転生~幼年期 第8話

8.七五三①


 ホッテイソの加護を授かり取得したスキル『収納』。その『射出』機能を検証してからおよそ1年がたった。

 現在のルーティーンはこんな感じ。

“朝食→読書算盤鍛錬→昼食→魔力消費後の昼寝→散歩『射出』→夕飯→『鑑定』連打→魔力切→寝落”

 散歩がルーティーンに組み込まれた。最近はカオを抱っこするイスリ母さんやニアマ父さんが一緒の事もある。もちろん行先は浜辺だ。我が家から浜辺への道にあった石ころは徐々に姿を消している。

 そしてステータスはこんな感じ。


鑑定結果

シンバ(3) 人族 男

職業 無職

スキル:鑑定3、収納1


 『鑑定』がレベルアップした。スキルを表示できるようになったのだ。その恩恵で『鑑定』が3にレベルアップしていることが判った。毎日魔力切れを起こすまで使用し続けた効果が出たのだろう。加護の裏の恩恵“成長の補正”については効果を測る手段がないので気にしないことにしている。早く『収納』のレベルアップもしたいものだが、現状『射出』用の石ころしか入ってない。子供というものは行動範囲が狭いんだなぁと思いつつ、『収納』が役立つ生活に進むためには何をすればいいのか模索している。

 一つ目、この世界の事をもっと幅広く知ること、これはルーティーンを行う事で保管できる。

 二つ目、この世界での行動の自由を確保すること、これはかなりハードルが高い。見た目は子供だけど大人並みの行動がとれると認めてもらうことが必要だ。異世界人の記憶があることは伏せておくべきだと本能レベルで思っている。異世界転生を悟られずに大人並みの行動をし、実績を積むのだ。もちろん戦闘力も上げる。

 三つ目、行動の自由を支える装備と資金。何をするにも先立つものは金だ。自分の行動の自由を支える資金は自分で稼ぎたい。

 以上の三点、知識を増やす、大人並みの行動と実績を積み重ねる、資金を稼ぐ。結構ハードモードだ。


 余談になるが、『収納』の時間停止機能はなかった。茶飲み茶碗にお湯を入れて一晩収納したが、翌朝はただの水になっていた。残念。だが、加護による俺tueeeeeなチート野郎は回避できてるようだ。コツコツと小さな経験を積み重ね、レベルが上がって時間停止機能が付けばいいなと思っている。


 今日はナオ姉が7歳、カズッチャが5歳となり、神社に七五三参りに行く予定なのだが、俺とカオも移動の負荷に耐えることが出来る程に十分育ったとの判断もあり、イスリ母さんの実家に挨拶を兼ねてお参りに行くことになったのだ。因みに、七五三の儀式は女の子が七歳と三歳、男の子が五歳の時に、それぞれの歳まで成長したことを神様に感謝の気持ちを捧げるために参内する慣習となっている。

 お参り先はスモートの町にあるセンザン神社。移動には馬車で約半日かかるので、今夜はイスリ母さんの実家であるスモートの豪商、ヒービー商店で1泊の宿をお借りすることになる。俺としては2度あることは3度ある、いわゆる“にどさん”に懸けて地元のミョーケンザンでも良かったのだが、異世界初めての囲いの外だ。期待に胸が膨らんでいる。

 メンバーはニアマ父さん、イスリ母さん、ナオ姉、カズッチャ、俺、カオ、護衛役の店員コバだ。スモート行きの街道は、人々の往来も多くかなり安全のようで旅慣れたニアマ父さんとコバだけでも十分なんだと。まぁいざとなったら俺の『射出』もあるしな。魔物や盗賊に通用するのか分からないが。


 アワージの西門を出てから視界に押し迫る、囲いの外に広がる見渡す限りの青空、のどかな田園の広がり、広々とした海岸。やがて人跡の感じられない大きな岩場に打付ける波、遥か彼方まで広がる大海原、鬱蒼と繁る木々の群れ、遠くかすむ高い山々、見るものすべてが新鮮で、荒々しく、前世では国立公園指定されている地域でないと堪能できない世界がそこにあった。絶景かな!


 でもね、2時間も延々と本物の自然しか見てないと、飽きるんだよ。一層の事、山賊でも……いや、余計なフラグ立てるなよ。俺は馬車の窓を開け、時折見える街道沿いの木々に向けて『射出』を繰り返した。馬車の中では風景に飽きた母さんとカズチャとカオは寝ている。ナオ姉はカオの耳にご執心だ。カオが耳ダコお化けにならないことを祈る。


(あれ?また外れた)


 馬車の窓から街道沿いの木々に向けて『射出』を繰り返して気づいた。石ころが狙いを外しているのだ。普段の訓練では海に向けて『射出』してる為、狙いは当然緩くなる。どちらかというと威力と複数同時発射に重点を置いていた。今回のように木の幹、洞、枝等詳細に狙いを絞れば絞るほど狙いを外した。その命中率約30%。

石ころの形状は千差万別。ただし飛んでいく軌道は直線だ。空気抵抗で曲がっている様子はない。となれば俺の狙い方が悪いのだろう。いつか意識して曲線軌道で飛ばしたいけどな。

 俺はスモートへの道中、休憩時に石ころ補給も行い『射出』訓練をしたのだ。



 平成の営業マンは課題発見に長けてるんだよな。なんで坊やとか知ってるか?なんで?なんで?を何度も繰り返すやつだ。まぁ解決には長けてないけどな。

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