転生~幼年期 第14話

14.初めての魔物②


 飽きることなく、魔物の首と死体と血糊を見続けていると、ニアマ父さんが林の方向から歩いて戻ってくるのが見えた。直刀は佩いた状態だ。


「お母さん、お父さんが戻ってきた。」

「あら本当ね。どうやら無事のようね。ね、言ったでしょ。お父さんは強いって。さぁ二人とももう安心よ。馬車の外に出て一息つきましょう」


 馬車から俺たちが出てくるのが見えたのかニアマ父さんが駆け出して、俺たちのそばに来た。

「みんな、言うことを聞いて落ち着いて馬車の中で待ってたようだな。偉いぞ。ナオ、カズチャ、シンバ」

 ニアマ父さんは俺たちを順番に軽々と抱き上げ、ごつごつした手で頭をガシガシと乱暴に撫でた。ちょっと血の匂いがしたがとても心強くそして安心感を覚えた。なによりも嬉しかった。父さんが無事で。


(本当に、無事に終わってよかった。父さんって強いんだな。父さんありがと~)


「今回は7体のゴブリンの集団でうろついていたんだろ。林の中に他の魔物の気配はなかった。町に着くまで気は抜けないがすぐに他の魔物が襲ってくることはないだろう。なぁにゴブリンとの遭遇なんて旅をしてればよくあることだ。気にするな。これから、儂とコバはゴブリンの死体をかたずけるから、馬車の中で待っててくれ。」

「「「え?ゴブリン?お父さん、近くで見ててもいい?」」」

 どうやら三人供魔物、やっぱりゴブリンだったようだが、興味があるようだ。

「う~ん。まぁいいか。小さいころから経験を積むのはいいことだからな。よし。近くで見ててもいいが、手は出すなよ。それに血の匂いが濃いから、気を付けて。気分が悪くなったらすぐ言うんだぞ」

「「「はい」」」

 ナオ姉と手を繋いでもらい、カズチャと俺は血の匂いの濃い中、ニアマ父さんとコバが魔物の死体を片付ける様子をジーッと見守った。


『鑑定』


鑑定結果

ゴブリンの死体の一部


(血の匂いに中てられることはなさそうだな。魔物の死体も『鑑定』できた。職業は魔物だからないのか?でもこいつの強さはどのくらいなんだろう。俺は父さんみたいとはいわないが、一対一で戦って勝てるのか?あ、『射出』で遠距離攻撃か。速度はいいとして強度がな、石ころで効果あるのか?これは是非ともニアマ父さんが一緒の時に試さなくては。『射出』が効かない場合には近接戦闘か。鍛錬を積んで、あ、武器も必要だな。異世界転生してから薄々魔物と戦う時が来ると思っていたが、意外と早そうだし、三点課題の解決は待ったなしと。それはそうと、戦うところは見ることができなかったが、ニアマ父さん、めちゃくちゃ強そうだな。背中が体格以上に大きく感じるしな。こんなに頼もしい背中を見るのはいつぶりかな)


 ニアマ父さんとコバは解体用ナイフで死体の胸の部分を切り開き、抉る動作をすると血まみれの親指の先程度の大きさの黒っぽい石を取り出す。どうやら魔石のようだ。


『鑑定』


鑑定結果

ゴブリンの魔石


(表示された情報ショボいけど、これが魔石か。いまいち感動に乏しいな)


「お父さん、ゴブリンの死体、試しに『収納』してもいいですか?」

「そうか、シンバは『収納』持ちだったな。気持ち悪く感じなかったらいいぞ。ゴブリンの死体はいい肥料になるからな。そうだ運び賃も出そう。入るだけ収納してくれ。」

「分かりました。試してみます」


 七体の解体が終わったゴブリンの死体を順番に『収納』していく。四体目で胸が苦しくなった。馬車に戻り俺たちは再度出発した。軽快に。


 魔石は各地にある冒険者ギルドでお金と交換で引き取ってくれるようだ。魔物の強さにより価値が違うそうだ。

 魔石は魔道具の燃料として重宝されているようだ。商店ダイホウでは冒険者ギルドには売らず、店の商品として扱っているそうだ。取引のある魔道具屋やから時々纏まった注文がきたり、店に買いに来るお客さんもいる様で、若干在庫もしているようだ。

 また、魔物の死体は、首を切り落とし、魔石を抜いた状態であれば、野ざらしにしてもアンデッドになってしまうことはなく、魔物や野生動物の餌になったり、自然に朽ちるとの事。最近は畑の肥料や魚養殖の飼料に使う場合もあるとの事。馬車に揺られながらいろんな話を聞いた。


(なんだか異世界あるあるがかなり出てきたな。冒険者ギルドとか魔道具とかアンデッドとか。深く聞いたほうがよかったか?まあいいか。追々だ)



 平成の営業マンはメモを取らないんだ。メモ取らないことによって、より集中して相手の話を聞いて覚えるんだとさ。謎の理論だろ?どこの研修の受け売りだよ。これを自慢げに話してた昭和モーレツ上がりのお偉いさんは……まあいいか。俺はメモ派だから心のノートにしっかりとメモをした。筆記用具持ってないからな。


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