第7話 ミエル、キコエル?
今週もコナーはやって来た。
先週なにかやらかしてしまったかと思ったけど、今日は入って来るなりにこやかな顔が見える。良かった~、ララちゃんを引き取ってもらう作戦はまだ続行できそうだ。
今日も少し逃げるよ様に見せかけてから…と考えていると何やらコナーがこちらにスタスタと近づいて来る、え⁈
「ハイ、ララ…それとも他に名前があるのかな?」
(…ん⁈ なに⁈ 意味が分からないんですけど!)
他の人に聞こえないくらいの声で話しかけてくる、まるで猫に話す感じではない!
思考回路が繋がらず体も動かない…。
コナーは隣にすっと座る、そして手を頭の上にのせて来る…撫でるとはなんだか違うその手からは緊張が伝わって来る。
「…やっぱり、」
と言って私の方をじっと見て来る、ララちゃんの瞳を通した私の目を見られている様だ…居心地が悪い…見透かされているような…この姿になって初めての感覚…。
(やっぱり?って…どういう意味?)
コナーは頭から手を離す、でも視線は離さない。
しばらくするとまた頭に手を乗せる、また離す…を何回か繰り返した、その間私はどうすることも出来ずにされるがままになっていた、なぜなら彼の視線が私の目を見ているようだったから。
「…えっと…。どう言えばいいかな…ララ?はっきりとは見えないけどいるよね?ララと一緒に…君は誰?」
(…これは…⁈ この人は…ミ…ミエル⁈)
コナーの手が私の頭の上で震えているのが分かる、そうだよね…みえちゃってるんだよね…
ちょっと待って…コナーの目に私は一体どんな風に見えているんだろう?震えているってことは怖い見た目⁈ ララちゃんに重なって見えてる? そしたら私今…猫みたいに四つん這いになってるんだよね…恥ずかしいーーー!!
「えええええーーー!」
我を忘れた…思わず立ち上がってしまった!
目の前で猫が立ち上がってしまったのを見たコナーは私以上に慌てた!
2本の足で立っている
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ギャーーーーー!!!」
私とコナーは同時に悲鳴を上げた、店員が驚いてどうしのか聞いてくる…
「…ごめん、見て!…ララちゃん抱っこできたよ!!」
「すごい!それは大声が出るわ~、ハハハ!でもララちゃんもびっくりしてるわ!」
今や私とコナーは驚きの中にいながらもしっかりと見つめ合っていた…。
しっかりと抱きかかえられていて逃げることもできない…これは?いったい?どうすればいいのか…???
「…もしかしてだけど…声も聞こえる…かも…。」
「にゃえ⁈⁈」
思わず変な声が出た…落ち着け…!コナーには私が視えて、話もできると言うの⁈
そんなことが出来るのか?そもそも幽霊になってから人と話したことなんてないから…どうすれば? もう思い切るしかない!!!
「…は…ハロー…?」
「どぅわ⁈ワッ⁈」
今度はコナーから変な声が出た、彼は思わず私を床に落とす。解放された私は猫になりきろうと必死に彼の横の座布団の上に座ろうとよろよろと歩いて行く。
私もそうだが、コナーもどうやら必死にこの状況を整理しようとしているようだ。
不思議なことに人が目の前で慌てていると自分は冷静になるものだ…、あんなショックを受けて大丈夫なのか心配になってきた…。
「…アー ユー オーケー?」
コナーからは返事はない、顔を背けたまま相変わらずなにやらぶつぶつ言っている。こちらに見向きもしないので背中をトンと触ってみる。
驚いたコナーが振り向く、猫の私を抱き上げる…今度は脇を抱えられ顔を突き合わす形になってしまった。ち…近い…!!!
「…ちょっ…と…!」
思わず日本語で言ってしまった…英語が咄嗟に出るほどこっちは流暢じゃないんだよー!もう頭がまっしろだ!
「…ニホンゴ…?ニホンジン…??」
「え⁈ …はい。」
こんなことがあるだろうか、私が頑張ってつたない英語を話す必要はない?
「…あの…日本語が分かるんですか?」
「はい、日本語話します。」
ニコっとする彼の顔を見たら泣きそうになってきた…。まさかまた誰かと会話できる日が来るなんて!…でも…まだ脇を抱えられていて恥ずかしいんですけど…。
「すみません…下に、降ろしてもらえませんか?」
「ああ…、すみません!でも離しちゃうと見えなくなるんです…。」
「―――は⁈⁈」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます