転生~幼年期 第9話

9.七五三②


 アワージの町からスモートの街へ向かう道中、『射出』を続けたが、結果として命中率は向上しなかった。無念。


 夕暮れ前に、馬車はスモートの北門に到着した。城壁が聳え立っていた。高さ3m程の。門周辺は5mはありそうだ。上部では人が余裕で移動できそうな幅があり、数10m間隔で物見塔が配置されている。城壁の厚さは1m程だろうか。さすが淡路の島一の町である。いや都市か。人口30万人を超える大都市スモート、その城壁はセンザンにある神社を中心に直径20kmの円状に及ぶ規模に至り、大人口を賄うための食糧生産のための農地は、既に城壁外に開墾を終え作物が実っている。今なお開拓は継続されており城壁周辺にはいくつもの集落がが自然発生しているようだ。


(この城壁には魂消たね―。マジ、この時代にどれだけの時間と労力を掛けたのかねぇ。前世でも見たことないな。人力で積み上げたのか、いや、土魔法とかで練り上げたのかも。まだ魔法見たことないけど)


 俺たちは幅3m、高さ3m程の巨大な門を潜り抜けた。あ、入門検査は15分程並んで受けたよ。一般庶民だし。疚しいことないし。身分も商業ギルドにカオも含めて全員登録済みだしね。入門税ゼロ。善人が一番効率いいよね。偉い人じゃなくて善人がいいんだよ。

 コバを先触れに出したのち、その後商業区のある街の東側に馬車を進める。アワージの町の数倍の人出に人酔いをしながらも町並みを眺めてると


「いた!獣人族だ」


 俺は無意識に声に出していた。猫、犬、熊等人族に紛れて比率的少ないものの、アワージではほぼ見ることのなかった獣人族と思しき人達を発見した。毛の濃淡はあるものの耳、尻尾はファンタジーだ。本当に動いてる。ビバ!ラノベ!異世界最高!いずれ直接交流したいものだ。興奮のボルテージはアゲアゲだ。


「シンバよ、獣人がそんなに珍しいのか?アワージではめったに見ないから無理もないか。うーん。そうだな。イスリ母さんの実家に到着すればまた落ち着くだろうけどこのままでいいか。」

「うふふふふふふ。到着が楽しみね。」

「え?何かまずい事でもしましたか?」

「いや、何も問題ない。そろそろ到着するだろう。町並みを見ていなさい」

「はい。お父さん、お母さん 到着を楽しみにします」


 獣人に興奮する俺に投げ掛けられた父さんと母さんの、意味不明な会話をよそに、スモートの町並みを眺め続けた。主に獣人を中心に見つめながら。


 馬車は何事もなく無事に、イスリ母さんの実家に到着した。先触れのコバも無難に役目を果たしたようで迎えに出ている人達の脇にいる。


「お母さま!ソノ―!ただいま、帰りました。」

 イスリ母さんは馬車を飛び出すと、俺たちを迎えに出ていたと思われる、迎え人の中の老齢に差し掛かった狐っぽい風体の老いた狐獣人とその隣にいるもう一人の母さんと同い年位の狐獣人に飛びついた。

「イスリ、お帰り。何年振りかしら?元気そうで良かったよ。さぁさぁニアマさんも早く屋敷に入って寛いでください。ナオ、カズチャ、シンバ、カオよく来たね。会えてうれしいわ。遠慮なく屋敷に上がってね。ようこそ我が家へ。アワージの自宅のように寛いでね」

「姉さん久しぶり。ニアマ義兄さん、ナオちゃん、カズチャちゃん、シンバちゃん、カオちゃんいらっしゃい」


(なんと、イリス母さんの母上は狐獣人?それに母さんの妹も。なんという行幸!モフモフ近し!!)


 おれは突然突き付けられた現実に思考をぐるぐると回した。耳、尻尾、耳、尻尾。。。並行処理全開で。持ってないけど。俺の隣には目をハートマークにしたナオ姉がいた。口からよだれが、、、


 アキーコお婆さんとソノ―叔母さんは、抱き着くイスリ母さんを強引に引きはがし、ナオ姉、カズチャ、俺、カオと順番に抱き上げ顔をスリスリしてくれた。イスリ母さんに似たとってもいい匂いがした。モフモフはする機会(隙)がなかった。


 イリス母さんの母アキーコ婆さんと、ソノ―叔母さんは、イリス母さんと同じく、包容力のある、とても暖かな人に感じた。第一印象だけどね。




 平成の営業マンは初対面で相手との相性が分かるんだよ。だって、商談が進みそうな人って臭いで判るだろ、見た目じゃないんだよ。まぁニューピーの頃はかなり外したけどな。


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