第12話 猫、両親に挨拶に行く

 

 さあ、今日はついに外へお出かけだ!

―――と言ってもキャリーケースに入ってまずはコナーの実家に行くことになった。

前からコナーの家族が私に会いたがっているのは聞いていたけど、まさか彼の実家にお邪魔することになるとは…なんだかこの状況が彼の両親に挨拶…みたいになっていてなんだか気恥ずかしい。と言うのもコナーの様子が変なのだ…


「ララサチ、ブラッシングして行く? お風呂に入って行った方が良いかな?」


「…コナー、なんで実家に行くのに緊張してるの?」


「!…緊張なんてしてない!…ただ…う~ん…母がね…」


「ん? …お母さん? 何か問題あるの?」


「う~ん…ちょっと…口うるさい…」


「…ちょっと、ごめん…口うるさいって、何に? 私は猫だよ、しかも猫の私に会いたいんだよね?」


「そうだよね、ハハハ…前にね、ガールフレンドを連れて行ったらうるさくって…」


「…⁈⁈…ちょっと待って…コナー、何度も言うけど…私は猫!」



…ガールフレンドと言う言葉に変な反応がでてしまう、まったくコナーは何を考えているのだろう? 猫を連れて行くのとガールフレンドを連れて行くのは全くの別物だろう! それとも私を猫だとは思っていない???

 何が何だか分からなくなってきた…、とにかく…猫は着飾れないし、お風呂に入ってブラッシングしたところで何も変わらないよ…私はコナーの肩から降りてふら付く足に力を入れてキャリーケースに入った。


「こんなに可愛いんだもの、皆ララサチが大好きになるよー!」


 キャリーケースの外からコナーの弾んだ声が聞こえる、顔が熱い…


(猫でも顔が赤くなるのかな…???)




 車で30分くらいドライブしただろうか? コナーの実家は閑静な住宅街にあった。

 オアフ島の中心地とは違い高いビルもなく何だか道路も広い、大きな庭がついている家ばかりが並んでいる…高級住宅街⁈ 車から出るとワイキキと違い少し涼しげな風が吹き抜ける、コナーはキャリーケースを持って家の門を開け庭の方に向かう。

 綺麗に整備された庭、芝生が綺麗に刈られていて真ん中あたりにある大きな木にはなにやら実っている、塀沿いには花壇があって花やハーブと思われる植物がたくさん植えてある。


 コナーはそっと芝生の上にキャリーケースを置いて私を解き放つ。

芝生の感触、匂い…なんて心地良いのだろう!


「ララサチ、こっち!」


 コナーに呼ばれて振る向くと、大きくせり出した軒下にソファーやテーブルが置かれていてまるで外にある部屋が目に入る、ハワイではラナイと言ってこの半野外空間がある家が一般的で外にあるリビングルームのようだ。


 そこにいるコナーの両親が私のことをじっと見ている、私は一応猫らしくラナイの方へ歩いて行く…コナーのお父さんはアロハシャツを着ていて優しそうな笑顔、あの笑顔はコナーっぽい、コナーのお母さん…コナーとお母さんは顔のつくりは似ているけどお母さんは少しきつい感じだ。


「お父さん、お母さん―――ララサチだよ」


「えーっと…こっちがお父さんのグレンで、こっちがお母さんのシェリル」


 コナーは猫の私に対して丁寧に紹介してくれるお陰で、私も丁寧に2人にお辞儀をしてからニャーと言ってみる。


「ララサチ…さん、ようこそ、まあ…いつもの様にしてもらって…ハハハ、なにか飲むかい?」


 お父さんには日本語で話してもらってありがたい、それにしても変な空気…そりゃそうだ猫との挨拶なんて状況なのだから。


「~…―――…~…」


 お母さんがコナーに向かって何か韓国語であろう言葉で話している


「ようこそって…お母さんはララサチに触りたいって」


「ニャー!(どうぞ!)」


 そう言うと、お母さんが近づいて来て私の頭にそっと触れる


「…可愛い…」


 お母さんはこう英語で言うと少し残念そうにしている…ここで私はコナーの所に行き聞きたいことを聞いてみることにした。


「…ねえ、こんな感じでいいの? お母さんどうしたの?」


「う~ん…、お母さんも見たかったんだって、僕が小さい頃よく幽霊見てたからそういう話には理解があるけど…お母さんには霊感ないからなぁ…ハハハ」


「…そうなんだ、怖い…とかはないのかな? どうしたらいいの? 猫みたいにしておけばいいの? それともいつも通りでいいの?」


「いつも通りでいいんじゃないかな、二人とも怖がるわけないし本当に楽しみにしてたんだから!!」


「うん、分かった!フフッ…」




 





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