第4話 成仏するのは難しい
次の日から指輪捜索を始めることにした。
しかし、5年も経っている…潮の流れとか考えると湾から出てしまっていることも考えられる。誰かに拾われたかもしれないし…まあ普通に考えて見つからないよね。
少し海の中を見たけど、こんなに広いし…やる気が起きない!
もうダメだ、きっともうない…。いつもこんな風に安直な考えに自分で振り回されている、死んでも治らないものだな…。
だいたい、今まで忘れていた指輪だ…それが私をこの世に繋ぎ止めているとは思えない、もう成仏は諦めてハワイの生活を楽しむしかないのかな?
ちょっと気分を変えなければ…と言うことで少しフラフラとした後猫カフェに行くことにした。
よし、今日もララちゃんはお気に入りの座布団の上にいる。もう貰われることはなくずっとここにいて欲しい。茶トラの縞模様が今日もつやつやしていて奇麗だ。
ララちゃんが私に気付いてこちらを見ている、綺麗な瞳…猫の目は不思議だ、大きな水の雫のような緑がかった黄色の瞳がじっと私を見る…なんだか目を離せない…なに?この感じ…??引き込まれる…。
体がフワッとしたと思ったら窮屈な感じに襲われる…
何だろう、痛いような…体中の毛が逆立つような…全身が痛い…
靄のかかった様な視界がだんだんとピントが合ってきた…いや…なにかおかしい!!
まさか!成仏の兆候⁈ ついに!!!こんなに急にやって来るものなんだ?
―――ん…⁈ どうすればいいの、これ?ただ待っていればいいのかな?
―――え⁈ まだ? やっぱりなにか変だ…動けないし視界が低い!目は見えているけど色合いが…何だか違う!!
―――うん、やっぱり成仏していない。どうやら私、猫になってしまった。
ララちゃんのお気に入りの座布団の上にいるということは分かる、そしてその上にある手…可愛らしい茶トラの猫の手。少し動かしてみる…うん、やっぱり私はララちゃん!これは憑依⁈まさか猫の中に入ってしまうとは…。手を少し動かしてみたけど、どうやって立ち上がる?へたしたら人間の様に二本足で立ってしまうかも…加減が分からない。
う~ん…出来たら誰もいない時に動き出したい、ここで寝たふりをして夜まで待つか…。
こんな時に限ってララちゃんがお気に入りのあの
ララちゃんだったら彼が入って来た時点で逃げる体制にはいる、でも今日は私なんだよー…逃げれない、どうしよう…こっちに来ない様に祈るしかない。
ロコボーイはカフェ内を見渡すとララちゃんの所定場所を遠巻きに見ている。
ああ、そうだよねララちゃんお目当てだもんね。少しずづ時間をかけて近づいて来る…ララちゃんが動かないからなんだか嬉しそうだ、君がうまく近づいているのではなく私が動けないのがラッキーなだけなんだよ~…なんて思っているともうララちゃんに手が届く距離まで詰めて来た!
うぅ~…どうしよう…嬉しそうに手を伸ばしてくる。
ついに頭にそっと触れて来る、優しくて大きな手…なんて心地いいんだろう…
ああ、そうか…誰かに触れられるのは久しぶり…
人の手ってこんなに暖かかったかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます