる。
いわゆる火の玉を放つような感じか。
「では、あの岩に向かって、意識して魔法を放ちましょう。」
「あの、詠唱とか動作とかは無いのですか?」
「貴方には必要ないと思います。そうですね、とりあえず命中精度を上げる為に手をかざしてみてください。」
言われるままに岩に向かって手をかざし、火の玉を放つ!と念じる。
結果、直径1メートル程の、火の玉というよりも真っ白な、磁力を帯びたプラズマのような超高温の玉が放たれた。
岩は粉々に砕けるどころか、消滅してしまった。
「こ、これほどまでに強力とは……」
ミノリさんは驚くと同時にあっけにとられ、そんな事を言っている。
ジャネットさんとリサ、カスミは口をあんぐりと開け目が点になっている。
「えーと、こんな感じで良いんですか?なんか思っていたのと違うモノが出たような……」
「え?は、はい、概ねそんな感じ…で大丈夫です……」
何かミノリさんの返事は驚きすぎて上の空のような感じもする。
というか、強力過ぎなんじゃない?これ。
魔法ってすげーな。
「あ、あの、タカヒロ様。」
「はい。」
「おそらく、ですが、貴方の魔法能力は姫神子様にも匹敵する、あるいはそれ以上のようです。」
「え?そんなに?」
「おそらく、ですよ。なので、一つ一つの魔法は強力なものになるでしょう。」
「そ、そうなのですか。」
「但し、その分消費する魔力も大きいはずですのでその点は注意しなければなりませんね。」
まあ、燃料消費量と効果は比例するから当然なんだろうな。
でも、魔力ってそもそも、俺はどのくらいあるんだろうね?
「ミノリさん、ちなみに俺の魔力量って、どの程度なのですか?」
「そうですね、タカヒロ様本人の魔力量は、見たところ人間の許容量限界を超えているでしょう。
魔族の限界値に近いと思います。これは、いわゆる魔族の高位魔族に匹敵しますね。」
「え?そんなに?」
「はい。そして、貴方には精霊が2体宿っています。さらに魂が繋がった精霊が5体、これらを合わせると既に魔族ですら持てる限界を遥かに超えた量かと。」
そ、そうなんだ……
「ただ、だからと言って強大な魔法を連続行使すればその分消費も激しくなります。」
「ちなみに、魔力が無くなるとどうなるのですか?」
「魔力が無くなると、当然ですが魔法は使えません。しかも、体力、気力も影響を受け回復するまで動けなくなると思います。」
「そうなんですね。死にはしないようなので安心しました。」
「いいえ、場合によっては死にますよ。」
「え、そうなんですか?」
「はい。影響の度合いやその時の体の状況など、負の要素が重なればその可能性は高まります。」
それは気を付けないといけないな。
しかし、魔法そのものが強力過ぎるってことは消費も激しいんだよな。
という事は、それをコントロールできれば、強さと消費も調整できるってことか。
「あの、ミノリさん。」
「はい。」
「この魔法って、強さなんかは調節できるのですか?」
「はい。今のタカヒロ様に必要なのは、まさにそこですね。」
「そうか。」
「なので、今からはその調節を練習しましょう。」
そんな感じで、練習を続けた。
ある程度コントロールが効くようになったので、あとは今後の練習次第、ってとこだな。
そして、ついでなので五行相生と五行相克についてもレクチャーしてもらった。
加えて、光の魔法、影の魔法という、特殊な魔法の概要も教えてもらった。
木の要素については、カスミ、というかコロルが居れば要素の分配ができるが、他の精霊と違って魂の繋がりがないので近くにいないとそれはできないらしい。
そうか、つまりはカスミがいないと五行の組み合わせ魔法は使えないってことか。
まぁ、他の要素単体でも強力なのでいいのかな、それでも。
「一つだけその解決方法がありますよ。」
「そうなんですか?」
「はい、簡単といえば簡単な事なのですが、コロルとも精神が繋がれば良いのです。」
「えーと、どの辺が簡単なのでしょう?」
精神の繋がりったって、それもよくわからない。
俺についてる精霊たちは元々俺にくっついていたみたいだから、こちらから繋げたわけじゃないしなぁ。
すると、ミノリさんはにっこりと笑って
「端的に言うとですね、粘膜接触が一番簡単かと。」
「え?」
「え?」
それはつまり、コロル、いやカスミと、その、ナニかをしろ、と?
「人間には接吻という行為があるそうですね、それをすれば良いのですよ。」
あ、ああ、そういうことね。
いやしかし、俺は良いけどそういうのはお互い同意のうえでするモノなので、なんというかその。
「まー、あたしは良いよ、タカヒロとチューぐらい、というかチューしたい。」
「お前な……」
「というかね、コロルはそんなの初めてだからむしろコロルの気持ちを聞かないとねー。」
「そりゃそうだな。というか、聞けるのか?」
「うん、だって一心同体だもん。」
という事で、コロルの回答があるまでこの件は保留としたのだった。
ちなみに、リサとはすでに粘膜接触がなされたそうで、精神の接続はできているとのこと。
いつの間に?と思ったが、思えば顔を舐めまわされたりしてたからなぁ。
その時に、知らず知らずにチューと同じ状態になっていたんだろうな。
リサは納得いってない様子だが、あまり触れないでおこう、うん。
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