第10話 コナーの理想と現実

 念願の猫がいる生活が始まった!

一日働いて疲れて仕事から帰る、ドアを開けるとそこにはかわいい猫が待っている。


「にゃ、にゃ、にゃ、にゃーん」


 僕がドアを開けるとで歩く猫がこう言って出迎えてくれた。


「ただいま」


僕は出迎えてくれた可愛い猫を思わず抱き上げる。


「今日はちょっと早い? 疲れた顔してるね、なんか嫌なことあった?」


早口気味に質問が飛んでくる、なんだか可愛くて思わず顔をすりすりしてしまう。


「きゃー、それは無理ーーー!!」


「…ごめん」


 そっと床にララサチを降ろす、僕の猫は他の猫と違う…と言うより猫に見えるが猫ではない。

 元々は普通の猫だったのが幽霊に取り憑かれ…今は人間の様に振舞っている。

こういう状況になってからまだ日が浅く、彼女も僕も手探り状態でどういう関係を築いていくか…う~ん…、はっきり言って考えても仕方ない…何もかもが全く未知の世界なのだ。


 僕は前から猫を飼うのが夢だった、でも僕が留守の時に一匹にしておくのはかわいそうだと思い躊躇していた…でも、幸運なことにララサチとは意思疎通が出来る、飼う前にきちんと気持ちを聞いてから決めることが出来たのだ。


 家に猫が来るということが嬉しすぎてすぐに飼うことを決めてしまったが、意思疎通できるペットなどもはやペットではない、同居人ではないか…。こんな重大なことに気付いたのが遅すぎた…僕はなんて浅はかな考えの持ち主なんだ…!

今まで他人と生活を一緒にしたことはもちろんない…しかし!ララサチは家族だ、初めての猫の家族!!―――そう自分に言い聞かす。


 朝起きるとまずはコーヒーを淹れる、猫舌の僕はコーヒーはすぐに飲めない、その間にシャワーを済ます、丁度いい温度のコーヒーを飲んでいると段々と目が覚めて来る。朝食はシリアルかパンにジャムなど簡単なものだ、料理は出来るけど朝から何か作るように頭がセットされていない。自分の身を整えて着替えたら出社する、会社まではそんなに遠くはないが車で行っている。自転車でもいいが朝から汗をかくのが嫌なのだ…汗をかくのはもっぱらジムでと決めている。休日にはジム、サーフイン、サイクリングなど運動をする、そして猫カフェだった。


 僕は猫が来てもこの生活にそんな変わりはないだろうと思っていた…大間違いだった―――



 朝起きるとすでに起きているララサチがこちらに何か言って来る、抱っこすると同時に彼女の声が勢いよく頭に鳴り響く


「おはよう、昨日の夜ねゴキブリがでたんだよ!ハワイでも結構大きいのでるんだね!ララの本能かな…一瞬ゴキブリに襲いかかろうとしちゃって…」


「…そう…なんだ…」


「コナー、まだ起きてないね、ごめん…」


「大丈夫…コーヒーとシャワー…」


 朦朧としている頭…ララサチを床に降ろしていつものルーティン…あ、その前に彼女のごはん。

熱いシャワーを頭から浴びながらキャットフードのことを考える、美味しいのか?いや、美味しいとかの問題じゃなく…僕だったら嫌だなぁ…いくら猫の体のためと言っても。 手作りって出来るんだろうか? 後で調べてみよう!



 こうやって僕の生活はララサチに侵され、今僕は猫がコーヒーを飲んでいいのか?というのを調べている…


「わー!! ダメ!!! カフェインがーーー!!」


「にゃ?」


 ララサチが僕のコーヒーを飲もうとしている所を危うく止めることが出来た。


「ごめんね、猫にはカフェインが毒になるんだって…飲んじゃだめだよ」


「久々にコーヒー…ダメか…じゃ、匂いだけ…」


 猫でもしょんぼりしているのが分かる…コーヒーはダメでも何か美味しい朝食を僕が仕事に行く前に用意出来たらな、お昼は弁当みたいなもの置いていく?

少しでもララサチが喜ぶように…考えるだけでなんだか忙しい。

 そして僕は自転車に乗って職場へ行く、朝晩の車の渋滞にはまる時間がもったいないのだ、今は自転車を飛ばし家にいる時間を少しでも長くするに汗を流している。

 次の休日にはララサチの要望の幽霊に憑かれた人か動物を探しに行こう。


 こんな風に実態が出来て幽霊には出来なかったことを沢山やりたいにいつまで振り回されるんだろう…。でも悪くない。



 




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