第16話 息が出来ないほどの雨



 会社まで自転車を飛ばしているといきなりの豪雨に襲われた…

会社に着くと僕は服のままシャワーをしたのか?とイヤになるほど同僚に聞かれてれていた。


「コナー…、さすがにそれじゃあ仕事にならないだろう…帰った方がいいんじゃないか? 風邪ひくぞ」


「そうだな、今日は急ぎの仕事もないし帰るかな…今度から着替えを置いておくか…」



 さ、帰ってシャワーしたら今日はずっとララサチといられるぞ…そう思うと小雨になったところで自転車を飛ばして家路についた。


「ただいまー!」


中までびっしょりと濡れてしまった靴を脱ぎながらシーンとしている家に違和感を覚える


「ララサチ……???」


 あれ?この時間は寝てるのかな? いつもはタターっと走ってくるのに…

邪魔しちゃ悪いしそっとしておこう、まずはシャワーだな…



 シャワーから出てもララサチはまだ起きて来ていない、シャワーの音にも気付かないなんて…いつもの猫ベッドにはいない…どこで寝ているんだ???僕がいない時は行動が違うのかな…見渡してもいつもいそうな所にはいない…


 髪の毛から水が滴って来る、顔に伝うその雫が汗なのか何なのか…なんとも言えない感覚になってくる…

 体の奥底から浮かんでくる様な違和感…息がしにくい…まるで空気が薄いように……

―――ゾッとするようなこの空気……ララサチの気配がないのだ…


「……まさか…外に…?」


 窓もしっかり閉まっている、ドアもカギを開けて入って来た…どこだ?

部屋の中を見渡す、リビングルーム、キッチン、バスルームにもいない…僕の部屋?

ララサチは僕の部屋には入らない、そういう約束でもあるけどプライバシーは守ると言っていて…そういう律儀な所もあるのだ…


 部屋のドアはいつものように開いている、入ると部屋は変わった様子はなく朝出たままでララサチの姿はない…クローゼットは閉まっていたけど一応開けて確かめる…いない…

 ベッドの下…??? ララサチがこんな所に? 床に手をついてベッドの下を覗き込んでみる…


 薄暗いベッドの下の奥の方にララサチらしきものが見えた…感じる違和感を頭から追い出しながら必死に話しかける…


「……ララサチ? どうしたの?」


 返事がない…もしかして具合が悪い? 急いでスマホを持ってきて明かりをつけてみる、明かりに照らされたララサチはじっと僕を見ている…


「なんでそんな所に? 怪我した? 具合悪い? とにかく出ておいで…」


 床に寝転んで片手のスマホで明かりを照らしながらララサチの方に手を伸ばしてみる


「シャーーーーーー!!」


 伸ばした手を引っ掻かれそうになったところでこの違和感の正体を確信した…感情を押し殺すように…自分の頭の回線がショートしない様に…必死に自分を保とうとした………


「……ララ…おいで…怖くないよ…」


 優しく声を掛けても来る気配はない…ベッドの下の奥の方で怯えるようにこっちをじっと見ている…そう…猫カフェにいた時のララ………



 そのままベッドに倒れこみたかった…でも下にいるララを驚かしてはいけない…

足に力を入れて立ち上がり部屋を出て行く、足の力が抜けていく…床が柔らかくなって自分の足が沈んで行くように感じる…やっとの思いでソファーまで来て倒れこむ…

自分の頭の中の様に真っ白な天井を見つめる…再び強く降り出した雨の音だけが頭に響き渡る


「……クソッ…」




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