転生~幼年期 第15話
15.幼年期の過ごし方①
無事にアワージの町に到着した。ゴブリン撃退後、旅は往路と同じくのんびりしたものであった。平和万歳。
商店ダイホウに到着した俺たちは、旅装を解きながらイチジ爺さんとイーセ婆さんに旅の中で起きた出来事を報告し、イチジ爺さんからも改めて、加護を授かったことについて口外しないことをきつく申し渡された。おめでとうも言われ、とても喜んでくれた。
そしていつもの平和な暮らしが始まった。3歳になった俺のルーティーンはこんな感じ。
朝食→読書算盤鍛錬→昼食→魔力消費後の昼寝→散歩(『射出』経験値獲得)→夕飯→『鑑定』連打→魔力切→寝落
まあ、お題目は変わってないけど、内容がね、高度になっているんだよ。説明しよう、
まず、食。一日三食はこの世界の標準の模様。主食は米。みそ汁と三菜が基本。魚、煮物、漬物がそれぞれ食事毎に替わって出る。異世界物で、米や味噌、塩、醤油を探す展開が多いが、幸運なことに庶民でも普通に口にできる程普及している。出汁文化もありだ。大変ありがたい。
更にどん!肉も普通に食されている。牛豚鳥その他魔物や野生動物も食する文化のようだ。焼き、炒め、揚げなんでもありだ。ソースもマヨネーズも知れ渡っており、時々口にできた。マヨネーズ→毒認定→犯罪者→奴隷の異世界コンボはこの世界にはなかった。我が家の食生活は中堅クラスの商店だけあって、恵まれているほうだという。食に困らないということはほんと、ありがたい。ここに転生してくれてありがとう、なのか?まあ、ありがとうと誰かに礼をしておく。
そして、読書算盤鍛錬。この国、日ノ本では学校教育という概念がないものの、国民的には教育熱心で民度が高く、家庭教育が盛んなんだとか。また、高度で専門的なことを学べる私塾もあるようだ。読書算盤鍛錬はなんでも商店ダイホウのいわば義務教育での必須科目のようなもので、商人として必要な文字の読み書き、四則演算、算盤、儀礼、商慣習、地理、歴史、法律等をまとめたもので、10歳までに修了できればいいとの事。先生はイーセ婆さんとイスリ母さん。二人とも解らないところは何度でも繰り返し教えてくれる、辛抱強い先生だ。
で、読み書きだ。言語は日本語だった。“いろはにほへと”じゃないよ。五十五音の“あいうえお”だ。2歳くらいから我が家では読み書きを覚えだすが、もう楽勝。既に一通りの漢字も終えた。あ、驚くべきなのはここから。日本語はこの世界の唯一の言語で、世界中で使われているのだと。ビバ!ご都合主義。カオが平仮名を始め出し、カズチャが漢字をそろそろ終えるころだ。ナオ姉は年長だけあり既に地理、歴史、法律まで進んでおり、そろそろ修了も見えてきていて徐々に家業に入っていくようだ。
あ、もう一つ終えたものがある。算盤だ。実は四則演算だった。これも楽勝。カオとカズチャが頑張っている。ちなみに使用する数字は漢数字じゃなくてニューメリックな。バリバリ文系の俺的には、三角関数とか微分積分とか怪しい部分が含まれてなくて一安心だ。世界の文明の進歩的には不安だけど才能のある人がきっと発展させてくれるだろう。
漢字を終えた俺は何をしているかって?学問に終わりはないのだよ。今は地理歴史社会だ。なんとカズチャと一緒に習ってる。ここまでに習ったことを掻い摘んで説明しよう。
まず、俺の住むアワージの島は大八島を中心に連なる八つの島からなる日ノ本という国に属している。天孫を君主として仰ぐ立憲君主国だ。実際の統治は各島の武家が天孫に代わって行っている。そんな日ノ本のような国が統治形態はちがうものの世界には7つある。この世界は、ギーという惑星上に存在し、恒星である太陽を中心に一年で一周しているのだ。地動説だよ。それを踏まえて天文学だよ。いやー立派な人がいたんだね。前世平均的な日本人の俺にはとてもなじみのある理論で助かるね。カズチャが目をくるくる回してたよ。因みに日ノ本は南半球にあることも分かった。やや違和感があるが慣れればそれが当たり前の四季と暦だ。あ、説明会はもうちょっと続くよ。鍛錬で最後だ。
平成の営業マンはガリで勉強好きなんだぜ。なんせ義務教育、高校とずぅっと週休一日だったからな。半ドンの土曜日がキラキラしてたぜ。平成のゆとり共と鍛え方が違うんだよ。まぁ、年取ってからは残業禁止、週休二日、在宅あり、計画有給ありありの超ゆとりだったけどな。
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