第5話 飼われるためには

 私がララちゃんになってから3日が経った。

何とか4つ足で歩くことも出来るけど、ふと二足歩行になってしまいそうになる。

他の猫たちの後をついては餌を真似て食べ、キャットフードには最初抵抗があったけど猫の好む味なのか慣れると結構美味しい!トイレ(しょうがないよね…猫トイレ使うしかないんだから…自分は猫!)に毛づくろいにと…色々と学んでいる…と言うのはララちゃんの中に入ったはいいが出方が分からない。

 ここにはどうやったら猫から出られるのかなんて教えてくれる人はいない…もうこのまま猫として生きていくのか…。


 前からの猫の生活は良いなぁ~、なんて思っていたけど…確かに良い!

まぁ、この猫カフェの居心地が良いせいもある。来るお客はもちろん猫好きだ、カフェにいる店員ももちろんのこと大の猫好きである、天国じゃない訳ない。

残念なのは猫語が分からない…、猫になってもやはりにゃーしか分からない。人間の言葉は変わらず分かるのに、猫とも会話出来たら最高だったのにな。


(ララちゃん、最近なんか変わった?)

(そうねー、ソフトになった?)

(この分だと、コナーに貰われるんじゃ?)


 ん⁈ 入口付近いる店員たちが私の事を話しているらしいが、コナーとは???

あのロコボーイ? 貰われる? 私を飼いたいの⁈ う~ん…、どうしよう。


 あのロコボーイはいつも土日のどっちかにやって来る、考えなければ…。

このカフェにいるのは心地よい、でも私が抜けてララちゃんに戻った時に家族がいる家があった方がいいに決まっている。ここは私が頑張ってララちゃんを飼ってもらおう!

 



 週末になり、やはりあのロコボーイがやって来た。


(ハーイ!コナー、ララちゃん今日もいつもの所よ~)

(OK!)


 来た!やっぱり彼がコナーって言うのね。よし、作戦開始!!

まずはあまりララちゃんらしさから離れすぎないこと、そして心開き始めましたよ~というのをさりげなくアピールする!む、む、難しいな。

 コナーは相変わらず少しずづ距離を詰めて来る、本当にララちゃんが好きで心優しい人なんだな。前回は立ち上がることが出来ずに頭を撫でられてしまった、今日は立ち上がって少し逃げる素振りをする、やはり猫はツンデレがなんぼだ!


 コナーはその場で座り込みおやつを手にのせて私を見ている…。

か、可愛い…!なに、その顔! 今日はダメ?みたいな顔でおやつを差し出してくる…

 あぁ…、人が動物に向ける顔ってこんななの?そんなにララちゃんが愛おしいの?

うう…、苦しい。このまま一歩引きたいが…引けるのか?私…?差し出されている手をじっと見ることしか出来ずに何分も経ったように感じる…しょうがない、一旦座布団の上に戻ろう。


 座布団の上からコナーがじりじりと寄って来るのを横目で見る、可愛いなぁ。

私は寝るからね、頭を撫でても良いよ。

寝たふりをしていると案の定頭をそっと撫でて来る、コナーは一瞬びくっとして手を止めたけどしばらくしてまた頭をそっと撫でてきた、コナーの手が頭から体の方にすーっと流れて来る、毛が逆立つ!思わず声が出そうになる…。


(きゃー、やめてー!!!)


 気が付いたら猫の様にシャー!!っと毛を逆立て威嚇のポーズを取っていた。

これはララちゃんの本能なのか、自分でも驚いたが私以上にコナーが驚いている。

まずい!これでは家族にはなれない…、落ち着け私!


 ひとまず、威嚇のポーズを止めコナーをじっと見つめる。可哀そうに彼の顔には落胆と後悔の様な表情が浮かんでいる。

 私はコナーの膝にちょこんと手をのせて、にゃあ…と言ってみる。

コナーが驚いている、あ、今の鳴き声おかしかった?そう言えば鳴いたの初めてだ!猫らしく出来たか不安になってきた…。そう言えば今の人間っぽかったかも…。


「ミャー…オ?」


 あれ?鳴き声ってこうだっけ?やばい…パニック!

コナーの顔は今まで見た人間の顔で一番驚いた顔をしている、私、何した???




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