第3話 思い出話に花は咲かない
命日に訪ねて来た元旦那の
今日は一人で、ハナウマ湾が見渡せる高台の方に来ている。
「さち…、明日日本に帰るよ…。もうここには来ない。」
(そうか…ついにさよならなんだね、そうだよね新しい家族が出来るんだし…いつまでも死んだ元妻のことなんかかまってられないか…)
「さよなら…」
建洋は何かを手にもっていた、あ、結婚指輪…懐かしい。まだ持っていてくれたんだ…うれしい…⁈えーーー!まさか⁈と思った瞬間彼は指輪を思いっきり投げた…
指輪は勢いよく海の中へと消えて行った…。
う~ん…、複雑。まぁ、持っていても仕方ないし?売り払うってのもね?私が眠る海へっていうのが美しいやり方?それにしても私のは?一緒にお墓の中かな?
彼が泣いている、まだ私のために泣いてくれる優しいひと。さよなら…。
私は彼の横に立つ、以前の様に触ることも出来ないし彼の体温を感じることも出来ない…。
私はいつまでこうしていることだろう?なんで彼だけ幸せになんてなれるんだろう?
…なんて恨みめいたことも考えたけど、死んだ私の事だけ考えて生き続けるというのは酷だ。
私はあの日で終わっていてもう彼には何も与えることは出来ないのだから…。
(美咲さんとお幸せに!)
もうこんなベタなことしか言えない…、聞こえたらいいなと願いながら。
さあ!私も進もう!! うじうじと考えるのは好きじゃない。
もうこうなったら幽霊を極めるのだ!……う~ん…どうやって???
まずは幽霊にはだいたいの種類があるのは分かっている。
タイプ1 悲しみに負け、ひたすらに同じ場所で打ちひしがれている。――地縛霊
タイプ2 なんだか分からずこの世をふらついている。――浮遊霊
タイプ3 悲しみを遥かに通り越して何もかもを恨んでいる。――怨霊
タイプ4 何だか分からんがたまにいる偉そうな幽霊。――???
これらは私のいるハナウマ湾の幽霊達だ、私の知識ではこんなもんだ。
私は最初は地縛霊だと思ったけど今は浮遊霊になった?それとも間なのか?
タイプ4に関してはここに来る生きている観光客にたまにくっついて来るのだ、本当に誰だか知らんが、偉っそうなのだ!!人に憑けるのはおそらく力があるものなのだろう、私も前に人に憑けるのか?入れるのか?とか試してみたが無理だった。なので私の様なぺーぺーには無理な高度なワザが必要なのだろう。
私が一番知りたいのはどうすれば成仏出来るのか…。
いつもいたお仲間がある日突然いなくなることがある、それって成仏してると思うんだけど!
この世に未練がなくなったら?誰かに強く願ってもらう?何か特別なものが?
分からない…私をここにとどめているものって???別にハワイがとーーーーっても好きと言う訳でもなかった、新婚旅行=ハワイと言う安易な考えで決めただけだ。
海が大好きというキャラでもない…海に久々に来てこうなったくらいだし。
自分が死んだというのは分かっている、溺れて沈んで行くときこれは死ぬな~…って覚悟したから…。
ん⁈何だっけな…なんか大事なこと忘れてる?
あの、透き通った海の中…海水ってしょっぱ!!なんて思ってから息ができなくなって体の中が全部海水になって押しつぶされるような感覚の中…苦しくて苦しくて最後にもがいた…あーーー!!!!!あれだ!
――指輪!!!
あの…ひともがきで緩かった指輪が外れて私より先に海の底へ…そうだよ!あの珍しく私がこだわって作った(高かった)指輪!ドレスのためにダイエットしたら指のサイズが変わっちゃってて、指輪交換で緩いことが判明したけどお直しする暇なくてそのままハワイに来て…って今こーんなに思い出した!!!
建洋が指輪捨てたおかげだ!!!
もしかしたら…
指輪をみつけたら…
成仏できるのでは…?
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