転生~幼年期 第10話
10.七五三③
「さあ、出発だ。」
俺たちはセンザン神社に向けて、イスリ母さんの実家であるヒービー商店を馬車で出発した。参拝するのは俺たち家族とアキーコお婆さんと、嫁入りを一月後に控えたソノ―叔母さんだ。コバはヒービー商店の次代店主筆頭候補シーハルト叔父さんと情報交換だそうだ。
(コバよ精進せよ)
センザン神社へと向かう道すがら、俺は昨晩の出来事を思い出していた。
俺たちはヒービー商店主ヨシハ爺さん、アキーコお婆さん、長男シーハルト叔父さん、次女ソノ―叔母さん、次男ヒロマサ叔父さんと賑やかな晩餐の時を過ごしていた時、狐獣人に目がハートになっていたナオ姉が本能の赴くままに母さんに尋ねた。
「お母さん、お母さんはなんで狐獣人じゃないの?私もモフモフなお母さんが良かったかも」
「あら、ナオは狐獣人じゃない今の母さんが嫌いになっちゃった?」
「違うの。お母さんのことは大好きだよ。でも狐獣人だったらもっとよかったな~って思ったの」
「ナオはどうして、そんなに狐獣人が好きになったの?」
「え~とね、耳や尻尾がすっごく可愛いの。耳たぶより触ってみたいな~って思ったの」
母さんは、(そっか~ならいいか)って感じで同じ親から人と獣人に子が生まれるケースについて教えてくれた。どうやら人族と獣人族との間に生まれる子供は、見た目は人族になったり獣人となったりするのだと。その姿は後天的に逆に変わることもないそうだが、時々隔世で孫や曾孫の代に獣人の子供が生まれることもあるのだと。また、例えば犬獣人と猫獣人の夫婦の場合、やはり犬獣人か猫獣人の子が生まれるのだと。これは一般常識として浸透しているようだ。疑問がアッサリと解決したようで、ナオ姉は納得していた。
(俺も納得だ。前世の知識と合致している部分があったからな。好奇心丸出しで、自ら聞かなくて本当に良かった。幼児の俺がどうしてそんなこと知ってるんだと怪しまれるだけだからな。夫婦の××とか遺伝子、交配、優性、劣性、極めつけは夫婦チョメチョメの結果子供が生まれるなんて、どこのマセガキだよ。いやどこで知ったか言い逃れ出来ないしな。ナオ姉、ナイスだ。前世の記憶を持って異世界転生したことに感づかれないことが最優先だ。説明めんどくさいし、俺も自信を持って説明できないし)
「それにしてもナオったら、アキーコお婆さんとソノ―叔母さんがそんなに気に入ったの? 母さん、ソノ―聞いて! ナオったら相当母さんやソノ―のことを気に入ったみたいよ。耳とか尻尾とか触ってみたいって。私も昔は嫌がられるほど触らせてもらったけど、血筋かしら?」
「ええ、ええ、聞こえてましたよ。とっても嬉しいわ。ささ、ナオ、お祖母ちゃんのそばにいらっしゃい。ぎゅっとしちゃうから。」
「あら、母さんだけずるい。カズチャ、シンバ、カオおいで。叔母さんが自慢の尻尾でパフパフしてあげる」
俺たち四人は初めて触れる狐獣人の尻尾のもふもふ感、耳の触り心地を堪能させてもらった。これは病みつきになるな。ナオ姉だけでなく、カズチャもカオも大興奮だった。
昨晩俺は、前世も含めて、初めて もふもふ というものを堪能した。感動した。前世で読んだラノベや視聴したアニメで癖になるとか読んだり見たがことがあるが、表現が稚拙だな~なんて思ったもんだ。撤回する。俺もこの気持ちよさは表現できない。しいて言うなら もふもふ最高! これに尽きるな。最後の方は母さんも混じっていたが見なかったことにしたよ。
いや、言いたいことはもふもふ最高以外にもう一つあって、前世の知識について、TPOを弁えさえすれば、俺が異世界人だと知られずに、俺の課題である三点、“知識を増やす”“大人並みの行動と実績を積み重ねる”“資金を稼ぐ”に使えるんじゃないかと気づいたってことだ。TPOを弁える方法を迂回する術があれば尚いいのだが。
平成の営業マンは修羅場が受注の近道だ、なんて耳にタコが出来るほど聞かされたけど、これ、本当だよ。客先トラブル対応で完徹二日ほどして復旧してみな?カンカンに怒ってた担当者もニコニココロリんだよ。コーヒーとか自ら煎れてくれるし、災い転じて福となすだよ。まぁダメージは大きいから。お勧めはしないけどな。
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