第6話 僕は猫が飼いたい
僕はコナー・ササキ
ハワイに住む32歳の建築デザイン会社に勤める猫好きの普通の会社員だ。
父親は日系2世で祖父母が日本からハワイに移住してきた、母は韓国系アメリカ人なので、ハワイでは珍しくない日系の顔立ち、両親に恵まれ日本語と韓国語も出来るトリリンガルだ。妹が一人いるが今はアメリカ本土の方で働いている。
忙しく働く中での癒しが猫カフェに行くことだ、週末に猫に会うことを楽しみに仕事を頑張っていると言ってもいい。
ずっと猫を飼いたいと思っているけど、一人暮らしをしているので猫に寂しい思いをさせてしまいそうで飼えないでいる。猫カフェの店員などは猫は昼間は大体寝ているし、一緒にいる時に思いっきり可愛がってあげればいいのよ、なんて言うけれどそんなの猫本人に聞いてみないと分からないじゃないか!
今日もお気に入りの猫に会うために馴染みのカフェに来た。
お気に入りの猫はララちゃんと言って3歳にはなっている茶トラの猫だ、多頭飼いされていた彼女は他の沢山の猫と共に保護されここにやって来た。他の猫は貰われていったが警戒心が一際強い彼女だけがいまだにここにいる。
僕は遠くからでも分かる彼女の怯えた目が気になってここに来るたびに近ずけるよう頑張っている。でも大体は距離を縮める前に逃げられてしまう…。
遠くから見ているだけでも良いなんて思っていたある日、なんだかララちゃんの様子が違う、店員達も最近彼女が少し変わったと話をしている。
確かに近くに行こうとしても逃げる体制にすら入らない、具合が悪い? まさか心を開いてくれたのか? 慎重に近づいて行くとついに触れる距離まで来れた、これは触れていいのか? そっと頭に触れてみる…
―――ゾワッ…!
なんだか触れてはいけないものに触れてしまったような感覚…、これは…知っている感覚だ…。
昔からふとした時に感じるどこかからの視線、間違いなくそこにいるのは分かるのに見ることが出来ない存在…僕はそれを小さい頃から感じることが出来た…。幼い頃は、会話もしていたらしいが今はたまに感じる程度だった、そして…今ララちゃんの頭に触れた瞬間、凝縮したようなあの感触が手から伝わって来た…これはいったい?
少し恐怖を感じてしまいその日は帰ることにした、せっかくララちゃんに触れられたというのに…。あの感覚が気のせいと思いたいところだが間違えようがないのだ。あの全身に鳥肌が立つ感じ、これはもう一度確かめてみなければならない…ララちゃんは…なにかなのか。
次の週末にまたララちゃんに会いに行くことにした。
店員にララちゃんはいつもの場所だと教えて貰う、見るといつもの座布団にちょこんと座っている。遠目では何も変わらないいつものララちゃんだ、今はあのゾワッとした感じはない。近づこうとするといつもの様に逃げる体制に入っている、いつもの様子にホッとする…しかしララちゃん逃げずに座布団に座った、やはり何かが違う…
僕に慣れた…とかではないのだ、なんだか挑発されている気分だ。
今回も少しずつ近づき触れる距離まで来た。
そっと頭を触る…まただ!あのゾワッした感覚。全身に鳥肌が立つ…なにか………いる?
そのまま頭から体の方を撫でてみる、バチっと手に電流が走った様に感じたと思ったらララちゃんが警戒体制に入ってしまった、威嚇のポーズを向けられた…拒絶されて少し悲しくなる…。
しかしララちゃんは逃げない、威嚇のポーズを止めこちらをじっと見ている。僕も彼女の綺麗な瞳に吸い込まれるように目が離せなくなる。
すると、ララちゃんが僕の膝に手を乗せにゃあと鳴いた…ララちゃんの手からゾワッとする感覚ではない…今までにない…恐怖と暖かさが一体になった様な今まで存在しなかった感覚が流れ込んで来る……その瞬間ララちゃんに重なるように見えたのだ!
―――もやのようで人の形のような……なにか!
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