第7話 精霊と幽霊と
色々ありすぎた一日だったが、ようやく一息つける。
今俺が居るのはわりと小ぎれいな客室、らしい。
実は、その前に通された部屋はサクラさんが使っている寝室だった。
結構豪奢な感じで、これまた立派なベッドのある部屋だったが、客分の分際でサクラさんの部屋を使わせてもらうってのも気が引けた。
というか、普通はそんな事しないだろうよ、いくら何でも。
という事で、全力で辞退させていただき、こちらの部屋にしてもらったのだ。
こうして寛ぎつつ、俺には確認しないといけないことがある。
スマホをポケットから取り出し
「カスミ、いるだろ?」
カスミに話しかけた。
「はーい、何?さっそく寂しくなって話がしたくなった?」
「違うよ。」
「違うのね。で、何?」
「お前が幽霊ってのは置いといて、俺と同郷ってのはわかったんだが。」
「ちなみに私は三重県出身だよ、アンタもそうなん?」
「俺の出身は茨城県だ、仕事で三重に移ったんだよ。」
「茨城!あれでしょ?“だっぺ”の県でしょ?」
「よく知ってんな、いやいや、今はそれは置いとけよ。」
「んー、そだね。」
どうも、カスミと話していると脱線しがちな気がするな。
というかだな、そもそも俺が初見?の女の人と普通に会話できてるって時点で違和感があるんだけども。
俺は女性とまともに会話ができないのである、うん。
「で、本題だ。今までの話とかを整理するとだ、何やら大きな事態が動いているんだろうけども、何でそれが俺に、なんだ?」
「えーとね、まず私がお願いされたのは誠実で力があって、精霊と相性がよさそうな人を探せってことなんだよ。」
「というか、そんなん見ただけでわかるのか?」
「まー、見るというか感じるというか、インスピレーションと言った方がいいかもね。とにかく、アンタだけがはっきりとその姿を認識できたのよ。」
ん?認識できた?
「うん。その条件に見合わない人っていうか、普通の人はね、ぼやけてはっきりとその姿が見えないってワケさ。」
「へー、幽霊ってそういう見え方するんだ。」
「あー他の幽霊はどうだか知らないよ。少なくとも私はそうだったってだけかもね。」
「でもさ、その条件だったら俺以外にもたくさんいただろうよ、もっと若くて活のいい男がさ。
俺、もう50歳過ぎてんだぜ?というか、なんでピンポイントで日本だけなんだよ?」
「知らないわよ、そんなの。でもね、20年以上日本全国あちこち回ったけど、認識できたのはアンタを含めて3人だけだったよ。」
「そうなんだ。で、3人のうち俺が選ばれた理由は何だよ。」
「へへーん、ズバリ私の好みかな!」
「お前ねー。」
直にそう言われると嬉しいけれど、こういう事じゃないシチュエーションで聞きたかった言葉だな。
「まぁ、そういう要素もあるけど、さっきも言ったけどインスピレーションが凄かった、ってのが一番よ。こう、ビビビ!っときたのよー!」
「どっかで聞いたフレーズだなぁ、それ。」
「あ、知ってたのね、あのアイドル。」
「お前、ほんとに俺と同世代なんだな。」
「まー、ぶっちゃけると1970年、昭和45年生まれだよ。ちなみに誕生日は8月8日!」
「マジか、歳も誕生日も俺と一緒かよ!」
「え、そうなの?偶然ー!でもね、平成7年に死んじゃったから、私の歳は25歳のままなんだよー!」
「で、俺はこの後何をすればいいんだ?わからないまま先に進むのはちょっと、な。」
「歳はスルーかよ!まーいいや。それはねー私もわからないよ。さっきも言ったけど、この後それを教えてくれる者が現れるらしいわね。」
「そーなのか……なあ、フェスター、ムーン。」
俺は精霊たちに呼びかけてみた。
(お、何だい?)
「あぁー、これ精霊の声なの?」
「ん、カスミにも聞こえるのか?」
「聞こえるわねー。」
「まあ、いいや。お前たちも今後何をすべきかってのはわからないのか?」
(そうですね、ボクたちは貴方に宿って貴方の力になる事が役目ですから、それ以外の事は特に聞いていません。)
(オイラ達はさ、それ以上知る必要がないんだよ。存在そのものがおまえの為にあるようなもんだからな。)
(その辺を詳しく聞くには、大精霊様あたりに聞くと良いのではないでしょうか。)
大精霊様だって?
(オイラ達とはまた違う次元の存在の精霊様さ。オイラ達は言ってみれば大精霊様の欠片みたいなもんだよ。)
「その大精霊様ってのは、どこに居るんだ?」
(んんーわかんないな。でもさ、大精霊様に近い存在なら、この近くに居たんじゃないかな。)
(そうですね、“森の精霊”であるドライアド様なら、一番近いかも知れませんね。)
「なるほどねー、じゃあ、まずはその森の精霊に合う事が、当面の課題、ってことか。」
(あーでも、その前にリサの一族にも会っておいた方がいいと思うよ。)
(いろいろと貴方の助けになると思います。)
そうか、じゃあ、森の精霊とリサの一族と合う事が最優先事項ってわけだな。
(どっちも近くに存在するから、そう難しい話じゃないかもね。)
(恐らくですが、どちらも今の貴方が置かれた状況は理解していると思われます。)
「ん?結局アンタはまずその二人に合うべきってことなのね、ならば。」
「あ、おい、カスミ?」
朧気ながら、少しでも先の行動目標が出来たのなら良しとするか。
そう自分を納得させて、リサに寄り添い寝ることにした。
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