転生~幼年期 第12話

12.七五三⑤


 センザン神社からヒービー商店へ戻ると、緊急一族会議が開かれた。昼食をとりながら。ナオ姉とカズチャが加護を授かったお祝いムードはどこかに消えた。

 俺は今日、三柱から加護を授かったことにして説明した。もらったスキルについては『鑑定』『収納』『狩猟』だと素直に話した。

 ニアマ父さん、イスリ母さん、ヨシハ爺さん、アキーコお婆さんの反応は思ったより深刻なものではなく、むしろ前向きなものだった。複数の加護をもらう事は非常に稀ながらも過去にはあったようだ。但し、その人物は武家の棟梁となったり、冒険者として名を馳せたり、いずれも武勇に優れた実績を残したようだ。

 また、スキルについても簡単に説明を受けた。スキルはその人の努力次第で加護を授からずとも取得することができること。但し加護によって取得したスキルは使えば使うほどその能力が段階的に成長するが、自力で取得したスキルは成長はかなり緩やかなようだ。


(ほっ。良かった。直感に従ってカミングアウトしてしまったがみんなが驚くのも無理はないな。加護による成長の補正がスキルの段階的成長を促すのだろう。自力取得スキルも成長はするようだ。それにしても過去の英雄に列せられる人は複数のスキル持ちだったとは。神様たちは俺をどこに行かせたいのか。それにしても俺に加護を授けてくれたのはベザイテーン様、ホッテイソ様、エイビス様だよな。これ、七福神だよな。順番と授かった加護の関連はイミフだが。前世では出勤のない休日の度に七福神巡りをしていたが、残り四柱も加護を授かること濃厚だな。この世界でも神社参りが趣味になるのか?自称加護コレクター。勘弁してください)


 一通りの説明を終えると大人四人でなにやら相談が始まった。ナオ姉、カズチャ、俺、カオはお昼寝タイムだ。昼寝から目覚めると大人四人の相談も終わっていたようだ。ナオ姉、カズチャ、カオも起きたようだ。


 ニアマ父さんが改まった口調で話し出した。

「今日のお参りでめでたくナオとカズチャ、シンバが加護を授かった。ナオ、カズチャ、シンバおめでとう。授かったスキルを大切にし、研鑽をして育てるのだ。その上でここにいる全員が約束してほしい。三人が加護を授かったことは三人がそれぞれ元服するまでは一族の中でしか知らないことで、一族外には秘密にすること。三人はまだ幼い。加護付のスキル持ちを悪用するものも多い。それを防ぐためにも三人が加護付スキル持ちであることを秘密にすることは絶対、必要なのだ。皆わかったな。」

「「「「「「「「はい」」」」」」」」


 俺たち家族は、アワージ向けの帰路を今日出発予定だったが、事案対応のためもう一泊お泊りさせてもらった。アキーコお婆さんとソノ―叔母さんの耳と尻尾も堪能させてもらった。もふもふサイコー!


 翌朝、俺たちはヒービー商店を後にした。

「「「「「「お世話になり、ありがとうございました」」」」」」

「「また、気軽にあそびにおいで」」


 巨大な門を出てから俺たちはのんびりと街道をアワージの町に向けて馬車に揺られていた。もちろん、俺は『狩猟』の検証だ。スキルの名称から言って狩りに役立つ能力を備えているはずだ。『射出』の命中率30%の改善に寄与してほしいと願うばかりだ。


 往路では約30%程度の命中率だったのが、さすがスキル様々だ。意識的に狙いをつけた時に白い点が視界に現れた。白い点を狙いの木の幹に合わせて石ころを『射出』すると、ドンピシャで命中した。課題が解決した。しかも狙うポイントとは別方向に石ころを『射出』すると、なんと軌道を変えながら狙いのポイントにドンピシャで命中した。往路のフラグがものの見事に解決した。


 初めてアワージの町以外の場所への旅の中で、俺は神様達から頂いた加護を存分に生かせるよう、早く行動の自由を獲得する必要性に気付いた。そのための三点課題(知識を増やすこと、大人並みの行動と実績を積み重ねること、資金を稼ぐこと)を解決する必要があるとの結論に至った。そのために前世の知識をTPOを踏まえて使えることも分かった。そして起こるべきして起きた神様達からの加護を授かるイベントと、この世界に与える影響と対策は、アワージの町に帰ってからの俺の行動を変えることになった。


(俺は前世の知識を使って、俺の三点課題を解決する。異世界人ということと加護の存在を隠してこの世界の近代化を進め、金を稼ぎ、行動の自由を獲得する。)




 平成の営業マンはスルー力が大事なんだよ。だって客の粗相の現場なんか見た日には「昨晩は大変でしたね」なんて言えないだろ?見なかったことにしてそっとハンカチ渡すんだよ。まぁ相手の上司にはそぉっとメール送っといた事もあったけどな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る