第13話 マンゴーの木の下で


 コナーの実家に来て普段通りに過ごしている、いつもの様に肩に乗りコナーと話していると…とてつもない熱い視線を感じる。

 コナーの両親がじっと見ている…そりゃそうだろう、コナーの両親からしたら幽霊に憑かれた猫が自分の息子の肩に乗りなにやら話しているのだ… コナーは幼い頃から霊感があって両親もそれを知っていて理解はしている、でも実際にこうやって目の当たりにしてしまうと…


ふいにお父さんが優しい眼差しで話しかけてくる


「二人とも楽しそうでいいね、私達にもコナーのおうな能力があれば良いなって話してたんだよ」


「僕も昔は嫌だったけどね、見えないものに話しかけられるのは… でも、ララサチは見えるし猫ってとこが最高だよ!」


「……」


 コナーの感覚は独特だ、それはこの両親に大事に育てらてのことなんだ… もしコナーに出会ってなかったら…? もしコナー以外の人に出会っていたら…?

私はこんな理解のある人たちに出会って幸運なんだろう、下手したら怖がられて…あげくに除霊などされたら…


「ララサチ、おいで! 木登りは出来るの? してみる?」


 コナーのお母さんが木の下から私を呼ぶ声でふと我に返る… 木登りねぇ、小さい頃にしたことあるけど? あ、そうか…猫だからね、木登り得意かも!

木の下に行くと沢山の実がなっている、果物の木ってこんなに大きくなるの?もしかしてあれは…


「マンゴーよ! 食べごろになるにはまだまだ先だけど、近くに行けば良い香りがするんじゃないかな? 登ってごらん」


「ニャー(うん)」


 木に爪を立てて自分を持ち上げるように手に力を込める、フワッと自分の体が上へ上へ行くように爪が木の表面をとらえていく


(わぁー、楽しい! 体が軽い!!!)


 あっという間に枝の所まで来た、そこからたわわに実っているマンゴーの香りがわずかだけどする、ここからだと隣の家の庭もよく見える…あ、お隣のラナイではテレビを見てる… 反対のお隣は?…プール!! わお!外国っぽい。

 風も気持ちいいし景色もいい、遠くには海も見える! しばらく満喫していると


「ララサチ! 大丈夫ー?」


 コナーに呼ばれてニャーと返事をしようとしたとたん、あれ?これどう降りるの?という高さまで来ていることに気が付いた。

 猫が高い所まで登って降りられない…ということがまさか自分の身に起きるとは…高い所が苦手ということではない、幽霊で飛び回っていたのだから…問題はもはや飛び降りられる高さではないということで、木に抱き着くようにしてソロソロと降りて行けば良いのか?頭では分かっているけど…爪が立てられずにスルーっと落ちたら?


「大丈夫だよ! 僕が受け止めるから!!」


「にゃ?」


 コナーはそう言うと木の下で手を広げて待っている… 恥ずかしい… とてつもなく恥ずかしい!!! お父さんもお母さんも優しい笑顔でこちらを見ている…、いやいや…なにこの状況⁈… 

 ここは冷静になってまずは足から、爪を立てて、手に力を入れてっと…枝から離れて4つの足で木に張り付くことは出来たが…下にさがるには??? なんて考えてるうちに… ダメだ…! 滑り落ちる!!!


「I got you!!!」


 木から滑って落ちた私は下で待ち受けていたコナーにがっちりと受け止められた、ベタなこの展開に恥ずかしさでいっぱいになる


「ありがとう…」


「どういたしまして」


そう言ってフワッと笑ったコナーに心臓がギュッとなるのを感じた…


(猫の心臓もこうなるのね…)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る